「偶然」 −What’s “Chance”!?−
プロローグ 「きっかけ」−The “Accident”−
1.キノの場合 『それは偶然だった』――――――――――――だからボクだけのせいじゃない。絶対に。 |
草1本生えていない荒れた道―――とも呼べないようなところを、一台のモトラドが爆走していた。
ぎゃりっ!!
「うぎゃあ!!」
タイヤの軋む激しい音と共に、辺りに悲鳴が響いた。
「キノぉ!!」
「―――何だい? エルメス」
非難の声。それにキノが軽く笑ってしれっと聞き返した。
「『何だ』じゃない! こんなスピード出して、僕が壊れたらどうするつもりさ!!」
最初に悲鳴を上げた声が、さらに怒った様子で怒鳴りつける。どこを見回してもキノ以外話し相手となりそうな人はいない。
「だけどね、エルメス。たまには自分の最高の実力を出すべきだ。そうしないと、知らない間に腕は鈍るもの」
「それは前に聞いた!! だからってこの速度はムチャ―――」
ぎゃんっ!!
ばきっ!!
『あ・・・・・・・・・・・・』
2.エルメスの場合 『それは偶然だった』――――――――――――なんてキノは言うけど絶対キノのせいだと思う! |
「キ〜ノ〜〜〜・・・・・・」
「あはは。失敗失敗。まあ時にはこんなこともあるよ」
「ない! ないように安全運転で行くのが普通でしょ!?」
エンジン音も止み、時折髪を、服を弄ぶ風の音を除いて何の音もしない荒野にてエルメスは力の限り叫んだ。スタンドを立てて停車したエルメス。そのフレーム部分は先程の衝撃でひしゃげ、半端にフロントに引っかかったままだらーんとぶら下がっていた。
「大体キノはいっつもいっつも―――!!」
「はいはい・・・・・・え?」
それこそいつものように文句をたれ始め―――エルメスが黙り込んだ。それに合わせ、彼の説教相手兼運転手・・・にして先程無茶をして彼を半壊させた主がきょとんとした。
「どうしたんだい?」
「エンジン音、しない?」
「―――ああ」
エルメスの向く方を、運転手もまた向き直る。確かにその方向から微かなエンジン音がしていた。
「何だか分かる?」
「シエノウスのバ―――」
言いかけて、またも黙りこくるエルメス。
「―――何?」
「・・・・・・・・・・・・すっごいヤな予感」
「?」
|
「シズ様―――?」
隣の声を無視して、シズはバギーの速度を緩めた。目を細め、砂吹き荒れる向こうを見やる。今、向こうに何かが見えた気がしたのだ。
隣に座る僕―――シズから見ればむしろ相棒に近い存在は、緊張感を帯びた彼の様子に気付いたか、じっと黙って見守るだけだった。
ゆっくりそれに近付いていくバギー。だんだん向こうの姿も露になってきた。人が1人にモトラドが1台。
「あれは―――」
「旅人、か・・・あるいは強盗団、か」
「1人じゃ強盗『団』とは言わないだろ?」
「茶化している場合でもないでしょうに」
「そうだな」
呟き、シズがバギーの速度を一気に上げた。
「あ・・・・・・」
「やっぱ・・・・・・」
そんなことを呟く1人と1台の前で停車させ、シズは軽く手を振った。
「やあ。キノさん、エルメス君。久し振りだね」
4.陸の場合 『それは偶然だった』――――――――――――だとしたらさぞかし嫌な『偶然』だ。 |
「どうしたんだい?」
「え? いやあの、ちょっと―――」
「キノが無茶な暴走して僕のこと壊したおかげで立ち往生」
ごん!
余計なことを言おうとしたモトラドを運転手が見もせずにぶっ叩いた。会う度に同じ事をやっているような気もするこの2者に、陸は軽くため息をついた。何となく、どころか自信を持って、この先自分の主がなんと言うか予想がついたからだった。
「それは大変だね。どうだい? じゃあ次の国まで2人とも乗っていかないかい?」
「え? いいんですか?」
「うけなよキノ。こんな所でいつまでいても干からびるだけじゃん。まあ乗務員に一部不満があるけど」
「何だとこのポンコツ」
「やるかバカ犬」
「ふん。そのボロボロ状態で勝てるとでも思ってるのか?」
「こ、これはキノが―――!!」
「まあまあエルメス、せっかく乗っけてくれるって言ってるんだから―――」
「陸、お前もだ。失礼だろう」
「申し訳ありませんでした。シズ様」
「だってキノ―――!!」
ごん!
こうして、人間2人とモトラド1台、そして犬1匹という少々変わった取り合わせが暫く共に旅をすることになった。
了
・ ・ ・ ・ ・
オカン様〜!! よ〜やっとリク小説が始まり・・・・・・始まり・・・・・・? ってまだ国にすら入ってねえ!! コレは重大な事態だ!! てーへんだ〜!!!
―――などというワケのわからんノリにて始まりました2600番リク小説。とりあえずこのメンツで次の国へ行きなんだかヘンな騒動に巻き込まれる(?)といった感じです。早めにUpできると・・・いいなあ(弱気)。何せこの冒頭が書きたいがための話だしこの先を要求されても―――あ゙あ゙!! ごめんなさい!! マトモに―――じゃなくて真面目に書きますから見捨てないで下さい!!
そんなワケで(仕切りなおし)ラストまでワケのわからなかったこの話しかしまだ冒頭。読まれて気付かれた方もいらっしゃるかもしれません。処女作(大笑い)と違って書き方が自己流に戻りかけてます。う〜みゅ。これ原作に似させるの大変だ―――というか全然違う書き方してる私が合わせようと頑張るとどうも全体に無理が出るような・・・そんな理由[イイワケ]です以上。
では、キノの、シズの、そしてエルメスの、陸の活躍(いろんな意味で)。オカン様の期待に添える―――少なくとも90度外して直角にはならないよう努力します。
2003.6.17