morning kisses v
1人の少年が走っていた。
サッカー部で鍛え上げた脚力を誇示するかのように。
精悍な顔つきをさらに鋭くし、道行く人皆に思わずその姿を追わせる程の雄姿で。
彼が何を目指して走っているのか、頬を赤く染めうっとりしている者はそこに自らの思いを馳せた。
そんな想いを背に受け―――。
(ヤベ・・・、マジで遅刻する・・・・・・)
彼―――八神太一は走る足を緩めず左腕にはめた時計をちらりと見てから、さらに足を速めた。・・・・・・まあ一般的な公立高校の始業時間である8時半近辺に制服姿の男子高校生が走る理由[ワケ]といったらこんなものだろう。
いつもなら部活があるため7時前には学校にいるのだが、『休日の部活疲れを授業まで引きずらないように』という学校側のありがた迷惑な配慮のおかげで毎週月曜には部活がないのだ。それでも太一の遅刻が少ないのは、部活のあるなしに問わず毎朝起こしに来てくれる6年来の親友のおかげなのだ・・・が、今日は委員会があるとかで先に行ってしまった。
(そういやあいつって何の委員やってたっけ・・・?)
幾ら親友、それ以上の関係[モノ]といっても、さすがにこんな細かいところまでは覚えていない―――もしかしたら相手のほうは覚えているかもしれないが。
―――太一のそんな疑問は、学校に着くなり即座に解決した。
‡ ‡ ‡ ‡ ‡
「やーっぱり遅刻だったか・・・・・・」
校門残り30m地点で無常にも鳴り終わってしまったチャイムに、太一は足を止めため息をついた。こうなっては最早走る意味はない。校門一歩内側で待機しているであろう風紀委員に見せるべくカバンからごそごそと生徒手帳を取り出す。と、
「―――ん?」
校門前にいる人数が妙に多い気がして太一は首を傾げた。普段そうそう遅刻する訳ではないので詳しい人数までは知らないが、さすがにここまで多くはないだろう。何かと弾けすぎるきらいのあるここの生徒達だが、それでも都内トップレベルの優秀校だけあって日常生活は皆真面目にこなしている。そもそもこれだけの遅刻者が毎日いればとっくに問題になっているだろう。
(電車とかが遅れた・・・ワケじゃねえしなあ・・・・・・)
ならこんな異様な雰囲気ではないだろう。全員どことなくソワソワしていて、今か今かと待ちわびて。中にはカメラやらなんやらを持つ者までいる。
(まさか・・・・・・)
だが太一がその『嫌な予感』を具体的に思い浮かべる前に・・・
「―――お、太一じゃねーか」
肩を叩かれ太一は勢い良く振り向いた。自分より少々上からかかる声やその口調に一瞬、今(も含め)一番会いたい人を思い浮かべてみた―――が、違った。
「・・・なんだ豪かよ・・・・・・」
「・・・悪かったなヤマトじゃなくって」
半眼で呻く太一に同じく半眼で返してきたのは、高2の現在同じクラスとなり何かと気の合う親友(悪友)・星馬豪だった。豪もまた走ってきたらしく前髪を額に張り付かせている。が、さすが現役陸上部員。呼吸は既にいつも通りに戻っているようだった。
明るく豪が訊いてきた。
「何だよ、珍しいじゃん遅刻なんて。さてはヤマトに捨てられたのか?」
「お前こそ遅刻じゃねーか。愛しの兄貴はどーした?」
ちなみにこの2人、お互いの『関係』は知っている。なので周りが言うと冗談になる事も、この2人が言うと冗談にはならなくなる。
ムッとしながら太一が答えた。
「今日ヤマトは委員会が会って先行ったんだよ」
言外に「だから捨てられた訳じゃない」と言いつつ。
「へー偶然。烈兄貴も今日生徒会があるって先行ったぜ。
何でもどっかの委員会が人数足んねーってんで手伝いに行ったらしー・・・けど・・・・・・」
語尾がだんだん小さくなっていく。それにつられる形で太一の眉間にも皺が寄り始めた。
2人の中で、今全てのものが1つに繋がろうとしていた。多すぎる遅刻者。浮き上がる雰囲気。朝に仕事がある委員会。人数不足で要請された生徒会―――いやむしろこうなるとこの要請すらも計画された者かもしれない。あのイベント好きの生徒会長なら喜々としてやりかねない。
『まさか・・・・・・』
肺から息を搾り出す2人の目の前で、『それ』はまさしく現実のものとなって現れた。
