伝勇伝編2(ライナ&フェリス×シオン(爆))


 本日は、ローランド帝国年に1度のお祭りである。お祭り―――シオンが王位についた、その記念。
 「・・・・・・ってそれじゃまるで俺が自分祝っちゃう横暴な王みたいじゃないか」
 「陛下がそのような方だと信じる者も多数いるかと」
 「おい・・・」
 「冗談です」
 シオンの半眼をしれっと流し、
 フロワードはいつも通りの感情のない表情で―――しかしその奥でいつも冷たい瞳をほんの僅かに緩め、呟いた。
 「この祭りは国民の誰もが自ら望んで行っているものです。いずれは世界中で同じように祭りが行われるでしょう。陛下、あなたを称えて」
 「はは・・・。じゃあ祭りのメインイベントは昼寝大会だな」
 「それはまたどのような理由で?」
 表面では「寝不足だからですか?」、そして誰にも悟らせない暗部で違う事を問い掛けるフロワードに・・・
 「さーな」
 シオンは実に楽しそうに笑った。





‡     ‡     ‡     ‡     ‡






 本日は、ローランド帝国年に1度のお祭り。誰もがこの国を、王を称え自分達を祝うお祭り。それはとてもとても平和に終わる・・・・・・筈だった。
 今だにシオンの命を狙おうとするチャレンジャーと、そして・・・





 ・・・・・・洪水により海に流され遭難し、イエットよりローランドへ舞い戻ってきたどこぞの誰からがいなければ。





‡     ‡     ‡     ‡     ‡






 「おお!? 今日何か祭りらしいぞ!? 何の祭りだ?」
 「知らないのか? 王の即位を称える祭りだ。近年より始まった」
 「うっわ〜。シオンってばそーいう事やっちゃうんだ〜」
 「信じられんな。あのような冷酷非情な王を称えるなど」
 「つまりお前はこの祭りは反対だ、と?」
 「いや賛成だ。ウィニットだんご店がこの日限定メニューを出す」
 「結局賛成かよ!? てか結局だんごかよ!?」
 「当り前ではないか」
 「え〜っとだから・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もういいです」
 「うむ」
 帝都にて、そんな会話で盛り下がるどこぞの誰からことライナとフェリス。
 「そんなわけで私はだんごを買ってくる。お前は自由にしていろ」
 「はいはい」





 「つっても俺ってば祭りとかってあんま好きじゃないんだよなあ。なんかみんなこれでもか! って位張り切っちゃってるし。
  ふあ〜あ。どっかで寝れねえかなあ・・・」
 「―――お客さ〜ん。ならここでちょっと寝てかないかい? お代はこの位で」
 「うお・・・。今時寝るのにも金取るのかよ―――
  ――――――ってシオンん!?」
 「よっ。ライナ」
 振り向くライナ。にこにこ笑って手を振っているのは、今回の祭りの名目上兼実質主役たるその人だった。
 「お前な〜にやってんだよ」
 「ん? 俺は働きすぎだってみんなに注意受けてな。今日くらい羽根伸ばして来いだってさ」
 「はあ? お前が働きすぎ? んじゃいろんな国吹っ飛ばされて毎日誰のせいでとは言わないけど死線駆け巡ってる俺なんて、もーこの先一生休んでておっけーじゃん」
 「その割には成果ないみたいだけどな。それじゃ『働いた』とは認められないんだぞ? 残念だなあライナ」
 「ぐっ・・・・・・」
 「というワケでお前に仕事を与えよう」
 「もう散々与えられてんだろ!? これからエスタブール行くんだし、今日くらい休ませろよ!!」
 「駄目だ。お前は『働いてない』に分類されたからな」
 「お前だろーがしたの!!」
 「さってそんなワケでお前への任務は、
  ―――今日のお祭り、俺に付き合う事」
 「へ・・・? え・・・? そんなんでいいのか・・・?」
 「ん? 不満か? じゃあ仕方ないな。予定を繰り上げ今すぐエスタブールに行って―――」
 「それでオッケーです!!」
 「よしよし。んじゃ行くぞライナ!」
 「は〜あ。マジでコイツがこの国の王なワケ? 大丈夫か? この国」





