テニプリ編2(佐伯と跡部)



 「好きなヤツの望みを叶えるのが自分の幸せ、ねえ・・・・・・」
 「ん? 何の事だ景吾?」
 「別に。何でもねえよ。ただここにそう書いてあっただけだ」
 「・・・・・・お前何読んでんだ?」
 きょとんと佐伯は顔を上げた。ベッドに腰を掛け何かを読んでいる跡部。
 ひょいと本を持ち上げる。表紙からするとどうやら童話のようだった。
 (また似合うような似合わないような・・・・・・)
 心の中で苦笑し、
 「お前はそうは思わない?」
 「何がだ?」
 「だから―――『好きなヤツの望みを叶えるのが自分の幸せ』」
 「・・・・・・さあな」
 「俺はそう思うけどね。
  な、景吾」
 呼びかけ、佐伯は跡部の隣に腰を下ろした。
 跡部の肩を抱き寄せ、
 「ホラ、こうしてるだけで幸せ」
 「・・・・・・。俺は別にンなモン望んじゃいねえだろ?」
 「そうか?」
 笑って、
 跡部を優しくベッドへ押し倒す。
 「だから俺は―――」
 なおも何か言いかける唇を塞ぎ・・・・・・





 おおよそ1時間後。





 「―――な?」
 つやつやした顔で指を立てる佐伯に、
 「・・・・・・。ああそうだな。よくわかったぜ」
 跡部は重々しく頷いた。
 「だろ?」
 「だな。
  ――――――『好きなヤツ』をイコール『自分』とすりゃ、そりゃ自分の望み叶えるんだから自分は幸せになれるよな」
 「だろ?」
 「違げえだろーが話の趣旨が思いっきり!! どこの世の中にンな自己中万歳な童話作るヤツがいる!?」
 「え・・・?
  お前はそういうの聞いて育ってきたんじゃないのか・・・!?」
 「ンなワケあっか!! そりゃてめぇの事じゃねえのか!? ああ!?」
 「ホラ。俺が聞いた=お前も聞いた。いつも一緒だったもんな」
 「聞いてねえっつってんだろ!?」
 「そんな頑なに拒否すんなよv お前の事はよ〜く知ってるんだからなvv」
 「全っ然!! わかってねえよ!!」
 「まったまた〜vvv」
 「だから―――!!!」
 今度は何者にも遮られる事はなかった。が、





 約3時間後。





 「・・・・・・もういい」
 「ホラ、やっぱその話はこういう解釈で正しいんだって」
 「ああ・・・。全くその通りだな」





 一生終わりそうにない会話に、跡部は自らの手でピリオドを打ったのだった。



冗談。それは確実に自分が勝てる相手に向けて言うべきものである―――By佐伯

2004.11.14