テニプリ編3(千石と佐伯)



 「サエくんサエくん!! 俺ってばサエくんの願い何でも叶えちゃうよ!!」
 「はあ?」
 出会い頭いきなりそんな事を言ってくるトリッキー男に、佐伯が最初に確認したのは時計だった。日付入りの時計にて。
 本日はエイプリールフールではない。4月ですらない。
 「・・・・・・まあ、どうしようもない輩は春に限らず年がら年中生息してるしな」
 「って違うから!! 俺は正気だから!!」
 「はいはい。異常者はみんなそう言うんだ」
 「違うって!! 俺は普通に普通な意味で君の願いを叶えたいって思ってんだよ!?」
 「そう主張されてもなあ。根拠は?」
 「訊いてくれる!? なんっと俺は何でも出来る神様だったんだ!! 好きな人の願い何でも叶えちゃうよ!!」
 支離滅裂な台詞。コイツは一体何から影響を受けたのだろう?
 (まあ、毎度恒例ゲームとかマンガとかからだろうなあ。夢と現実の区別のつかないヤツだし・・・)
 非常に失礼な事を考え、
 「うんわかった」
 「わかってくれる!?」
 「ああ。わかった。
  だから病院行こう? な? 千石」
 「全然わかってない!!」
 怒鳴る千石に、
 佐伯はにっこりと微笑みかけた。
 「大丈夫。俺もついていってやるから」
 「だから俺の話聞いてる!?」
 「聞いてる聞いてる。ちゃんと聞いてる。
  さ、まずはタウンページで最寄の病院探して・・・・・・」
 「俺は病気じゃないって!!」
 「ああ可哀想になあ千石。ついに自分の事もわからなくなったか」
 「サ〜エく〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!」
 千石が地団駄を踏む。
 見やって・・・
 「暴力まで振るうのか。重症だな。とりあえず手足縛ってから病院連れていくか。でもって煩いから猿轡も噛ませて、と・・・・・・」
 「ちょっとサエく―――むぐ!!」
 「これでよし、っと。
  あ、そういやこれからどうやって運ぶか・・・。これじゃ歩かせられないし、電車とかに乗せたら誘拐犯に見られるよなあ・・・・・・」
 「うむー!! むぐー!!」
 「ああそうだ。
  宅急便で送ればいいんだ」
 「むー!! みみむ〜〜!!!!」
 「送り先は・・・っと。えっと一応取扱い注意に丸して、ああ、天地無用は別にいいか」
 「むまー!!! まんむ〜〜!!!」
 「あっと、金は千石の家に後で請求すればいいのか。よしこれで完成、と」
 ビビビビビ・・・
 ぶちっ。
 『む〜〜〜!!! むま〜〜〜〜〜〜〜!!!!!』
 「じゃ、お願いします」
 「はい毎度どうも〜」
 がちゃん。
 ブロロロロ・・・・・・
 『むあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!』





 ―――千石がその後どうなったか、それは誰も知らない。



冗談。タチが悪いのはそれが冗談だとわかっていながら乗る人である―――By千石

2004.11.14