‡ ‡ ‡ ‡ ‡
8時半になり、風紀委員顧問が校門を閉め―――石田ヤマトはその死角で深くため息をついた。
「なんでこんなに多いんだ・・・?」
「―――まあ仕方ないんじゃない?」
さらに死角から掛けられた声に、特に驚く事もなく頷き返す。小さい頃から音に馴染んできたせいか、自分の耳は人よりいいらしい―――さして自覚はないが。
ざわめきの中から自分のいる方へ向かってきていた足音を正確に聞き分け、ヤマトはそちらに振り向いた。
「そうだな、今日は月曜だし」
「・・・いや別にそれだけが理由なんじゃないと思うけど・・・」
向いた先で特徴ある赤髪が揺れた。その下にある、軽く握った手で口元を覆い苦笑する顔は同じ男である自分が見ても可愛いと思う。
「―――つまり烈、お前目当ての奴らが少しでもお前に近付くためにわざと遅刻してきたって事か」
現に遅刻者の中には何か包みを持っている者が多い。特に今日が何かの記念日ではない以上(誕生日は除く。個人的なものにしては人数が多すぎる)、今の自分の推測はなかなか合ってるんじゃないかと思い、疑問形にせずに聞いた。が・・・・・・
(そこまで合っていながら何で肝心なところで外すかなあ・・・。まあヤマト君が自分には全然興味のない悲観的[ネガティブ]思考の持ち主だっていう事はわかってたけど・・・・・・)
ヤマトの視線の先で、烈と呼ばれた少年―――星馬烈は浮かべる苦笑をより一層深くして返答した。
「一応言っておくけど、僕はあくまで要請された側だからね」
つまるところこういう事だった。毎日交代で遅刻者チェックを行っていた風紀委員。ついに恐れていたヤマトの番が回ってきてしまった。ヤマトの仕事の速さや正確さは教師からも定評があるが、今繰り広げられている(そしてこれから繰り広げられるであろう)この事態に対し、1人ではさすがに心もとない。もちろん風紀委員はヤマト1人ではない。だが彼と接触するために遅刻してくる輩が他の人で満足するか、もちろん答えは『否』だ。下手をすれば取り合いで暴動が起こる。そういった事に平気で己の全てを賭ける学風だ。可能性は0ではないどころか恐らく100%。
ならば、と選ばれた対抗策が烈だった。仕事の能率はヤマト以上、それを買われて現在生徒会副会長という地位に納まっていた彼は、風紀委員に泣きつかれた生徒会長からすればこの上なく動かしやすい人材だった。もちろんヤマトFanにプラスして烈Fanまで押し寄せるというデメリットもあるが、なにせミーハ―(死語)ぞろいのこの学校、『アイドルFan』がそれぞれのほとんどを占め、その人たちはどちらが対応しようと喜ぶだろう。その上烈は『アイドル』達の中でもせなと並んで人の扱いが上手い。逆にドが付く程ヘタなヤマトと組ませれば、ヤマトに絡む者達も軽くあしらってくれるだろう―――という、いわゆる『囮作戦』を全くもって何の建前もなしに淡々と語ってくれた素敵な生徒会長に感服して、烈はこの話を承諾したのだった。
(けど・・・)
烈は『遅刻者』の手帳と手持ちの生徒名を示してあるクリップに遅刻時間をチェックし、風紀委員の印鑑(借り物)を押すという定型作業[ルーチンワーク]を行いつつ、近くで同じ作業を行っているヤマトを横目で見た。ちなみに遅刻時間は外で別の風紀委員が10分毎にロープで区切っている。そうでもしないと、ヘタをすると『1時間遅れ』などが相次いでしまうからだ―――自分達の作業能率だけの問題ではない。念のため。
(ほんっと、この話受けといてよかった・・・・・・)
ひっきりなしに来るサイン握手写真などの要求を「忙しいから今はムリ」と断ってはいるが、ヤマトは自分のそれに従事する形で断る場合が多い。自分で言う事もあるのだが、その前に必ず「あー・・・えっと・・・・・・」と悩むのだ。人付き合いが苦手な彼の性格は知っているため見ていて苛つくなどという事はないが、むしろあれでよく人気バンド(インディーズながら)のボーカルなど務めていられるなあと感心せずにいられない。
ふと何度か会った事のある彼の弟を思い出す。彼同様モテはするが全てをさらりとかわすその姿は、意外とこの兄を反面教師とした成果かもしれない―――別に『軽い』と言うつもりはないが。
