×××恋愛直線バトル×××
―――Battle1―――
ウォーゲーム4thバトル第2試合。コレッキオのダークネスアームによって動きを封じられたジャック。しかしコレッキオも代償として目が見えない。
結果、ほとんど動けない相手を必死に探すというちょっとお間抜けな展開となった。理屈のわかる一同が心配げに見守る中、
「なーなーなー、どーいう事だよアルヴィス〜!!」
メルヘヴンまだ初心者につきよく事態の飲み込めないギンタが尋ねた。アームのプロたる魔女にではなく、なぜかアルヴィスへと。
アルヴィスはため息をついて答えようとして・・・
ぎんっ!!
「――――――っ!!??」
横手から、恐ろしく増大な殺気が膨れ上がる。
恐る恐るそちらを向く。そこにいたのはもちろん何の変哲もない仲間たちで・・・・・・いや。
(魔女が、笑ってる・・・・・・・・・・・・)
にっこりにこにここの上なく楽しげに笑うドロシー。閉じられたその目は、しかしながら間違いなく自分へと向けられている事がわかった。よ〜〜〜く。
ダークネスアームすら用いらずこちらの動きを止めた魔女は、ディメンションアームより遥かにはっきりと己の意思を伝えてきた。
《ギンたんに懐かれてんじゃないわよこのガキが》
「な〜何でだよアルヴィス〜!!」
何も気付かずギンタが袖をくいくい引っ張ってくる。ドロシーの笑みがさらに深まった。
全てを遮断する気持ちで瞳を閉じ、
アルヴィスは爽やかな気分で息を吐いた。
極上の笑みをギンタに見せ、優しく言い聞かせる。
「そういうのはなギンタ、その道のプロ・ドロシーに訊くとよくわかるんだぞ?」
「・・・アルヴィス。なんか今のオメー、すっげー体操のお兄さん!って感じに見えんだけどな・・・」
「一体何を言っているんだか。
とにかく、そんなこんなだから次から質問はドロシーにするんだぞ?」
「そーなのか? んじゃ、
―――ド〜ロシ〜!! 何でだ〜!?」
「はいは〜いギンた〜んカモォ〜ンvvv」
肩を掴み背中を押してやれば、単純なギンタはあっさりそちらへ向かった。ドロシーも先ほどの怒りのパワーはどこへやら、ハートを飛ばして何だか喜んでいる。
2人に離れられ安堵の吐息を洩らしていると、
近寄ってきたナナシに肩を叩かれた。
「あんさんも苦労しとりますなあ」
「ああ。俺も何でだか聞きたい位だけどな」
× × × × ×
「チェスも殺しちゃダメだ。
ドロシーは女の子だろ? 俺、ドロシーがそんなことする姿なんか見たくねえ!」
「ギンたん・・・・・・。
―――よし! 約束する!」
『やっくそっくやっくそっくうっそつっかな〜いよ♪ っと』
―――Battle2―――
第三試合。ドロシー対アヴルートゥの試合は、開始数秒でドロシーの勝ちが決まった。
ウェポンアームの中でも力の弱いリングダガー。彼女の持つアームの中で最も役に立たない品であったはずのそれ。たった一撃斬りつけただけで、アヴルートゥはあっさり戦闘不能となった。
「急所は外したから死なないよ」
薄く笑うドロシーに、メンバーは声すら上げられず驚いた。修行の成果により、彼女の実力はもうナイトクラスとなっていた。
「ギ〜ンた〜んvv これでい〜い?」
「いいデス・・・・・・」
そんな実力があるとは欠片も見せず、ドロシーはギンタに甘えた声を出した。さっそく抱きつこうと駆け寄るその後ろでは、アヴルートゥもまたよろよろと自チームに向かっている。よろよろと―――怪我と絶望により消耗し切った様で。
「うっ・・・、く・・・。
ジャンケン・・・か・・・・・・」
「お前みたいなクズはジャンケンする必要もない。すぐ死ね!!」
『―――っ!』
チェスチームで3度行われようとしている処刑。ラプンツェルの攻撃がアヴルートゥの命を断ち切―――
―――らなかった。
ギドンッ―――!!
振り向きざまドロシーが短剣を放つ。纏わりつかせた魔力がぶつかりうねり、互いを相殺し合った。
大気を揺らめかせ行われた一瞬の攻防。収まった後、ラプンツェルが瞳に収めていたのはもう殺し損ねたクズではなかった。
攻撃の延長と言わんばかりに燃える瞳でドロシーを睨み据え、
「何すんだいそこのブス!!」
「あら邪魔した? しっつれ〜い♪
けど、
―――アタシが何のためにソイツ殺さなかったと思ってるのさ。ソイツに死なれるとギンたんとの約束が果せなくて迷惑なんだよクソババア!!」
「クソ・・・!?
ババアに続いてお前今何て言った・・・!?」
「ああ〜っらごめんなさい。年取ったら耳遠くなるってすっかり忘れてたわアタシ若いから。大変ねえおばさまは」
「私が年増女だと言いたいのかい!? 29だっつってんだろ!!」
「ぷぅ〜v それで29ぅ〜? 倍にしても無理あんじゃない?
