テニプリ氷帝+α編
文化祭2日目、最初1分半は嫌々言っていた自警団にもみんな慣れてきたところで・・・
この日、氷帝には最大の障害が来襲した。
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「さってまずはどこ行こっかなー」
校門ちょっと内側にて、もらったパンフをさっそく広げる佐伯。本日彼は幼馴染をちょっとびっくりさせようと思い立ち、氷帝の文化祭に参加する事にした。
「景吾はどんな事やってんのかなあ」
ウキウキしながらパンフをめくる。・・・・・・これで跡部のクラスか部活がロクでもない出し物をやっていたら指を指して笑い飛ばしてやろう。
幸せの笑みを無防備で垂れ流す彼。見てしまった女子は歓声を上げ携帯に撮る事もなく気絶し、男子は鼻を押さえトイレに駆け込んだ。
―――この辺りの事はいつも過ぎるためどうでもいいとして。
「じゃ、さっそく行ってみようか」
ぱたりとパンフを閉じ、佐伯は凭れていた壁から身を起こした。よくよく考えたら跡部の所属クラスを知らなかった。部活もとっくに引退している(自分らはそれでもやったが)。
「ま、片っ端っから回ればその内会えるだろ」
そう呟くとおり、確かに彼はこの後目出たく跡部に出会うことが出来た。ただし――――――偶然ではなく必然で。
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暫く見て回っていると・・・・・・どこででも見られる光景が見られた。
「おらテメエらそれが客に対する態度か!?」
「きゃああああ!!!」
汚いダミ声と耳にウルサイ悲鳴。どうやら店荒しらしい見たまんまだが。
見て、
佐伯は顔を綻ばせた。
「―――ああ、やっぱこの辺りは六角も氷帝も変わんないな」
先ほどから出す店出す物全てレベルが違ったのだ。さすが金持ち校。自分達のような、自家採取物加工品(つまりは自分達で育てた獲ってきたものを調理して提供する)は全く無かった。喫茶店は今すぐそこらで店が開けそうなレベルだし、ちょっと食堂に寄ろうと思えば本格フランス料理フルコースが出てくる。挙句遊びの景品が海外旅行など、佐伯的感覚では絶対ありえないもののオンパレードだった。
かなりの疎外感を覚える中でのこの光景。妙やたらと嬉しくなる佐伯を決して誰も責められないだろう。
安心して、
佐伯は騒ぎの輪へと踏み込んでいった。
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「あれ〜? 佐伯〜、ひっさしぶりじゃん!」
「ああ、芥川。久しぶりだな」
「どーしたんだ? オメー」
「いや別に? 氷帝遊びに来ただけだけど?」
「そーかそーか。ところでよお―――今何か騒ぎなかったか?」
「騒ぎ?
・・・・・・何か店荒しあったみたいだけど?」
「んでそいつらどーした?」
「邪魔だから片しといた」
「オメーが?」
「ああ」
「何人?」
「9人」
あっさりそう言う―――軽さだけならそれこそそこらに散乱していたダンボールでも片付けたノリだ―――佐伯に、
聞いたジローは覚醒モードから寝ぼけモードへと移転していった。
「あ〜あ。9万〜せっかく丸儲けのチャンスだったってのに・・・・・・」
「9万?」
きょとんと・・・見た目だけきょとんと問う佐伯。寝ぼけモードのジロー―――いや『知らない』ジローは気付かなかった。問いながら、佐伯の目がギラリと光った事に。
「どういう事だよ?」
瞬きして誘導尋問する。「ちょっとちょっと教えてみ?」といった感じの様に、あっさり乗ったジローがあくび混じりに説明した。
「俺ら自警団なんよ。でもってそういうの1人倒すごとに1万くれるって跡部が言ってたんだよな」
「実際くれるのか?」
「くれるぜ? 昨日で俺5万稼いだ」
「へえ・・・・・・」
薄く笑い、頷く。心の内で笑いが止まらない。なんて良い企画を用意してくれたんだ跡部!!
