メルヘヴン、心の底から誤った鑑賞法
〜こんな展開だったらイヤだ〜
頑張る彼ら彼女らを、天空から見る者らがいた。ファントムとペタだ。
名称通りチェス盤にそれぞれを配置し、動く様子を見下ろす。白い駒が1つ、先ほどから全く動かなかった。
「あれはギンタかい?」
「いかにも」
「さっきから止まったまま動かないなあ」
「恐らく、何かのトラップにかかったのでしょう。
―――ここが、ヤツの墓場となるやも」
「こんな事にまで首を突っ込むからだ。僕との対決がもうすぐだっていうのに」
上でボロクソに言われている通り、ギンタはトラップに嵌り絶体絶命の状況下におかれていた。
巨大魚との水中戦。ダガーアームで追っ払ったのはいいが、そこで息が尽きた。バッボも泳げないため助けに行けない。
(ちくしょー・・・。俺・・・俺・・・、まさか、こんなところで・・・・・・)
朦朧とした意識で、戻るはずだった水面を見つめながらそんな事を考える。初めて感じるかもしれない死の意識。
ファントム含め、今までどんな敵に遭遇したとしても、絶対勝つという信念だけで動いていた。自分が死ぬなど考えもしなかった。
今自分は、確実に死へと近付いている。メルヘンの世界で、極めて現実的な『溺死』という事象。だからこそわかってしまう。これは夢でも何でもないのだと。
(ちくしょー・・・・・・!!)
「おしまいか」
白い駒は停止したまま。感じるのは、そこから伝わる魔力が弱まっている事。ギンタの持つ、辺りを照らす希望という力。それも今や、絶望の闇に呑まれかけている。
呟き、
ファントムはにたぁ〜・・・と笑った。
「ふふっ。ギンタはここでさよならかあ。惜しい男を失くしたなあ。
―――さあってこれでアルヴィスくんへの障害はなくなったvv まあ後あのちみっこも残ってるけど、それはそれで適当に処分しておけばいいしvv
自業自得だからアルヴィスくんも同情はしないだろうなあvv これで晴れてアルヴィスくんは僕のものっvv る〜んたった〜♪」
「ファントム様。全て声にも動作にも出ております」
はっ!
ペタに指摘され、ファントムは頬をちょっぴり赤らめ喜びの小躍りを止めた。
「そしてファントム様。通信を繋ぎっ放しです」
「はっ・・・!!」
(な、にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!?????????)
永遠の眠りにつこうとしていたギンタの意識が一気に覚醒した。
(ファントムの野郎! 俺がいねえ隙を狙ってアルヴィスに手ぇ出そうだあ!? ンなモン許せっかああああああああああ!!!!!!!!!!!!)
ぼくぼくぼくばしゃばしゃばしゃぶばあっ!!
「・・・・・・・・・・・・」
「ギンタが進みだしましたね」
「・・・・・・・・・・・・」
「おめでとうございますファントム様。おかげでギンタは完全復活を遂げたようです」
「・・・・・・・・・・・・。
―――ま、まあ・・・。最終決戦で潰すからいいや。今死なれたら楽しみ減るしね」
「ファントム様。今心の中では『ちくしょー!! 僕の馬鹿あああああ!!!!!!』と考えられましたね?」
「さって何の事だかなあ。全ては計画通りさ」
「そうですか。
――――――ここでギンタが死ねば、あるいはファントム様がアルヴィス殿の相手を出来たかもしれませんが」
「ペタの馬鹿ああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
―――Fin
―――暫く見ない内に、ファントム様ちょっぴり前髪伸びられましたか?
久々のファントム登場v やっぱカッコいいな〜vv 今回はファンギンファン風味でしたね。そっかそんなにギンタの事待ち望んでたのか・・・。
2006.7.16