『奇』跡 〜I love youI need youI want you





4.まあ『天才少年』ですから・・・



 そんなわけで(どんなわけさ・・・・・・)よりを戻した(らしい)2人。改めて英二からも無くした記憶の代わりに情報を得ると、どうやら自分は彼と付き合っているという事の他にもう1つ、テニスをやっていた、という事も大切らしい。
 というわけで、テニスをする事になった。
 「んじゃあ、さっそく試合[ゲーム]しよ〜vv」
 「待て菊丸、記憶を無くした越前はいわばど素人、完全初心者[ビギナーだ。いきなり試合は無理だろう」
 さりげなく失礼極まりない台詞を吐く乾。だが残念ながら記憶を無くしたリョーマが自分の実力を知るわけはない。ボール拾いばかりさせられている他の一年を見て、ああ自分もこんな感じなんだな、と軽く納得していた。
 「とりあえず軽い打ち合いからじゃない? コートとかは一切関係なくして、まずはボールに慣れるって感じで」
 不二が無難な方向で話をまとめる。
 「それでいいかな、越前君?」
 「いいっスよ」
 「英二は?」
 「おっけーにゃv」
 「じゃあ、そういう事で」





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 『そういう事で』始まった『軽い』打ち合いは・・・・・・
 『おおおおおおおお!!!!!!』
 レギュラーはもとより、部員全員、さらには偵察に来ていた他校の生徒らも拳を握り締める展開となった。
 決まる決まる。面白いようにリョーマの技が決まっていく。ツイストサーブにドライブA・B。ジャンピングスマッシュにツイストスマッシュ。バギーホイップショット、超ライジング。挙句に零式ドロップショットまで。
 「にゃんで〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!?」
 ボロクソに負かされる英二。自分でも信じられないのか、リョーマも技を決めてはきょとんとしている。
 それを観戦しながら―――
 「―――ところで記憶と言うものについてだけど、一口に『記憶』といっても中身は大きく分けて2種類あるらしい」
 「つまり?」
 やはりのんびりそれを鑑賞しながら、不二が笑顔で訊き返した。
 「1つは『情報』として覚えるもの。勉強なんかがいい例だな。なお一般的に記憶として捕らえられる過去の事象もこれの中に含まれる」
 「なるほど」
 「もう1つは『技術』として習得するもの。よく自転車に乗る事は1度覚えると一生忘れない、というだろう? あれもその1つだ」
 「いわゆる『体で覚える』って事?」
 「まあ必ずしもそうとはいえないが、そんなものだな。
  そして後者は記憶喪失になっても―――その程度の差は激しいが―――『忘れない』と言われている」
 「そうなの?」
 「今から俺が言う事が厳密にあっているのかどうかはわからないためイメージとして捕らえて欲しいが・・・・・・
  『記憶を無くした』はずの越前が普通に話し、歩いている。
  ―――不思議に思わないか?」
 「なるほど、ね。言葉を覚えるのも歩くのも生まれてから身に付けた事、と言う意味では『無くした』記憶とそうは変わらない。なのになんで彼は『覚えて』いるのか、って言う事ね」
 「さすがに不二は理解が早いな。つまり話す事・歩く事などは『技術』として習得したものだ、といえる。ちなみに前者と後者の簡単な見分け方は『考えるか否か』という区別があるらしいが・・・・・・まあこの辺りはただの余談だ。
  で、ここからが本題だけど―――どうやら越前にとってテニスは『技術』として取得したもの、お前の言い方を借りるなら『体で覚えたもの』、少々違うがわかりやすく言うならば『本能で行なうもの』のようだ」
 「つまり・・・・・・記憶喪失になってもテニスは忘れない」
 「初めから軽い打ち合いなどにせず試合にすればよかったか」
 「クレーム出したのは君だけどね」
 「提案したのはお前だろ?」
 静かに責任の擦り付け合いをする2人の前で―――ボロ負けした英二が再び傷心旅行へと旅立とうとしていた・・・・・・。






―――ちなみにこの理屈、合ってるかどうかはわかりません(爆)
The end

2003.4.13









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そんなワケで終わりました(これで!?)このギャグ話、なおタイトルの『奇』跡は
<奇妙奇天烈な人たちが残したおっそろしくどギツイ跡>
といった感じです。む〜。1の『奇蹟』と違ってそれこそおっそろしくリクの内容を外してます。すみません・・・・・・。
と、いう事で(うわ反省の色ねえ・・・)これにて記憶シリーズ終わりにさせていただきます。ただし大抵の方はこの後2を読むでしょうので、いろんな意味でインターバルのこの小話でした。