絢爛舞踏祭−ザ・マーズ・デイブレイク−編(ヤガミとグラム)
「なあグラム、お前は『神』ってモンを信じるか?」
地球軍のRB2機を士翼号にて切り伏せつつヤガミが尋ねた。
「はあ? いきなりなんだよ?」
「いや別に。ふいに思い出してな」
「ふいに、ねえ・・・・・・」
こちらは希望号でシーホースを撹乱させつつ、グラムが首を傾げた。
「何思い出したんだ?」
「小さい頃聞いた話だ」
「へえ・・・。どんな?」
「世界を作り出した神の話だ。少女に恋をした神は、少女の望みを何でも叶えたらしい。少女もまた最初はそれを喜んだ。しかしあまりにも上手く行き過ぎる展開に、今度は神に恐怖を覚えるようになった」
「そりゃまあ・・・だろうなあ」
敵RBの通信ケーブルを切断しながら頷く。
「最終的に少女の下した『望み』は神が消える事だった。神はその望みをもまた叶えた」
「んで、神様は消えてしまいました、って?」
「ああ。世界を道連れにしてな」
「・・・・・・・・・・・・んで結局そりゃ何の話なんだ?」
おとぎ話にしては妙に暗いような・・・。
RB2機を戦闘不能に陥れ尋ねるグラムに、
「さあな」
ヤガミはあっさりとそう言ってのけた。
破壊されたRBの爆発音が間を埋める。
「はあ?」
「俺にもわからん。ただな・・・
―――なあグラム、お前がもしもその『神』に出会ったなら、何を望む?」
もう動かないRBに興味を無くし、次の獲物へと向かう『死神』ヤガミ。
こちらも近付いて来たRBに武器を振り上げ、グラムは質問を口の中で繰り返した。
「何を・・・・・・」
特に悩む事もなかった。
振り下ろした武器がRBにめり込んだ頃には、グラムの中にはもうはっきりとした答えが出来上がっていた。
苦笑して、首を振る。
「何も」
「何・・・?」
「何も。望みは自分で叶えるモンだろ?」
タイミング悪く、ヤガミの至近距離で放たれた魚雷が爆発した。反射的に目を閉じた彼には、グラムの誇り高げな笑みも力強い眼差しも見る事は出来なかった。だが、
「なるほどな」
声だけでわかる。グラムの様子が。
こちらも苦笑して―――彼にこんな質問は無意味だったらしい―――頷くヤガミに、
今度はグラムが質問してみた。
「ちなみにお前なら?」
「俺もそうかもな」
「だろ?」
「だな」
通信機ごしに笑い合う2人。魚雷の一斉放射が辺りに華を咲かせる中、ほのぼのとした空気が流れ・・・
「ところでヤガミ、俺も訊くけどな」
「何だ?」
「お前誰かに『時と場合考えろ』って言われた事ないか?」
「よく言われるな」
同じく通信機越しに2人の会話を聞きながら、
「お前もだよグラム・・・・・・」
武勇号にて、アキはそう呟いていた・・・・・・。
冗談。コイツらの人生そのものがそれに見えてくるのは俺達の気のせいか?―――By夜明けの船船員一同
2004.11.14