お勉強
街に出ると、ギンタは楽しげにいろいろ物色を始めた。
石、毛皮、置物などいろいろある。
ふとアルヴィスは一冊の本を手にした。
それはいろんな記号と数字が配列されている本だった。
「何見てんだ?アルヴィス。」
そんな彼にギンタはその手元を覗きこんだ。
そしてびっくりした様に声を上げた。
「あれっ?数学の本だ。」
「ギンタは分かるのか?」
アルヴィスに聞かれて。
ギンタはつまらなさそうに頷いた。
「オレがいつも勉強させられている本だよ。」
「勉強とは何だ?」
アルヴィスは不思議そうに問うた。
「頭が良くなるように色んな知識を頭に入れ込むことだよ。」
「ふーん・・・・」
アルヴィスはしげしげと手元の数学の参考書に目をやった。
「この記号の配列に意味があるのだな。」
そう言うと、アルヴィスは店主に本とお金を差し出した。
そして。
「マジ!?」
ギンタは嫌そうに彼に目をやった。
街を抜けると2人は広い原っぱへと出た。
そこでアルヴィスはしげしげと本を開いて眺めた。
「ギンタ。」
アルヴィスはギンタに呼びかけた。
ギンタは向既にこうの方へと走り出していたが、アルヴィスの声に振り返った。
「何だよ、アルヴィス。」
アルヴィスは困った様に本とギンタを見比べた。
ギンタが近寄ってきた。
「多分キミの世界の本だ。字が読めない・・・・」
一瞬。
ギンタはきょとんとした。
それからアルヴィスをマジマジと見た。
アルヴィスにも出来ないことがある。
そんなこと、考えたこともなかった。
「お前、まさか字も読めないのに本を買ったのか?」
自分を見つめてくるギンタにアルヴィスは微笑しながら答えた。
「お前が居るだろう。」
「オレ?オレがお前に勉強教えるのか?」
アルヴィスは笑った。
「この本を使えば読書の邪魔をされなくてすみそうだ。」
あまりにも綺麗な微笑みに。
ギンタも走り回るのを止めて笑った。
「本当に本が好きなんだな。」
戦いの最中。
本を読む心の余裕がありたいと思う。
(おまけ)
「あのさ、アルヴィス。」
「何だ。」
「立場逆転してねぇ?」
そう。
今はアルヴィスがギンタに数学を教えていた。
文字だけ。
文字だけ教えただけなのに。
なのに参考書を見ただけでアルヴィスは全て解読してしまったらしいのだ。
「パズルのようなものだろう?」
さらりと返すアルヴィスにギンタは思いっきり叫んだ。
「数学なんて大嫌いだーっっ!!」
そんなギンタにアルヴィスはただ微笑むだけだった。
雫様が主催されている企画サイト『アル祭り』に展示されているフリー小説を頂きました。雫様、ありがとうございましたvv
こんなほのぼのぼのぼのしている2人っていうのもいいですよね。私が言うとどこまでも説得力がないと思われますが、こういう穏やかな雰囲気、大好きです。
戦いばかりでなくたまには、ね。
『アル祭り』の方では、他にも雫様の書かれたアル受けの話がいろいろあります。ファーストキスを賭けた激しい争奪戦【王様ゲーム】や、アルを苛めて楽しむ(誤)【キミの笑顔】。
こちらもまた良いものですよ。【王様〜】でジャックからアルを守るファントム(表現として間違ってはいません)が特に好きです。
それらは上のバナーよりどうぞv さらにそのサイトは、アル受けの本を製作しています。