‡     ‡     ‡     ‡     ‡






 というわけで成り行き上シオンとお祭り回る事になったライナ。
 (うあー・・・。メンドくさ・・・。まあとりあえず・・・・・・
  ――――――財布の心配しなくてよくなったのはいっか・・・・・・)
 そんな事を考える通り、事実2人はよく買いよく食った。いや食べ物以外は買わないのかとか遊ばないのかとか訊かれそうだが、やはり健康男児。まず引かれるのは食べ物の美味しそうな匂いだろう。
 そしてまた出店へと入る。
 「こ、国王様!! わざわざこのようなところへどのようなご用事で!?」
 「いや何。せっかく僕を祝ってくれるものだしね。いろいろ見て回ろっかと。
  あ、それくれないかい?」
 「はい! いくらでもどうぞ!!」
 「いやいや。お代はちゃんと払うよ。だから2人前よろしく」
 「かしこまりました!!」
 いそいそ用意する店員。見て、ライナが首を傾げた。
 「そういやシオン、お前こういうトコ来んのに変装とかしねーの?」
 「ん? 変装? それはつまりアレか? 変態色情狂として有名になりすぎたお前はもうそのままの格好では人前を歩けない、と?」
 「違げえよ!!
  ただお前羽根伸ばしに来たんだろ? 会う人会う人『国王様〜』って呼ばれてんじゃあんま意味なくねえ?」
 ぽつりと言う。言ってから、それこそあまり意味がない事に気がついた。どんなに変装したところで無駄だろう。顔より、格好より。何よりシオンは雰囲気で『王』である。シオンがシオンであり続ける限り、一生その束縛からは逃れられないだろう。
 (複写眼[コレ]みたいにな・・・)
 逃れる手段はあるのだ。死んでしまえばいい。もしくは、暴走させてしまえば。
 自分が自分でさえなくなれば、この重圧から逃れる事が出来る。全てがどうでもよくなれば、この抑圧から解放される。
 わかっていて、それでもそれを選ばない。自分である事を止めはしない。自分も―――シオンも。
 自分がシオンの肩代わりを出来るとは思っていない。その負担を一緒に背負ってやる事など出来はしない。自分は自分で、シオンはシオンなのだから。
 だからこそ、今の質問にも意味は込めなかった。どう答えられても、自分にはどうする事も出来ないから・・・・・・。





 ぱちくりと瞬きするシオン。別にライナ本人は意識してそこに深い意味―――気遣いとか優しさとかその辺りを入れたりはしていないだろう。だが・・・
 そんな事を言ってきたヤツは初めてだ。誰もが自分を心の底から『王』として敬っている。自分もそれを当然として受けていた。それに対する負担や疲れなど・・・・・・ないはずだった。
 思う。確かに自分は王だ。しかし同時に自分は自分だ。『王』というのは位を表す言葉であっても決してそれ以上のものではない。誰しもが忘れていて―――その実絶対忘れてはならない事。
 王は特別ではない
 フッ・・・と、シオンは鼻から息を抜いた。それだけで随分楽になる。
 ライナの頭をぽんぽんと叩き、
 「大丈夫だ。心配するな。俺は充分羽根伸ばしてるよ。現に今だって」
 「そーかあ?」
 なおも疑わしげに半眼を向けるライナに、にやりと笑う。
 「それにな―――」
 「あ、な〜んかヤな予感・・・・・・」
 何か聞こえたような気もするが無視し、
 シオンは声を張り上げた。
 「皆さ〜ん! ここにかの有名な変態色情狂、ライナ=リュートがいますよ〜!!」
 『えええええええ!!!???』
 『国王様が人質に取られてるわ!!』
 『なんて卑怯な!!』
 一斉に上がる声。周り全員の注目を浴び、
 「ほら、お前の方が目立ったぞ」
 「だからどうしたあああああ!!!!!!!」
 ぴっと指を立て得意げに笑うシオンに一応突っ込み、ライナは彼の手を掴み殺気溢れるその場から逃げ出したのだった。





‡     ‡     ‡     ‡     ‡






 さてその頃よりちょっと後、1人だんご屋巡りをしていたフェリスは―――
 どん―――!!
 「どけ! 女!!」
 「早くしないとシオン=アスタールを見失うぞ!!」
 「クッソ! あの男まさかこっちに気付いてんのか・・・!?」
 そんな事を言い残し足早に(というか走って)去っていくあからさまに怪しい一団。突き飛ばされた女を助け起こす事もなく、だんごを口から離す。
 「ふむ・・・。王、か・・・・・・」
 呟き―――
 フェリスもまた、男達を追って走り出した。





