伝勇伝編2(シオンとライナ)
「シ、シオン・・・!! 頼む!! 匿ってくれ!!」
「ん? ライナ。いきなりどうしたんだ?」
「そ、それはいいから早く!!」
「・・・? まあいいけどな」
そんな感じでライナを匿ったシオン。余程疲れていたのか否かどちらかというと『否』の方が優勢なような気もするが・・・・・・ライナは寝室に案内されたなり説明も抜きで眠りこけてしまった。
「ったく俺を巻き込むならせめて事情わかるようにしとけよな・・・」
ボヤき、
シオンは笑みを浮べベッドに腰掛けた。
ライナの耳元に顔を近付け―――
「『あるところに、世界の全てを支配する神様がいました』―――」
・・・・・・どこかで聞いたような話をし出した。
「お前か全部の原因はあ!!」
「うわライナ! お前寝てたんじゃないのか!?」
いきなり叫んで起きたライナが、シオンには回避不可能の動きで彼の襟を拘束した。
一見それこそいつもフェリスが言っている『変態色情狂と哀れな被害者』。しかしながら、
「お前その睡眠学習今回で何回目だ!?」
「えっと・・・、学院いた時からだから・・・・・・少なくとも50回は越えたな」
「勝手に人の記憶書き換えるんじゃねえ!! 本気でガキの頃の記憶かとか思っちまったじゃねえか!!」
叫ぶライナの目には、直接は見えないが血涙が溢れていた。
「・・・・・・何かヤな事でもあったのか?」
「あったぞたっぷりと現在進行形で!!」
「・・・・・・。そうか」
カクカクと頷く。具体的に何があったのか全く説明されていない事には変わりないが、まあこのライナの様子を見ればさぞかしイヤな事があったんだろうなあ・・・位はわかるというものだ。
「じゃあライナ―――」
薄く笑い―――ライナに話を聞かせた時と同じ笑みで―――シオンはライナへと両手を伸ばした。
頬に触れさせ、囁く。
「俺がお前の『神様』になってやるよ」
「え・・・?」
「俺がお前の望み、何でも叶えてやるよ」
「つまりそれは〜・・・、
―――俺がその『少女』役?」
「ああ」
頷く。暗に『お前を愛している』と篭めた言葉遊び。話自体は作りものだが、本当にライナのためならば何でもしたいのだ。
そんなシオンの想いが伝わったのだろうか。真剣に考え込んでいたライナがにっこりと笑った。
「じゃあシオン―――」
「何だ?」
「後は頼んだ」
「・・・・・・・・・・・・は?」
返答と共に、逆を向かされ前へ押し出された。
そして、
ジュパッ!!
押し出されると同時に部屋の壁が切り裂かれた。
現れたのはもちろん・・・・・・
「ほう・・・。お前も『神』だったか王。ならばここはその変態神共々滅ぼさなければならない」
「だああああ!!!??? 来たああああああ!!!」
「え・・・? あのフェリス・・・。一体何の話を―――」
「問答無用」
ひたすらにワケがわからないシオン。全ての元凶は、結局ワケがわからないまま被害者その1と共に『裁き』を受けるハメとなった。
なお後日談として、この話はその後英雄王として伝説となった彼の生涯の中で、唯一の失敗談として永遠に語り継がれる事となった。
冗談。それは時にその後の全てを左右するものとなる―――Byシオン
2004.11.13