もちろんそれらは表には出さない。が、
「おお、ジロー。守備はどう―――って佐伯ぃ!?」
「お、お前なんでここいんだよ!?」
向こう側から走ってきた宍戸と向日―――『知っている』2人が必要以上に驚いた。
「よっ。宍戸に向日。久しぶり。
そんなに驚くなよ。遊びに来ただけだって」
ぱたぱた手を振る佐伯に、2人してうさんくさげな目線を向ける。
あえて返事はせず、
「おいジロー、ちょっと聞きてえんだが」
「まさかお前・・・・・・佐伯に何か吹き込まなかったか?」
「自警団の事? 言ったけど?」
『うがあああああ!!!!!!』
あっさり肯定。頭を抱える2人を今度こそきょとんと見やる佐伯とジロー。
またまた佐伯を無視し、
「お前何て事してくれたんだよ!!」
「へ?」
「いいか!? 今回の計画においての要注意人物は3人! 日頃何とかして跡部に取り入ろうとする千石に何か見かけたら説教せざるを得ない真田、でもって何よりコイツだ!!」
「ほえ? そーなの?」
「そーだ!! 何せコイツは―――」
2人の体がぶるぶる震える。何かを溜め・・・
佐伯を手で指し示し、同時に叫んだ。
『俺らと同類だからだ!!』
「――――――っ!!??」
ジローの体が雷に打たれる。どうやら彼も『それ』の意味を察したらしい。自分が如何にしてはいけない事をしてしまったか。
「ちょ、ちょっとたんま佐伯!! 今のはオメーには関係な―――!!」
慌てて手を伸ばす。が遅かった。
「景吾〜〜〜〜〜〜vvv」
店荒しが暴れているという話を聞きやってきた跡部へと、
佐伯は本日最高潮の華を飛ばして駆け寄った。
「よお佐伯、どうしたよ?」
「景吾vv」
にっこにっこにっこにっこ。
笑って・・・
手を差し出す。
「9万くれ」
「・・・・・・あん?」
「店荒し倒したんだ。9万くれ」
目に異常な光を灯しそんな事を言う佐伯。さらに向こうで頭を抱え項垂れる3人。
一通り見て、跡部は大体の構図を理解した。
ため息をつき、呟く。
「佐伯・・・」
「くれるのか!?」
「ありゃ『自警団』のみ有効だ」
・・・・・・・・・・・・
冷たい風が吹き抜けていった。
吹き抜け・・・収まり・・・・・・。
佐伯はくるりと振り向いた。
にっこり笑う。指をばきぼき鳴らして。
「さ、て、と。
――――――誰が死にたい?」
‡ ‡ ‡ ‡ ‡
「んじゃ佐伯、約束の12万な」
「サンキュー」
「って俺らまで邪魔者扱いかよ!?」
「ヒデーよ跡部佐伯ばっか!!」
「ハン! 言ってろ負け犬どもが。
じゃあ今日1日頼むな、臨時自警団」
「もちろん。お前(の持ってる金)のためならお安い御用さ。
あ、昼一緒に食べようぜ?」
「いいが・・・いつになるかわかんねえぞ?」
「いつでもいいって。待ってるからさ(お前が払ってくれるの)v」
「バーカ」
ほのぼのやりとりで去っていく2人を地べたから見上げ、
「だから・・・・・・佐伯にゃ言わねえ方がよかったんだよ」
「すっげー納得」
「つーか・・・・・・
跡部もいい加減目ぇ覚ませよ・・・」
腕章を奪われ、自警団として金をもらえる権利を剥奪された敗者3名は、
ひたすらたかられている哀れ部長にただただ合掌するばかりだった。
―――テニプリ氷帝+α編 Fin
―――白サエは・・・? 確かコレ、初っ端5行辺りは真っ白化計画進行中だったような・・・・・・。
そんなこんなで氷帝物語2日目は跡虎風でした。どちらかというと跡→虎か? 何にせよ・・・このままだとサエ、最終的には自分でサクラ雇って(もちろん脅迫[タダ]で)連れてきそうだなあ・・・。
2004.12.23