‡     ‡     ‡     ‡     ‡






 人気のない開けた裏路地(矛盾した言い方)にて。
 「はあ・・・。はあ・・・。よし、ここまで来れば安全か・・・・・・」
 「なるほどなあ。人気のないここならいくらでもヤり放題だ、と」
 「だからいい加減そっから離れろよ!! 最近なんかお前言動がフェリス化してるぞ・・・?」
 「いや、どっちかっていうとフェリスが俺化してるんじゃ―――」
 「お前かよ原因は!!」
 両手を戦慄かせるライナと、どうどうと落ち着けさせるシオン。2人の動きが―――
 ぴたりと止まった。
 「なあシオン、そういやこういう展開前にもあったよな」
 「ああ、まだ学院行ってた時か。懐かしいな」
 「お? 何か余裕そう? んじゃお前に任せて俺は寝ててい―――」
 「なワケないだろ? 俺今王としての仕事に追われてロクに体動かしてないんだから。大体あの時だって通りすがりのフェリスに助けられてなかったらマジやばかったんだぜ?」
 「はあ? 通りすがりのフェリス? 何やってたんだよアイツはあんな真夜中」
 「訓練でパトロール中って言ってたけど・・・・・・だんご食べてたトコからすると実はパトロールにかこつけてだんご買いに行ってたのかもな」
 「未来の英雄王、通りすがりのだんご娘に命を救われる・・・・・・。ありえねえ・・・・・・」
 「2国間の長きに渡る戦争が変態色情狂によって解決したって方がよっぽどあり得ないだろ」
 「ローランドってヤな歴史刻んでんなー・・・・・・」
 「否定しないのか?」
 「もーしない方が楽な事に最近気付いた」
 「ちっ。つまらないな・・・」
 「・・・・・・お前とフェリス、マジで性格似てきたよ」
 「なら次は俺がお前の相棒か」
 「どっちもいんねーよ!!」
 掛け合い漫才をしている間にも、周りの気配は着実に準備を整えているようだ。完全に囲まれた。その上範囲を狭めてきている。合図と同時、一斉に飛び掛ってくるだろう。
 と―――
 闇から声が届けられた。
 『シオン=アスタールだな?』
 「あ、何々? シオン、お前確認されちゃってるよ? わざわざしないと解らない程お前って実は有名じゃなかったんだ」
 「うるさいなライナ」
 「ちょっと今のショックだった? 声張りないぜ?」
 「そうだ! 
コイツがシオン=アスタールだ!!」
 「ちょっと待てい!! 何お前さりげなく俺身代わりにしてんだよ!?」
 『嘘をつくな!!』
 「何だわかってんなら訊くなよ」
 「そりゃお前、これから殺す予定のヤツわかんなかったら大爆笑だろ・・・」
 「わざわざ訊いてきたんだからその可能性も―――」
 「ズレてる!! ズレてるぞお前の認識世間一般から!!」
 『シオン=アスタール! 貴様を殺す!!』
 自分から振ったクセに無理矢理会話をぶった切り襲い掛かってくる暗殺者ら。極めて解り易い『合図』と共に、四方八方で広がる殺気を捕らえ、
 シオンは魅惑的な笑みを浮べた。
 「さってライナどうする? 狙われてるのは俺1人みたいだ。今回も逃げるか?」
 「はあ? ンな事しちまったら俺が極悪非道っぽいじゃねえか。
  ・・・ったくしょーがねえなあ」
 「さっすがライナ。愛してるぞv」
 「嬉しくねえよ!!」





