「偶然」 Whats “Chance”!?−







エピローグ   「分岐点」The “Direction





 草1本生えていない荒れた道―――とも呼べないようなところを、一台のモトラドが普通に走っていた。
 「キノ〜」
 「ん? 何だい? エルメス」
 「キノはさ、結婚とか興味ないの?」
 モトラドからの質問に、運転手は首を傾げう〜んと唸った。
 「とりあえず今はね」
 「今は? 何で?」
 「まだ、ボクは旅を続けていたいから」
 「旅を? そんなの結婚したって出来るじゃん」
 「そうだね。そうかも・・・・・・そうかもしれない。よくわからないけど」
 「何それ」
 「ボクまだ結婚してないもの」
 問うモトラドへと運転手が苦笑する。見えないだろうが、雰囲気では伝わったかもしれない。
 運転手がさらに笑った。
 「それにさ、
  ―――結婚したらお前を置いていかなきゃいけないよ。2人乗りはさすがに無理だろう?」
 「ああ、そういえば」
 運転手の言葉に、ようやくモトラドが納得する。
 質疑応答が逆になる。
 「エルメスは? お前はボクが早く結婚して欲しいって思うのかい?」
 「そうだなー。とりあえず・・・・・・」
 「とりあえず?」
 「―――もっといい乗り手が見つかるまでは1人でいてよ。キノ」
 「了解」
 そして、モトラドは走り去っていった。







 「シズ様」
 「何だ? 陸」
 隣の声を聞き、運転手はバギーの速度を緩めた。目を細め、砂吹き荒れる向こうを見やる。向こうには何も見えない。
 「僭越ながらお尋ねしますが、シズ様はご結婚はなさらないのですか?」
 助手席に座る犬からの質問に、運転手はハンドルから離した片手を顎に当てた。
 「今は、まだ興味がないな」
 「今は、ですか?」
 「まだ・・・・・・私は自分の居場所を見つけてはいない。それからでも遅くはない―――だろう」
 「ではいずれは、という事ですか」
 「いずれ・・・・・・まあそれがいつの事になるかはわからないが。結婚したらわかるだろう。ああこれが以前言っていた『いずれ』なのだろうな、と」
 「ご尤もです」
 「・・・・・・・・・・・・お前は最近私を馬鹿にすることを人生の楽しみとしていないか?」
 「滅相もございません」
 答える犬へ運転手が苦笑いする。見えていただろうが、犬は特に何も返してはこなかった。
 運転手がさらに続ける。
 「それに―――
  ―――私が結婚したのならばお前は助手席[ここ]から追いやられる事になるぞ?」
 「シズ様のためならば」
 即答する犬に、運転手の苦笑いがさらに深くなる。
 「構わない、か? ならばいっそお前が結婚して私を運転席[こちら]から追いやるというのも手だ」
 「ご冗談を。犬に運転は出来ません」
 「意外と練習すれば出来るかもしれない。ハンドルなどしっかり握らなくても出来る。手と足で4本あるのならハンドルを握りクラッチを弄りながらアクセルもブレーキも踏める。なんなら試してみるか?」
 「辞退させて頂きます」
 「つまらないな。出来るようになったならばぜひとも変わってもらおうと思ったんだが」
 「犬に運転は出来ません」
 繰り返される犬の言葉に、運転手が肩を竦める。
 もうひとつ、問う。
 「陸。お前は私が早く結婚して欲しいと思うのか?」
 「それはシズ様がお決めになることです」
 「お前の意見を参考にしようとは思わないさ。で、お前はどう思う?」
 「では僭越ながら―――
  どちらでも構わないと思います」
 「なるほど」
 そして、バギーは走り去っていった。



















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 はい! 終わりました!! オカン様、長々〜っと本当にお待たせ致しました。申し訳ありませんでした。最早こうして平謝りしてみたところでそれが全く説得力を感じさせないほど期間が経ってます。ゔっゔっゔっ・・・・・・。ほんっっっと〜に! 申し訳ありません!!
 そして貴女のリク、陸(こう書くと非常に紛らわしい)とエルメスのアホな口喧嘩。これで『出来た〜!』と言い切る私もどうかと思います。エルメスと陸の絡みは今までで最高に―――とはいってもこれまだ2話目でした―――少ないし、むしろアホなのはシズ様(爆)・・・・・・。おかしいなあ。このネタ思いついた時は『これでエルメスと陸喧嘩し放題!?』と密かに小躍りしていたというのに・・・・・・!! さらに私事ですが、シズと陸の関係がよくわからない事が判明。主と僕であり、陸はそうして接していると思うのですが果たしてシズは完全に『僕』として見ているのかそれとも冒頭どおり『どちらかというと相棒に近い』と見ているのか。そんな感じでフランクにいってみたら、気がついたらむしろシズの方が格下状態!? この思想は根本から間違っていたのか(いや私の進め方が悪いんだけれど)・・・・・・!!
 では、原作どおりプロローグとエピローグを
a&b形式にして順序逆にするのも面白そうだなあと思いつつ考えてみたら本編の内容がプロローグ引きずってるおかげでダメじゃんという事に気付いてしまったそんな哀しい春の朝、この話を終わりにさせて頂きます(前100文字以上からの繋がり0)。いっそエピローグ→本編→プロローグの順で読んでみても意外と話は通じます。

2004.4.7


P.S.
 そういえば今回エルメスの微妙な言い間違い? がありません。理由は他ジャンルに出てくる某千葉県民のおかげです。もうその手のギャグというかダジャレ考えるの苦痛でしかありません。出て来ねえよンな都合よく! というかそこまで頭の回転よくないし(逆切れ)!! 誰かその手のネタがありましたらぜひともよろしくお願いします(切実)!!!