×月●日 アルヴィス殿の記憶を変えよう 1


 「ガリア〜ン」
 「ん・・・?
  ―――ファントムか」
 「あのさ、ガリアン記憶操るアーム持ってたよね? 借りれないかな?」
 「ああ。いいが?」
 「ホント? ありがとう」





 「・・・で、一応尋ねておきますがそれで一体どうなさるおつもりなのですか? ファントム様」
 半眼で切り出すペタに、
 ファントムはふふんと笑ってみせた。悪の組織の司令塔というより・・・イタズラを思いついたガキ大将のような笑みだ。もちろん口に出しはしないが。
 ・・・などと思うペタに気付く筈もなく、それ以上に興味もなさげに、ファントムはガリアンから借りたアームをぐるぐる振り回した。
 「最近気付いたんだ。僕とアルヴィスくんがどうも上手くいかない理由は、過去のしがらみがあるからじゃないか・・・って」
 「すみません。むしろ最初から気付けませんでしたか?」
 「と、いうわけで!!」
 何か言いかけたペタをこれまた無視し、イスから立ち上がったファントムはどこかに片足をつくと虚空を―――いやアームが作り出した映像(に映ったもちろんアルヴィス)を指差した。
 「そんな過去をすっぱり断ち切り、僕たちは1から始めようと思うんだ!! 待っててねアルヴィスくん!!」
 宣言と共に、ディメンションアームでファントムは旅立ってしまった。
 1人取り残され、
 ペタは呟いた。
 「1から始めるって―――それじゃあ・・・・・・」





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 無理矢理力押しでねじ伏せ、アルヴィスの記憶を奪う事に成功したファントム。目覚めた彼に改めて会いに行き・・・・・・
 「アルヴィスく〜んvv」
 「ん? 誰だお前?」
 「僕はファントムって言うんだv これからよろしくねvv」
 「? 何でだ?」
 「え・・・・・・・・・・・・?」
 邪気のない目つきで、一分の隙もなく不思議そ〜〜〜に尋ねられ、ファントムが凍りついた。
 何とかぱりぱりとひっぺがし、再び笑顔で迫る。
 「えっと・・・。それはこれから僕たちが運命的な邂逅を経て、熱く深い関係で結ばれるその第一歩として・・・・・・」
 「運命的な邂逅? ただ出会っただけだろ?」
 「いやまあ確かに今のだとそうだけど〜・・・」
 「しかも俺とお前が・・・どこの誰だか知らないが・・・熱く深い関係で結ばれる?
  嫌だぞ俺は? 突然往来で人目はばからず抱きつく男とそんな関係に結ばれるのは」
 「―――っ!!」
 ガラガラピッシャア―――ン・・・・・・!!
 「じゃあな変態」
 そして、アルヴィスは去っていった。





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 「つまり・・・。
  過去のしがらみがなければ赤の他人以下、という事ですね。アルヴィス殿にとってファントム様は」
 今度こそ完全に凍りついたファントムを回収しながらペタの呟いた言葉は、今回もまたファントムの耳には入らなかった。



―――了








 ―――深いようで浅いような2人の関係。もし赤の他人からスタートしていたら、どうなっていたんでしょうねえホントに・・・・・・。

2006.7.3