‡     ‡     ‡     ‡     ‡






 襲ってきた黒ずくめ大勢に対し、2人が放った魔法は同じ物だった。
 『求めるは雷鳴>>>・稲光』
 「ぐわっ!!」
 「がっ!!」
 真正面からの1撃。手馴れた暗殺者ならばこの程度当たりはしないだろう。が、
 「ライナ、お前今何使った?」
 「稲光だろ?」
 問うシオンにしれっと答えるライナ。間違ってはいないが―――厳密には合ってもいない。確かに使ったのは稲光だった。ちょっと魔法を弄くり、同時に放たれたもうひとつの稲光と干渉し合う稲光。相手が避けられなかったのは普通に2つ放たれた場合より効果範囲が大きかったからだ。
 「・・・・・・ま、いっか」
 こんなところで魔法講座をしていたところで仕方ない。シオンもあっさり諦めた。次の敵へと向かう。
 背中越しにその後姿を見て、ライナは軽く舌を巻いた。
 (さっすが学院主席はすげーな)
 シオンは複写眼の事はもちろん知っている。自分も彼の前で使った事がある。
 ―――こういう魔法の使い方はした事がなかった。複写眼とはほとんど関係ないアレンジは。
 なのに1撃で見抜いた。詳細はともかく、おおまかには。
 普通なら何が起こったかわからず混乱するものだ。そう、・・・・・・例えば目の前の暗殺者らのように。
 「な、何が起こったんだ今・・・!?」
 「え、ええい! ひるむな! 行け行け!!」
 混乱が生み出す一瞬の隙。
 「遅せえよ」
 呟き、
 ライナは駆け出しながら次の魔法を放った。
 「我・契約文を捧げ・大地に眠る悪意の精獣を宿す」
 「エスタブールの魔法・・・!?」
 「まさか・・・!! もう実用段階まで達していたというのか・・・!?」
 (ん・・・?)
 謎の台詞に首を傾げ・・・・・・納得する。
 (ああ。なるほどね。そういやローランドってエスタブール取り込んだんだっけ)
 注:きっかけ作った張本人。
 自分がやった事をすっかり忘れ―――まあ取り込まれている間ライナはずっと牢にいたのだから知らなくて当然と言えるだろうが―――頷くライナ。にんまりと笑う。
 (つまり、これからはローランドじゃエスタブールの魔法は使い放題ってワケね)
 お言葉に甘え、使わせてもらう。
 「我・契約文を捧げ・天空を踊る光の魔獣を放つ」
 「だっ・・・!!」
 「うおっ!!」
 これまた隙をつかればたばた倒れる数人。真正面から挑めば強いのだろうが、そんな力比べなどしてやる義理はない。
 ぱんぱんとついてもいない埃をはたき、
 「これでこっちは終わりっ・・・・・・・・・・・・おお!!??」
 振り向く。その先にあるのはなかなかに驚くべき光景だった。
 「アイツ何やってんだ!?」
 見ているのはもちろんシオン。そして彼はもちろん戦っていた。真正面から正々堂々。
 ある意味貴重な光景だった。1対3で斬り結ぶ(羽根を伸ばしに来たシオンは武器を携帯してはいなかった。今彼が使っているナイフは誰かから奪ったものだろう)彼ら。どころかその足元には既にやられたらしい黒ずくめの姿まで。
 もうちょっと見学していたい気にもさせられるが、さすがにそれをやるのはマズいだろう。後で何をねちねち言われるかわかったモンじゃない。それに―――
 「危ねっ!!」
 さすがに1人で3人相手はキツいか、それとも本当に最近体が鈍ったのか、力負けしたらしいシオンが僅かに体勢を崩した。次の一撃まではかろうじて防げるだろう。だがその次は確実に当たる。そして相手は3人。1人1回で次の次まで行ける。
 加速した体のまま、ライナはそちらへと走っていった。『次』を掲げたナイフで防いだシオン。膝をつきかけた彼の腕を掴み、無理矢理引っ張る。
 『次の次』の攻撃。致命傷だったはずのそれは、ライナが引っ張ったおかげで髪数本の被害で済んだ。
 さらに引っ張って下がろうとして―――
 「お前重ッ!!」
 「・・・失礼なヤツだな」
 今までこういった使い方をした事がなかったライナが失念していた事。例え自分は加速していようが相手は普通なのだ。だからこそこの状態での攻撃は、受けた相手が即座に弾き飛ばされず衝撃を存分に体内に溜め込むためより威力が大きいものとなるのだが。
 元々それがわかっていればそんなメには遭わずに済んだのだろうが、自分1人の時と同じノリで動こうとすればこのような事態が待っている。
 「うわっ・・・!!」
 「ちょ、ちょっとたんま!!」
 引っ張ろうとし、シオンと共に体勢を崩すライナ。好機と取られ、『次の次の次』の攻撃を受けた。それは転がって避けたが、次の〜はもう絶対無理だ。
 両手を掲げ何とか急所は守ろうとする2人。そこにナイフがざくぅっ!! と・・・
 ―――めり込まなかった。
 どごっ―――!!
 「へ・・・?」
 攻撃しようとしていた3人が一瞬で吹っ飛ばされた。吹っ飛ばしたのはもちろん―――
 「―――やっといたか王」
 「フェリス!?」
 闇から現れた金髪美人というか知り合いに、先に反応したのはライナだった。一応感動の場面だろうに、フェリスは相も変わらずの無表情な眼差しで相棒を見下ろした。
 「ん? ライナ。なぜお前がここにいる?」
 「そりゃお前の方に訊きたいよ・・・。だんごツアーはどうしたんだ?」
 「うむ。途中でその者らに会ってな。王の名を口にしていたのでついてきた」
 「え・・・? フェリス・・・、まさか俺を助けるためにわざわざ・・・?」
 驚くシオンに、
 フェリスはふるふると首を振った。
 「お前に一言言いに来た。最近仕送りの額が少ないぞ。これでは満足にだんごも買えないではないか」
 「・・・・・・・・・・・・。だよな。そーだよな」
 いろんな意味で安心するシオン。一方、
 「ちょっと待てい!!」
 ライナはがばりと身を起こし、シオンの襟首を掴んだ。
 「今のは聞き捨てなんねーぞ!? てめシオン!! 俺にはもう遊ぶ金は送れんとか言ったクセにフェリスには金渡してたってか!? おかげで俺は飯食うためにどんっだけ! 苦労したと思ってんだよ!! 俺的にあり得ねえアルバイトとかまでしちゃったんだぞ!?」
 「あれ? 金ならちゃんと毎月送ってるだろ? フェリス宛てに」
 「来ねえよそれじゃ!!」
 「仕方ないなあ。じゃあ次からは確実に届くようにイリスちゃんに持たせるか」
 「余計に届かねえよ俺ンとこにゃ!! 俺とフェリスの分2つに分けてしっかり届けろ!!」
 「それはいい案だな。では次からはそうしてくれ。配分は
10対0で」
 「俺が0か!? 俺が0なのか!?」
 「決まっているだろう? 何を2度も確認を取っている?」
 「だああああああ!!!
  シオン!! 俺にこれ以上暴れて欲しくなかったら今すぐ金払え!!」
 「なるほど。王を恐喝か。いい案だな。実に効率よく金が入り、そしてお前は犯罪者としてのランクをさらに上げる」
 「『効率よく』の中身がすっごい気になるな・・・」
 「もちろんライナが犯罪者として有名になればなるほど『月間・犯罪者』の売上部数が伸び印税が手に入るからだ」
 「なるほどなあ。確かに効率いいな」
 「そこじゃねえよ感心ポイントはあ!!」
 一通り突っ込み、
 ライナはフェリスにびしりと指を突きつけた。
 「よしわかった!! フェリス! 勝負だ!!」
 「む? 勝負? 何のだ?」
 「今回の支給金、倒したヤツらとおんなじ割合で分ける!! それでいいな!?」
 「ふむ。よかろう」
 「んじゃいくぞ!!」
 「だんごのために、私は全力を持ってお前含め全員を屠ろう」
 「俺は入れんなあああ!!!」
 「っておーい。金払う俺無視して進めるなよ・・・・・・」