同じく遅刻者をチェックしつつ様々な誘いを断りああ自分は一体何をやっているんだろうななどと心の中でボヤキながら、ヤマトは丁度隣へ来た烈と目を合わせた。
「大変だね」
「お互いにな」
先程と同じ苦笑を浮かべ小声でそう言いながらも即座にいつもの笑顔に戻り次々と対応していく烈に、ヤマトは素直に感心していた。6年前の冒険と現在のバンド活動のおかげで人といるのがそう嫌な訳ではなくなったが、さすがにこれだけパワー溢れる人だらけでは疲れる。その事を表に出さないのは一重に己の持つ頑強な精神力のおかげだ(とさり気に自画自賛)。が、間違っても今も近くにいる少年のように笑顔を振り撒き続けようなどとは思わない。先程からの様々な『攻撃』に対しても、「ムリ」とはっきり断っていながらもお詫びを入れるちょっとした仕草や柔らかな笑顔で、決して相手に不快感を持たせていない。最も困難なプレゼント進呈にも「ワイロになっちゃうから」と冗談なのか本気なのか区別つかない一言であっさり終わらせた。
(よく出来るよなー・・・)
ライブなどでよく人に囲まれるが、実のところ未だにそれらの人への対応の仕方がよくわからない。せっかく自分達のために集まってくれたのだし、このバンドが今も好調に続いているのはこの人達のおかげなのだから、できればファンサービスの1つでもしてやりたいとは思う。が、
どうしても苦手なのだ。
今はそんな事はないとはいえかつては弟を除いて全てを拒絶していた身。全てを受け入れようと決心したはいいがやはりいきなりでは無理だった。ある程度以上知っている相手には普通に笑ったりも出来るが、ほとんど初めての人にはどうしても無愛想になってしまう―――小さい子の人見知りのようで恥ずかしいが、仲間曰く『口調がキツイ』自分ではどうしても泣かせそうで(実際過去何度か経験あり。「そんな人だとは思わなかった!」と泣きながら叫ばれたが、今ならともかくまだ心を開く前の事である。むしろなぜ『見て』わからなかったのか未だに疑問でたまらない―――まあ余談だが)口が重くなるのだ。
―――ちなみにこの彼曰く「無愛想だ」の辺りもシャイだストイックだと人気の対象になっている事をもちろん彼は知らない。現に今も言葉少なに断り無表情で作業を続ける彼の姿を何人もの熱い眼差しが追っている事も。
そんなこんなであくせく働く2人の頭上、校舎のてっぺんに取り付けられたスピーカーが1限目開始のチャイムを鳴らした。
「1限目始まっちまったな・・・」
「まあいいんじゃない? 一応会長の許可[おゆるし]は得てるし。あの人何気に教師によく顔が利くから、何か言っててくれるんじゃないかなあ。まあ、希望だけど」
言いながらも烈が持っていたシャーペンで肩越しに後ろを指した。ヤマトがそれに沿って視線を動かす―――と、風紀委員の顧問が校門脇の木にもたれてため息を洩らしていた。
風紀委員が遅刻者チェックのため授業に遅れるというのは完璧本末転倒だと思うのだが、その顔に浮かんでいるのは深い諦めだった.既にわかっていたんだヨ、といったところか。
「―――とまあこのように先生方にも深いご理解を頂いているようだし」
これまた本気なのか冗談なのかわからない言葉を言いつつ烈が笑った。それにつられてヤマトも薄く笑いかけ―――
「――あ」
人垣の中から何を見つけたのか笑みを崩し呆ける烈に、(大体の理由はわかるような気もするが)ヤマトもそちらを向き、
やはり予想通りのものを見つけ、この日で1番深いため息をついた。
‡ ‡ ‡ ‡ ‡
「ヤマト・・・・・・」
「烈兄貴・・・・・・」
片や呆然とし、
「なんだ豪、当然の如く遅刻か・・・」
「太一・・・、あれだけ明日は寝坊すんなって念押しといたのにやっぱりしたのか・・・」
片やそんな2人に呆れる。
「なんだよその『当然の如く』って・・・」
とボヤキながらも正に『当然の如く』烈の元へ駆け寄り、生徒手帳を渡す豪。太一もまたヤマトに手帳を出す。
キャーvv という歓声が周りからやたらと流れるのにヤマトは首を傾げ、豪と太一はざまあみろと言いたげに口の端に笑みを乗せ―――そして烈はそんな皆に苦笑した。
(そんなに面白いものかなあ・・・?)
