メルヘヴン、心の底から誤った鑑賞法
〜こんな展開だったらイヤだ〜
Take4.
3人の足止めを頼まれた。
ドロシーの言いつけを頭の中で反復させながら、アルヴィスはぽつりと呟いた。現在13トーテムポールの連射を喰らい、この場というよりこの世に食い止めていられるか心配な3名を見つめ。
「『何とか』なんて苦労するほどの相手でもないと思うけどな」
「クソッ・・・!」
「ああ生きてたか。そういえばお前は打たれ強かったんだったな」
「綺麗さっぱり忘れ去ってんじゃねえ!! さっきギンタがちゃんと解説入れてただろ!?」
「忘れてた」
「酷いよいきなり物ぶつけてくるなんて!!」
「お前にはちゃんと警告しただろ?」
「この借りはきっちり返してやるからな!!」
「返さなくて結構だ」
「・・・・・・・・・・・・」×3
「もう言う事ないのか?」
『・・・・・・・・・・・・』
「本当にお前達は能以前に脳がないな。
知っているか? ギンタのいる国では『3人寄れば文殊の知恵』なんて言い回しがあるらしいぞ? 1人じゃ駄目でも3人が集まれば何とかなるという意味だそうだ。『1本の矢はすぐに折れても3本束になれば折れない』なんていう教訓もあるとか。
馬鹿は3人揃っても馬鹿だったな。それとも3人揃ってようやく1人分だからやっぱり馬鹿なのか?」
「うるっせえ!! テメーにそこまで言われる筋合いはねえよ!!」
「馬鹿を馬鹿と呼ぶのにわざわざ筋が必要なのか? この上なく良く通っているだろう?」
「だからってそんなに言う事ないじゃないか!! 傷ついちゃうじゃないか!!」
「何だ少しは自覚あったのか。
己を馬鹿だと思っていないのなら、俺の言い分なんて鼻で笑い飛ばして終わらせればいいだけだからな。
良かったな。己の改善は己の正確な理解から始まるんだぞ?」
「だったらオメーも理解しろよ自分の事!!」
「俺? 理解してるぞ?
心が穢れてるんだろうお前曰く? だから人を傷つける台詞をどれだけ言おうが納得だろう?」
『恐ろしいヤツ・・・・・・』
3人揃って呻く。コイツに口喧嘩で勝つのは無理だと判明した。
そしてアルヴィスもまた、心の中で呻いた。
(マズいな。さすがにやり過ぎた・・・)
せっかくこの、完全に無駄でしかないやり取りでいくらでも時間は稼げると思ったのに。
このままでは・・・・・・
(やれやれ戦闘か。面倒なものだ。せっかくウォーゲームは終わったというのに。
大体ファントムもこういう馬鹿の躾くらいはしておけよ。負けたからもう関係なしか? 無責任な)
ぼりぼり頭を掻いてため息をつく。1対3のハンディキャップマッチ。
(さて、スィーリングスカルで全員の動きを止めて順に殴りつけるか。
さっきまでと同じく13トーテムポールをぶつけ続けるか。
それとも―――)
悩むが、
事態はアルヴィスの予想だにしない方向に進んだ。
予想だにしない・・・・・・この上なく都合の良い方向に。
「ちいっ! コイツはもういい!! ギンタを追うぞ!!」
「待ってよお姉さ〜ん!!」
「今日は一旦引いてやる!! 命拾いしたな美少年!! だが次俺様と遭った時がオメーの最期だ!!」
「また随分勝手な遠吠えだな。お望みとあればむしろ今回終わらせてもいいぞ? もちろんお前の人生な」
「ガーディアンアーム“クンフーフロッグ”!!」
(アルヴィスの台詞は努めて聞かなかった事にして)コウガの呼び出したガーディアンにみんなで乗る。
3人まとめてアルヴィスに背を向け―――
「“ア・バオア・クー”」
『へ・・・・・・?』
ずどごおおおおおおお・・・・・・・・・・・・ん・・・・・・
「このアームの欠点は複数に同時発生させると威力が落ちる事だな。
良かった固まってくれて。ありがとうな馬鹿ども」
こうして、足止めは無事成功した。
―――結論