‡     ‡     ‡     ‡     ‡






 結局ライナの血涙に負け有り金全てを払ったシオン。これをネタにライナ・シオン共に後々フェリスに散々ボロクソ言われるのだが、それはいつもの事。
 かくて、羽根を伸ばしたかはともかくとしてとりあえずシオンの財布の中身のみ軽くなり、この祭りは終了したのだった。





‡     ‡     ‡     ‡     ‡






 「お帰りなさいませ陛下。祭りはどうでしたか?」
 「そうだな。まあ・・・
  ―――払った分に見合うだけは楽しめた、かな?」



―――伝勇伝編 Fin








 ―――さて、初登場者らその2。ついにフロワード登場! そしてクラウは今だ登場できず!? ああ! またしても時期が悪かったため断念です!! なお話の内容、確か『偶然シオンを助けるライナ』がテーマのはずだったのに、「お客さ〜ん。ならここでちょっと寝てかないかい?」の誘惑に負けこのような話となりました。
 ところでこれ、ライシオもどきで書いたのですが(このシリーズ、全体的に
CPなしなのでそれで統一しようかと)、中間読むとむしろシオライっぽい!? さすがCPの定義がよくわからん自分だ(誉めてどうする)!!
 そしてあえて曖昧にぼかしたラスト。シオンが『払った』のはもちろん『命の危険』も含まれます。

2004.12.914