まあ考えて見ればそうかもしれない。2人の登場でヤマトは無表情に限りなく近い笑みを消し完全に仏頂面になっており、かく言う自分も半眼でため息をついていたりする。こんな表情はこの弟か、さもなければ同じクラスの親友かあるいは生徒会長かにしか見せないものだ。
「で、言い訳は?」
半眼のまま尋ねる。もちろん通常は名前をチェックするだけでこんな事まで調べたりはしない。
「え〜っと・・・・・・」
豪が4秒程目を泳がせた後答えた。
「・・・・・・寝坊しました」
「・・・・・・同じく」
小さく口を動かしぼそぼそ答える太一の頭上に振り落とされた拳1つ。
「〜〜〜ってーー!!」
「だからちゃんと言ったじゃねーか!!」
殴った体勢のまま拳を震わせ怒鳴るヤマトの周りで声がより一層大きくなった。糾弾・怯えではなく―――もちろん歓声。カメラのフラッシュ音も大きく鳴り響く。今周りにいる人達は恐らく、「こんなヤマトが見れて自分はなんてラッキーなんだ!!」と狂喜乱舞していることだろう。
そんな事はお構いなしに続く2人の会話。まあこの2人にとってはこれが当り前なのだから当然なのだが。
「いや、でも起きようとはしたって!」
「で!? 結局起きられねーんじゃ意味ねーだろーが!!」
「っかしーなあ。ヒカリや母さんにも頼んだのに・・・」
「他人[ひと]巻き込んでんじゃねえ!!」
「―――まあまあヤマト君、太一君」
さすがにこのまま何時までも2人に夫婦(?)漫才をさせておく訳にもいかないか、となだめに入る烈。そうしている間にも順番待ちの列はさらに長くなる・・・・・・。
「このままだとみんな中に入れないし、ね?」
可愛く微笑む烈に、我を取り戻したらしいヤマトが気まずげに頷いた。
「あ.ああ・・・。悪い」
「いえいえv」
そうこうしている間にきっちり作業はやっていたのだろう。自分の方を向きながらもチェックの終えた手帳を豪に返し(そのあまりのおざなりさに豪の顔が険しくなったがそれに関しては無視するとして)既に次の人から手帳を受け取っていた烈を見て、ヤマトも慌ててチェックした。
手帳を太一へと返し、さっさと行けとばかりに背中を押す。と、2・3歩進んだところで太一がくるりと振り向き、笑顔で口を開いた。
「なーなーじゃあさ、毎週泊まんの月曜まで延ばしていい?」
えええっ!? と驚きの声が上がる。太一FanにとってもヤマトFanにとっても、知らなかった人にはなかなかの問題発言だ。つまりは部活orバンド活動時を除く休日をお互いが完全に独占しているというのだから。
何を想像(あるいは妄想)したか、冬の寒い朝にも関わらず鼻血を出す人・卒倒する人が続出する。
が、やはりこれを当り前としか捕らえていない人が平然と答えた。
「はあ? それでどーすんだよ? 毎朝起こしてやってんだから変わんねーだろ?」
「だからv 毎朝ヤマトのモーニングキス&愛情溢れる朝食のセットだと俺もちゃんと起きられるしvv」
歓声が絶叫に変わる。ヤマトの手にしていたシャーペンが音を立てて真っ2つに折れた。
白い肌を面白いくらいに真っ赤に染めたヤマトが怒鳴―――ろうとするよりも早く。
「あ,いーなーv じゃー烈兄貴、俺にもよろしく『モーニングキス』v」
同じく数歩進んでいた豪が首を傾げやはり笑顔で言う。
さらに大きくなる絶叫。泣き出す者すらいてみたり。
が・・・・・・
「はあ? なに言ってんだよ。そんな程度でお前が起きる訳ないだろ? むしろ寝直すだろうが」
真っ赤になって錯乱しかけたヤマトとは対照的に、顔色1つ、声色1つ変える事無く対豪用のお得意の半眼でしれっと応える烈。
更ににっこりと笑って続ける。
