Feeling Color






<自分の今着ている服は何色か?>

そんな質問で相手が自分をどう想っているのかがわかるらしい。
なおその色は、

赤=情熱的=スキ
青=冷静・客観的=キライ
黄色=曖昧=普通


となる。




1.豪の場合


 「へえ、そりゃ面白いな」
 「まあ、どの程度当たるかはわからないけれどね」
 暇つぶしにしていた昨日のテレビ番組の話題、とあるバラエティー番組(情報番組とも言える)にてやっていた裏ワザについて、せなが豪へレクチャーしていた。
 「んじゃさっそくやってみようぜ!」
 好奇心旺盛の彼らしい意見。幸いなことにその『テスト相手』となるであろう彼の想い人は今ここにはいない。生徒会副会長として駆けずり回る彼を2人は待っているのだ。
 携帯を取り出し、番号を押した後―――ちなみに余談だが、豪はこの番号のみ電話帳で呼び出すよりも早く押せる。それもひとえに愛情、というより単に慣れの問題だ―――耳に当てる。せなも興味あるのか頭を寄せてくる。
 『―――何だ?』
 「ああ兄貴、今時間なるか?」
 『あるわけないだろ? あったらとっくにそっち行ってる』
 「・・・・・・。ああ、そういやそうだよな・・・・・・。
  ―――じゃなくて、いいから話聞いてくれ」
 『はいはい。どうせここで切ってもまたかけてくんだろ?』
 「さっすが兄貴。よくわかってんじゃんv」
 『全然嬉しくないな。で?』
 「あのな、兄貴、今俺が何色の服着てると思う?」
 『はあ? 何色も何もお前制服だろ?』
 「・・・・・・・・・・・・。
  私服だったとして! だったら何色着てるって思う?」
 『・・・また変な質問だな』
 「いいからv で、何色?
  ああ、・青・黄の3色でな」
 『青(即答)』
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・他には思わねえ?」
 『他? 青じゃなかったら黄色だな』
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もーいい」
 『で、なんなんだよ? どうせ心理テストかなんかなんだろ? どんな結果なんだ?』
 ブツッ―――
 それ以上何も言えずに電話を切る豪。
 「青だって。しかもためらいなく。迷ってかろうじて黄色だとよ・・・。
  所詮兄貴の中じゃ俺なんてンなモンか・・・・・・」
 灰と化す豪を遠くから見ながら―――
 (無理もないんじゃないかしら・・・・・・?)
 せなは快活に薄情な事を思っていた。
 当り前だ。豪の姿を見て誰が『赤』を想像できる?
 ―――この話の致命的欠陥、それは人によって想像される色が固定される場合がある、という事だろう。例えば今目の前で朽ち果てる少年のように。
 (まあ、烈君の事だから当然答えを知っていったのでしょうけどね)
 でなければあの慎重派の彼がこんなワケのわからない質問に対し、その意図もロクに尋ねず答えるわけがない。
 ―――そんな彼女の思い通り、




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 「ばーか。誰が素直に『好き』なんて答えてやるかっての」
 切れた携帯を握り締め、烈は小さく舌を出しそう呟いていた。



―――イマイチ捻りのないオチにて終わり!








