メルヘヴン、心の底から誤った鑑賞法
〜こんな展開だったらイヤだ〜





 



1.ヒーローは、不思議なほどに死にません


 ロランのエル・ダンジュをガーデスで受け止めるアルヴィス。
 刃と化した羽根は、ビュンビュンと何本も何本も無数に飛来し、時に盾にも突き刺さる。生身で喰らえば確かに死ぬだろう。
 が・・・
 「何で1本も当たんないんですか〜!? アルヴィス君!!」
 ・・・・・・胴体を覆う程度にしかない盾には当たるものの、それを翳してしかいない筈のアルヴィス本人―――剥き出しの下半身や顔には1発も当たらなかった。
 空中で頭を抱えて悩むロランへと、アルヴィスがふっ・・・と笑みを送った。
 「知らないのかロラン。『主役のお約束』というものを」
 「知りませんよ!! 何ですかそれ!?」
 「つまり―――」
 びしりとロランに指を突きつけ、



 「主役はこのような攻撃を受けた際、明らかに当たっているはずなのになぜか当たっていない事になっているという不条理なお約束だ!!」
 「誰やねんそないアホネタ、アルちゃんに植え付けたん!?」
 「アホネタとは何だ!! そうことみが言っていた!!」



 『・・・・・・・・・・・・』
 意味の通じるメル一同の視線がギンタに集まった。
 ことみとは、かつてみんなが修練の門の中で迷い込んだ仮の東京で出会った少女である。それはリリスがアームを用い、ギンタの記憶を元に作り上げたのだとか。
 なので・・・
 ことみが言っていた。即ち―――
 ――――――そうギンタは認識している。
 「そーだそーだ!! 何でかザコにゃ良く当たるってのに主役にゃ当たんねーんだぞ!? いや主役は俺だけど!!」
 実際疑い0%で握り拳を振り回すギンタ。それを受け満足げに頷くアルヴィス。確信を深めたらしい。
 各々別方向を向き、メル一同は揃ってため息をついた。頭を抱える。
 何が怖いって、架空世界におけるお約束の筈を、なぜか現実たる今ここでアルヴィスが実証している事である。
 「念のため確認しとくけど・・・、今ここって現実よねえ? 夢とかじゃなくって・・・」
 「ほっぺでも引っ張ってみよか?
  ―――あ! ドロシーちゃんなら別のトコでも〜・・・vv」
 ごげっ!!
 「痛ったあ!! 痛いわあドロシーちゃん!!」
 「夢・・・じゃあないみたいね」
 「集団催眠ッスか・・・? そんな感じでもないッスけど・・・」
 「アーム・・・も、発動してねーよなあ・・・・・・」
 「つまり・・・・・・」
 「アルヴィス殿は、思い込みだけで実現させている、と」
 「凄い!! カッコいいアル〜vv」
 「・・・いいんだそれで」



 「という事で! お前は悪役だから当たれロラン!! 
13トーテムポール!!」
 「何ですかこの本気で不条理すぎる展開!? ていうか僕が悪担当ですか!?」





 そしてロランが倒された。



―――