「そんなのよりもっと確実に、明日からはフライパンで叩き起こしてやるよ。もちろん文字通り。サービスとして使用後5分以内のヤツで」
「・・・・・・いえ、結構です」
顔中に脂汗を流し、豪は自らの出した案を取り下げた。この兄ならば本気でやりかねない。というかむしろ間違いなく本気でヤる。
あっさりと豪を負かした烈の案をやはりヤマトは取り入れる事にした。赤くなりかけていた顔を戻し、烈同様、それはそれは綺麗に微笑んで。
「そーだな。太一、俺もその方法でしっかり起こしてやるから月曜まで泊まっていっていいぜ? しかも間取りの都合上使用後1分半以内ので」
「・・・・・・やっぱり今まで通りでいい」
生真面目なヤマトの事だ。これでOKなどしたら本当にやるだろう・・・・・・と涙を呑んで太一はその誘いを丁重に辞退した。
勝った、とばかりに勝ち誇った笑みで作業を再開するヤマトから背を向け、隣にいた豪に小声で抗議した。
「お前のせいでせっかくのお泊まり延長がダメになったじゃねえかっ」
「俺のせいか・・・!? 入れ知恵したのは兄貴じゃねーか・・・!」
「お前らみたいに俺らは毎日一緒にいられねーんだからちょっとは遠慮しろよな!」
「毎日っつったってあの難攻不落の烈兄貴だぞ!? 全っ然!! 足んねーよ!! むしろヤマトの方がずっと簡単なんだからさっさと落とせよ!!」
「ヤマトのどこが簡単なんだよ!? お前の兄貴の方がよっぽど―――!!」
「ハイハイ2人ともさっさと行こーねーv」
「これ以上遅れるんじゃねーぞ!」
背後から掛けられた言葉とともに飛来してきた石に頭を打たれ、2人のヒートアップしすぎた会話が終了した。
頭を押さえ、校舎へと入っていく騒ぎの主導者2名の後ろで混乱はまだまだ続く―――のだが・・・・・・
折れたシャーペンを近くのゴミ箱に投げ捨て、不機嫌極まりない無表情で黙々と作業を続けるヤマトと、
笑みこそそのままなもののその全身から一触即発な怒りのオーラを撒き散らす烈を前に、
これ以上訊ける訳もなく、疑惑は疑惑のまま全員の心を占めていた・・・。
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余談として、作業が終わり2人がいなくなった後、ヤマトの捨てたシャーペンを巡りゴミ箱前で争奪戦が行われていた事は―――わざわざ記すまでもないだろう。
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更に余談として、結局2人が仕事を終え教室に戻ったのは1限目終了後だった。が、烈の予想(予言)通り2人にお咎めはなかった。
―――End
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太ヤマでならこーいう事があっても(あ、『お泊まり』の意味でですよ、もちろん)おかしくなかろうというコンセプトで出来た話。2人だけなら初々しいバカップルだったんですけど―――某兄弟が(と言うか某兄貴が)絡むとこうなります。強いなあ烈兄貴は・・・・・・。あ,ちなみに烈の「寝過ごす」発言は、そのまま襲われ殴って気絶させると言う意味で。さあ、周りはどこまでその真意を読み取れたか!?
ところでこの話、と言うか私の話全てを通して、だんだんオリキャラの登場率が高くなりますが(特にレツゴの高校以上はか〜な〜りの割合で)、この辺りはその内ちゃんとカバーする(ハズ)ですのでとりあえずは突発キャラ扱いで。
いやあ、太一とヤマトと豪、烈兄貴とタケルの口調の違いがよーわからん・・・・・・。
2002.8.2(write2002.2.18〜3.8)