2.不二の場合


 「へ〜、面白いっスね!」
 「でしょでしょ?」
 英二・不二・桃・リョーマの4人での帰り道、英二がしていたとあるバラエティー番組(情報番組とも言える)にてやっていた裏ワザの披露に、まず桃が乗った。
 「そんなんでワザワザ確認しなくっても直接訊きゃいいじゃないっスか」
 「ダメだにゃ〜。おチビは」
 「そうだぜ越前。世の中それが訊けねーで悩んでるコどれだけいると思ってんだよ」
 「―――そうだね。それに直接訊いて正直に答えてもらえるかわからない」
 『へ・・・?』
 今まで聞き手に回っていた不二が、ふいに口を開いた。しみじみと言われたその言葉に首を傾げた3人。だがそれには答えず―――
 ―――不二はテニスバッグから携帯を取り出した。
 「僕もやってみようかな・・・・・・」
 「ええ!?」
 「いるんスか不二先輩にそんな相手が!?」
 「・・・・・・・・・・・・。何かな? その驚き」
 『いーえ別に』
 「そう? なら・・・・・・」
 と、本当に携帯を弄り始める。
 耳に当てる事、少し―――
 〜♪
 リョーマのテニスバッグから軽快な音楽が響き渡った。
 「あ、電話だ」
 『ええ!!??』
 バッグからこちらも携帯を取り出すリョーマに、英二と桃が揃って驚きの声を上げた。
 不二が電話した。とほぼ同時にリョーマの電話が鳴った。
 不二が『誰か』に電話した。リョーマが『誰か』から電話された。
 ABかつBCならばACになるという三段論法にある通り―――
 「不二の好きな相手って―――!!」
 「越前って事か!!??」
 驚愕の事実にパニックになる2人。
 それを無視し、
 2人が電話に向かって話し始めた。
 「やあ。唐突なことなんだけど質問いいかな?」
 「いいけど?」
 「今僕の着てる服って何色だと思う?」
 「服の色?」
 「そう。
  ああ、『制服だから黒』とかそういうギャグじゃなくってイメージで答えてねv
 「・・・・・・・・・・・・青、かな?」
 「ホントv ありがとうvv」
 「それだけ? じゃ、切るよ」
 「うん。じゃあねvv
 ブツッ
 ブツッ
 同時に電話を切る2人。リョーマは疑問げな顔をし、不二は嬉しそうに笑う。
 「不二―! お前それでいいのかよ!?」
 「え・・・? 何、が?」
 「『何が?』じゃないでしょ不二先輩!! 越前のヤツに思いっきり『キライ』って言われたんスよ!?」
 『え・・・・・・?』
 2人にがくがく揺さぶられながら不二が、そしてその会話に突如出てきた自分の名前にリョーマが声を上げた。
 「何でいきなり越前君が出てくるの?」
 「俺別に先輩に『キライ』なんて言ってないっスよ?」
 『へ・・・・・・?』
 その2人を真似するかのように、今度は英二と桃がハモる。
 「え・・・、だって不二、お前今おチビ相手にさっきの話試してたんだろ?」
 「僕が越前君に? そんなわけないじゃない」
 「・・・となると、オイ越前。お前今誰から電話きたんだ・・・?」
 「菜々姉から。菜々姉、母さんと買い物に行くって、そんで俺の服も見てくるから何色がいいかって訊かれて・・・・・・」
 「何色? 普通その前に『どんなのがいいか』って訊かねえ?」
 「『動きやすい服』っていつも言ってるし。俺別にどんな服でもいいからそこらへんは菜々姉たちが決めてくる」
 「は〜・・・・・・」
 つまりリョーマの『青』は不二の『質問』に答えたのではなく『何色の服が欲しいか』という従姉に答えただけなワケで・・・・・・。
 どうりでこの『質問』の意味を知っている彼が平然と答えたと思ったら。
 「じゃあ不二は? お前誰に訊いてたんだよ?」
 「もちろん裕太vv
 にっこりにこにこ笑顔の大バーゲンの如く微笑む不二。この様子では何も知らない裕太は『赤』と答えたのだろう。
 「良かったスね。先輩」
 「ありがとうv 越前君vv」

 そんな感じで盛り上がる2人を遠くから見ながら―――
 「思ったんだけどさ、これってスッゲーな質問だよな・・・・・・」
 「不二先輩って、他の色合わないんじゃ・・・・・・・・・・・・」
 「うんにゃ。かろうじて合うのは黄色か・・・・・・」
 「コレ・・・質問というより誘導尋問じゃないっスか・・・・・・?」
 「だよな。しかもぜってー不二わかっててやったっしょ・・・・・・」
 「万が一『黄色』って答えられても都合よく解釈したんでしょうね・・・・・・」
 「気の毒に裕太・・・・・・・・・・・・」
 「ホントっスね・・・・・・・・・・・・」
 「―――ん? 何か言いたい事あるのかな? 2人とも」
 『全っ然! ない(っス)!!』
 不二の笑顔を前に、ぶんぶんと首と手を振る2人。
 さてその電話の相手は―――




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 「何だったんだ・・・・・・?」
 「どうしたの? 裕太」
 「あ、木更津さん・・・・・・」
 寮備え付けの電話の前で、わけがわからず首を捻っていた裕太。丁度現れた木更津に、ダメ元―――というか何となく誰かに聞いて欲しくて事の顛末を話した。
 と―――
 「で、裕太は赤を選んだんだ」
 「はい。あの兄貴なら他の色って考えにくいですし・・・・・・」
 「ああなるほど。おめでとう裕太」
 「へ・・・・・・?」
 返って来るは謎の言葉。より首を捻る裕太を残して去りつつ、木更津はちらりと目だけで後ろを向いた。
 (他の答えだったら命がなかっただろうね・・・・・・)
 実は同じ番組を昨日見た柳沢に、同じ質問をされたのだ。そしてもちろん意味も聞いた。
 大変な人に好かれた哀れな後輩を見ながら―――
 クス・・・・・・
 木更津は今日もまた、いつもと同じ能面の笑みを浮かべていた。

―――捻りは一応こちらにて!









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 はい。以上本日放送『伊東家〜』より、<電話でも聞けてわお! とっても便利v なウラ技(もちろんこんなあおり文句は付いていません)>でした。やってみて当たるのか否か。今回実験を行った彼らは実際の人物ではないので何とも言えませんが、イメージカラーのある人ってどうするんだろう・・・・・・?
 では以上。ラストに一言。レツゴを前座状態にしたのは決して愛がないからではありません! ネタがなかっただけで(爆)!!

2003.9.9