メルヘヴン、心の底から誤った鑑賞法
〜こんな展開だったらイヤだ〜





 



 アルヴィスがカペルに攫われた!!
 「まさか・・・。あのアルヴィスが・・・・・・」
 「ゾンビタトゥーの呪いに、ついに屈しちまったってか・・・・・・!」
 止められなかったベルとスノウの懺悔[はなし]を聞き、ジャックとアランが呟く。なんでもアルヴィスは、禍禍しい魔力を放ちながら「ファントムの元に行けば、この胸の苦しみはなくなるのか?」と尋ね・・・
 ・・・自らカペルに歩み寄っていったらしい。
 「ンなワケねえ!!
  きっと、アルヴィスはフリをしてるだけなんだ!
  きっとアイツは、ファントムと決着を付けようと・・・・・・」
 いつも皆に希望をもたらすギンタの声が消えていく。彼ですらそう思えていない何よりもの証。
 俯き、暗くなる一同・・・・・・



 ・・・・・・・・・・・・ではあったが。



 現実はギンタの言った通りだった。





・     ・     ・     ・     ・






 「アルヴィスくん!! よく来てくれた―――!!」
 「“ア・バオア・クー”!!」
 「ひひゃああああああぁぁぁぁぁ・・・・・・!!!!」
 どごどごどごーん!!
 ディメンションアームでファントムの元まで連れてこられたアルヴィスは、現れるなり駆け寄ってきたファントムへとさっそく一撃をお見舞いした。
 「ファントム様!!」
 焦るカペル。隣にいてなぜか微笑ましく見守るロラン。
 彼らを見る事もなく、アルヴィスは爽やかに額の汗を拭った。
 「あースッキリした」
 「でしょうねえ」
 のんびりとロランが頷く。初めて2人の思考が合った。
 「うっうっうっ・・・。酷いよアルヴィスくん・・・。僕に一体何の落ち度があるっていうのさ・・・」
 落ち度しかないと思う(少なくとも大切な人を殺し呪いをかけ、それを無理矢理促進させ苦しみを与えるのは誉められた業績ではあるまい)のだが、
 アルヴィスはそのようなありきたりな答えをする男ではなかった。
 小首を傾げ、極めて不思議そうに言う。
 「だってお前のところに言ったらこのムカつきが取れるのかって訊いたらそいつは頷いたぞ? 俺のストレス解消って言ったら他に何があるんだ?」
 「うわあ、アルヴィス君。本当にストレス溜まってたんですね。
  爽やかし過ぎて口調まで変わっちゃってますよ?」
 「如何にストレスが人格に影響を及ぼすか証明されたな」
 「確かにそんな君も可愛いと思うけど!! けど僕としては普段の、もーちょっとストレス溜まった辺りが好きかな・・・!?」
 控えめにファントムが主張した。
 アルヴィスもうんうんと頷き、
 「大丈夫だ。俺の苦しみはまだ晴れていない」
 「つまり?」
 尋ねたのはロランだった。さすが日々アルヴィスLoverを公言し、本人同意の元(もちろん本当はしていない。何度追い払ってもしつこく付き纏うので諦めただけだ)ストーカーにまで徹するファントムは、今の台詞から何かを察したらしい。笑顔のまま固まっている。
 同じ笑顔でアルヴィスは、
 
13トーテムロッドを発動させた。
 「やっぱりお前はこの手で直に下さないとな。せっかく手に入れたから使ってみたけど、爆発ではいまいちだった」
 「ああなるほど」
 ロランがぽんと手を叩く。賛同者を得、アルヴィスはますます素敵な笑顔を見せた。
 笑顔で、手に力を込める。
 「じゃあ行くぞ?」
 「ちょっと待ってちょっと待って!! さっきの『あースッキリした』はどこに行った―――!!!」
 がんげんげんがんごんぶすげすどがばき・・・・・・





 「何・・・なんだ? この2人は・・・?」
 普段の余裕ぶった表情を崩すカペルに、ロランが静かに答えた。
 2人を指差し、
 「あの2人ならいつもこんなものですよ?
  だから僕、ファントムの元にアルヴィス君連れてくるの嫌だったんですよ。ファントム可哀想過ぎるから」
 「なら、今回は・・・・・・」
 問われ、
 ロランはやはり静かに答えた。おどけた笑みを浮かべ、軽く肩を竦め。
 「だってファントム、僕に内緒で貴方方みたいな部下作ってたり勝手なことしたり。
  ムカついたってしょうがないでしょう? ちょっとしたお灸ですよ」
 「貴方は、ファントム様に尽くしているのでは・・・?」
 「尽くしてますよ? 慕っています。敬愛しています。僕の意思で。
  だから自由に動くんですよ。絶対服従はしません。僕は僕の意思でファントムに仕え、そして彼が何かやるようならば諌める。
  それが僕のやり方です。
  ―――そう、アルヴィス君に教えてもらいました」
 胸を張り、ロランはファントムを見つめた。アルヴィスと同じ、真っ直ぐな瞳で。
 もうためらいはしない。もう惑わされはしない。



 永遠にあなたを愛するために。



 微笑むロランの目の前で、
 「ロラン助けてええええぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「ほお? まだ助けを呼べるほど元気なのか。
  そろそろデッドラインかと思ったが、まだまだ行けそうだな」
 「いやいや無理無理!! 何ていうか僕もう燃え尽きる寸前のロウソクみたいな感じだから!! 最後の力でちょっとだけ輝いてるだけだから!!」
 「なるほどロウソク。となると燃え尽きる前に火は消してやらないとな。カスでも残った方がいいだろ。俺は優しいからな」
 「むしろそれで死ぬんだと思うんだけどおおおおおおおおおお!!!!!!!!???????」
 ぐしゃぐしゃばきべきがすごすげすどごどご・・・・・・
 永遠は、尽きようとしていた・・・・・・。



―――Fin

 









 ―――・・・・・・違ったのか。アルヴィスもあんな事言うし、ギンタも推奨するから、てっきりカペル公認第×××回ファントムタコ殴り大会となるかと思ったら・・・。
 そして今回真っ黒けっけなロランの思考は【永遠の束縛】から引き続いています。

2006.12.72007.1.14