テニプリ編6(佐伯と不二)
「周ちゃん。俺はね、周ちゃんの望みだったら何でも叶えてあげるよ」
「ホント!? サエ!!」
「ああ。もちろん」
というわけで・・・
六角対ルドルフ、練習試合にて。
「んふふ。佐伯君。わざわざ試合前に僕を呼び出して何の用です?」
「ああ観月。よく来たね。
お前を呼んだのは他でもないんだ」
「つまり?」
人気のない校舎裏。標的が不用意に近付いて来たのを確認し、佐伯は壁から身を起こした。
ばきぼきと指を鳴らす。その顔は陰になって見えないが、目が爛々と輝いているのだけはなぜかよく見えた。
「つまり―――
――――――ちょっと死んでもらおうかと思って」
都大会準々決勝にて。
「練習試合で千葉代表の佐伯を圧倒したそうだ」
裕太に対するそんな乾の評価に、
「だろうね」
不二はくすりと笑った。
「む? つまり?」
不二と佐伯が幼馴染みだという情報は得ている。同時に2人は互角の実力の持ち主だ。いくら弟大好きの不二であろうと、だからといって公平な判断を欠くような真似はすまい。
眼鏡を押し上げる乾。データノートを確認する彼を制し、
「そりゃ『圧倒』だよ。不戦勝だったんだから」
「え・・・?」
「どういう事っスか?」
一緒に聞いていた青学メンバーが驚きの声を上げる。
「しかし、結果は6−0で裕太君の勝ちとなっていたぞ? 不戦勝ならDefとなってスコアは残らないはずだ」
「それじゃ裕太に悪いでしょ? 棄権した自分が悪いんからって、わざとスコア残したんだよ」
「ちなみに・・・
―――佐伯が棄権負けした理由は?」
「さあ? なんだろうね?」
笑い、不二はルドルフのベンチを見やった。誰も座っていない、空っぽのベンチを・・・・・・。
冗談。俺の身の回りでそれが通じない人が多すぎるのは何でだろう・・・・・・―――By裕太
2004.11.14