魔探偵ロキ編(鳴神とロキ)



 「ロキ! 俺は神としてお前の望みは何でも叶えるぜ!!」
 ばたん! と轟音を立てて不法侵入してくるなりそんな事を言ってくる正真正銘の『神』に、ロキは重々しくため息をついた。
 「ナルカミくん・・・。君が一体どこからどういう感銘を受けてそういう結論に達したかはわからないけどさ・・・・・・。
  ―――とりあえず君がそれ言っても冗談にならないよ?」
 「何の事だ?」
 「何の・・・・・・って」
 ため息が数乗される。どうやら本気で自分が何者であるか忘れているらしい。忘却防止にこれだけ『カミ』と付けてあげているというのに・・・・・・。
 「それはともかくロキ! こういう話があるらしいぜ!!」
 といった感じで切り出された話。一応一通り聞き、ロキの下した結論は・・・
 (まあ・・・繭良辺りが吹き込んだんだろうね・・・・・・)
 原因はわかった。一件落着。後は―――
 「―――で?」
 「ん?」
 「君が僕のために何かしてくれる」
 「お前の望みを叶える、な」
 念を押してくる鳴神を適当にあしらい、
 「それはわかったけど、具体的には?」
 「は?」
 「だから、具体的に何をしてくれるのさ?」
 「それは今からお前が言う通りの事を―――」
 「質問を変えるよ。
  具体的に君には何が出来るの?」
 「なっ・・・!?」
 ロキの完全見下し台詞に、鳴神がバッグに稲妻を従えずざざざっ! と後退していった。どうやらなかなかに痛いところを突かれたらしい。
 ぴたりと止まり、
 「今すぐラーメンが出せるぜ!?」
 「それはバイトで運ぶ途中だからだろ?」
 「・・・腕っ節には自信がある!!」
 「必要としてないし」
 「・・・・・・なんとこんな感じで好きな時に稲妻が!!」
 「いつ使えばいいのさそれ?」
 「・・・・・・・・・・・・」
 さらに数歩下がっていき――――――壁にぶち当たって止まった。
 「じゃ、じゃあ・・・・・・これでどうだ!?」
 「まだあるの?」
 「そう言ってられるのも今の内だぜロキ! 何と俺は―――
  ――――――こうして今すぐ金が出せる!!」
 『っえええええええ!!!???』
 懐から出された金―――それも万札に、
 ロキだけではなくたまたまお茶を入れに来た闇野まで声を上げた。
 「どーだロキ! 驚いたか!?」
 「驚いたよナルカミくん! いつも金欠で喘いでる君が万札持ってるなんて!!」
 「一体どうしたんですか鳴神さん!? 駄目ですよ犯罪に手を染めちゃ!!」
 「これで俺の凄さがわかった―――!!」
 「違うよ闇野くん! ナルカミくんは腐っても正義の味方! 犯罪行為なんてするワケがないよ!」
 「そうですねロキ様! たとえ赤貧芋洗い状態であろうと人間界での生活に馴染みすぎて己を見失っていたとしてもまさか鳴神さんがそんな事をするわけありませんよね」
 「・・・・・・ってお〜い。俺の話聞いてる?」
 「そう! 足りない頭で自分の事は忘れていたとしても、補って余りありすぎる本能でやっちゃいけない事はわかってるはずだ!」
 「ならこれは―――!!」
 「それを調べるのが僕達の仕事だ!!」
 「あのさあ・・・・・・」
 「そうですねロキ様! ではさっそく調査に行きましょう!」
 「ああ!
  ―――あ、ナルカミくん。調査に使うから終わるまでその万札預かるよ」
 ばたん。
 ばたばたばた・・・・・・。





 2人が出て行ってたっぷり時間が経ってから、
 「今日・・・、給料日だったんだけど・・・・・・」
 家の中では、鳴神のそんな寂しそうな声が響いていたらしい・・・・・・。



冗談。果たしてロキの態度は自分に対する仕返しなのかそれとも本気なのか・・・―――By鳴神

2004.11.13