ロコにアーム借りたら? 見た目年齢下げたらちょっとはそれっぽく見えるんじゃないの『年増女』」
「あのブス今すぐ殺してやる!!」
「うわわわわ!! 落ち着けって姉ちゃん!! 姉ちゃんは綺麗だから!! あんなブスの言う事気にすんなよ!!」
「あらそうかいギロム? 可愛いお前がそう言うんなら―――vv」
「お〜っほっほっほ!!! ついに正体現したわね年齢詐称ババア!!」
「何だとお!!??」
「つーかこれ以上姉ちゃん挑発すんなよ・・・!!」
血管の浮きまくった目で睨むラプンツェルを、そして涙目で必死に止めようとするギロムをドロシーはまとめて指差し、
「褒めるのは身内だけ!! なのにアンタはそれしか聞かない!!
周りを気にしなくなるのは立派にババアの証拠よお・ば・ちゃん!!」
「うああああああ!!! 言わせておけばこのブスガキがあ!!」
「まあまあ頭と目の方の老化も進んでるようで。正常な判断すら出来なくなっちゃったのねご愁傷様。
こんなお姉さんならアタシいっらな〜い。ギロムもかわいそ〜♪」
「お前もそう思ってるのかいギロム!!」
「まさかそんな!! 姉ちゃんは俺よりあんなブス女の言う事信じんのか!?」
「そうね。もちろん私は小生意気なブスよりお前を信じるよギロム―――」
「ごっめ〜ん訂正☆ 頭の中身は相当スカプーねアンタたち姉弟。
扱き下ろすのに『ブス』しか言えないの? 幼児レベルね問題外。きゃはははははははは!!
随分頭はお若いのねえ見た目に反して」
「もー許さないよクソ女!! 今すぐ殺してあげるすぐ殺してあげるわさあ今すぐ!! 前出てきな!!」
「そ〜こなくっちゃ♪
あ〜も〜ホンットおばさんは意固地で説得にも時間かかってタ〜イヘン☆ アタシそれだけで疲れちゃった〜」
「そのクソ生意気な口今すぐ塞いであげるわよブス甘があ!!」
「あの・・・ラプンツェル。今はウォーゲームの最中でちゃんとルールを―――」
「うるっさいねえ他に何も出来ない木偶の棒審判が!! 私がルールだよ!! さあコールをおし!!」
「まあまあとうに盛り過ぎ去った見苦しいおばさんが善良な一市民に八つ当たりしてる〜。いやあねえ年取ってもあーいう風にはなりたくないわ〜vv」
「こ・の・・・・・・!!」
「ぶるぶる震えてるわよだ〜いじょ〜うぶ〜? ウチの長老たちもそんな感じで震えちゃって大変そうよ〜? 危ないから棄権したら〜?」
「まだ言うつもりかい!?」
「まあ! もうそっちは語彙尽きちゃった? どうやらこの勝負、アタシの勝ちみたいねえ」
「勝負はこれからだろ!? 行くよ!!」
「口じゃ勝てないから暴力を振るう。どうやらそろそろ自分がババアだと認めたみたいねえ人生の負け犬オールドミス!!」
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!???」
「ド〜ロシ〜・・・。あんま挑発しすぎんなよ? なんかさすがに可哀想になってきたぞあのババア・・・?」
「ギンたん待っててねvv あんな環境汚染物質アタシが今すぐ処理してあげるから。
ああ大丈夫v 殺さないからvv
―――殺すより辛い人生の苦汁、しこたま飲ませてあげるわよおぉ〜っほっほっほっほっほ!!!!!!」
「ま・・・まあオメーがそれでいーんなら別にいーけどさ・・・・・・。
・・・・・・うっうっ。ドロシーが怖え〜よ〜」
腹筋を駆使して高笑いするドロシー。
ラプンツェル・ギロムに続いて敗者3人目となったギンタはすごすごと場を退場した。なし崩しどころか崖でも崩さんばかりの勢いで悪化していく戦場を。
味方の陣―――大人しい男の溜まり場へと戻り、
「うう〜。怖かったよ〜」
「よしよし。頑張ったっスギンタ」
「女同士、意地と意地のぶつかり合い。怖いわ〜・・・」
「アルヴィス〜・・・」
「何で俺に縋る」
「だって俺にはもー止められねえし・・・」
「俺にだって止められるワケがないだろう?
いいかギンタ―――」
ギンタの肩にぽんと手を置くアルヴィス。先ほどと同じ笑みでドロシーを指し示し、
「あれが世に言う『自然災害』というものだ。人間はそれが通り過ぎるのをただ震えて見守るしかないんだよ」
「あんさん実は相当肝据わっとるなあ・・・・・・」
―――果たしてギンタはどっちと一緒だと幸せになれる?
× × × × ×
もの凄く世の中の年上の女性にケンカを売りつつ今日はv あくまでこれはドロシーの挑発ですよ〜・・・と弱気に弁解してみたりします。
今日のアニメ観てふいに思ったんですが、アルヴィスって結構微妙な位置にいます? ファントムに愛されロランに嫉妬され、ギンタに懐かれドロシーに恨まれ。きっとスノウがいたら彼女にも嫌われるんでしょう。全て腐女子視点によりですが。
そしてもしかしてそうなると、ドロシーとロランがタッグ組んで『アルヴィスを嫌わせよう作戦☆』とか出来るんですか!? それともお互い相手に押し付けようとしてケンカになりますか!?
では以上、ババア苛めが楽しすぎて本来の目的を忘れ去った話でした。
2005.11.13