キノの旅編2(陸とシズ)
「―――シズ様」
「何だい陸?」
「もしも私が神で、シズ様の望みを何でも叶えて差し上げると申したら・・・・・・シズ様は何と返されますか?」
「そうだな・・・」
それは、退屈な道中での何気ない会話。それ自体はいつも通りで。違うとすれば、切り出した方。いつも具に付かない事を言い出すのは自分だというのに。
隣に座る陸を横目で見やる。別に何か変わった様子は見られない。
改めて考える。今の自分の望みといえば・・・・・・
「陸・・・」
「はい。何でしょうシズ様」
「運転替わってくれ。眠い」
「あの、シズ様・・・・・・」
「ああ、これがハンドルな。足元にあるのがアクセルとブレーキ。横のがクラッチ」
「以前も申しましたが、私に運転は不可能―――」
「じゃあ後は頼んだ。おやすみ」
「シズ様・・・・・・!!」
通常の車を運転するには明らかに無理のある構造で、それでも前足後ろ足さらには鼻全てを駆使し何とか事故を起こす前に車を止めることに成功した陸。
くーくー本当に寝こけているシズを見、
「あのポンコツ・・・! どこが『退屈しのぎに丁度いい会話』だ・・・・・・!!」
冗談。時にそれそのものが既に冗談である事もある―――Byエルメス
2004.11.13