テニプリ編7(英二とリョーマ)
「おチビおチビ〜!! 俺神様になったんだ!! おチビの願い、何でも叶えるよ!!」
「・・・・・・へえ」
いきなりそんな事を言ってくる英二に、リョーマは無感動に返事をした。表面上は。
(よかった・・・。不二先輩じゃなくって)
心の中でひっそりこっそり額の汗を拭う。この台詞、英二が言ったのならばただのタワゴトとして一笑できる。しかし言ったのが不二だったならば・・・・・・
・・・・・・間違いなく本気でなったのだろう。神というかなんというか名称はともかく、とにかく何でも願いを叶えられるオールマイティ的存在に。
「で?」
「は?」
「おチビのお願いにゃ〜にかにゃ〜♪」
にっこにっこにっこにっこ・・・・・・。
笑顔で尋ねる英二に、
リョーマはぽんと手を打った。これまた心の中で。
表面上は笑顔を取り繕い、
「英二先輩、
―――俺ファ●タ飲みたいな〜」
「おっしりょーかい!! まっかせて〜!!」
ごくごくごく・・・。
「で、他には?」
「俺腹減ったっス。何か奢って?」
「かっるいかっるい!!」
ぱくぱくぱく・・・。
「で、他には?」
「そういえば最近グリップテープぼろぼろになってきたんスよね〜・・・」
「俺が買ってあげるよvv」
(ラッキー・・・・・・)
こうして、リョーマのいいように扱われる英二。
暫くして・・・
―――ようやっと英二も今の状況に気付いた。丁度いい財布扱いされている今の状況に。
「おチビ!」
「・・・何スか?」
「酷い酷い酷い酷い酷い〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
「はあ? 何がっスか?」
「だっておチビってば俺の事なんだって思ってんだよ!? 俺に買わせてばっかで!!」
「だって最初に言ったの英二先輩じゃないっスか。『俺の願い何でも叶える』って」
「そういうモンじゃなくって!! もっとこう!!」
「・・・・・・ワケわかんないっス」
「だから!!
叶えてあげて俺も幸せになる感じの!! 何か俺1人損してるっぽいじゃんか!!」
(やっと気付いたのか・・・・・・)
内心呆れ返るリョーマ。これで自分より2歳年上だというのだから世には異常事態が溢れ返っている。
それまた内心に留めるとして。
リョーマは英二の手をそっと握り、胸元へと持ち上げた。
「エージ・・・、俺の事嫌い?」
「え・・・!? そ、そんにゃこと・・・・・・//」
うるうる上目遣い&舌足らず名前呼びに英二があっさり陥落する。
真っ赤になった英二に一歩詰め寄り、
「俺の願い叶える、って・・・・・・
つまり俺に幸せになって欲しいって事、だよね?」
「そ、そりゃもちろん・・・・・・////」
「俺が幸せになったら、エージも幸せになるんだよね・・・・・・?」
「当り前っしょ!?」
(かかった・・・)
鼻息荒く頷く英二。本当にこの先輩は扱いやすくてたまらない。
さらに一歩詰め寄る。覗き込むように顔を上げると、もう息がかかるほど互いの顔は近くて。
駄目押しするように背伸びする。唇が触れそうなほど至近距離になって。さらに安定の悪くなったリョーマは必然的に英二に凭れかかる格好となって。
「俺、今幸せだよ・・・? だってエージがこんなに俺の事想っててくれてるってわかったんだから。
ねえエージ、
―――エージは今、幸せ?」
「おチビ・・・・・・」
英二がこれ以上ないほどに目を大きく開き・・・
ぎゅっとリョーマを抱き締めた。きつく、きつく。
「幸せに決まってんじゃん!! 俺今めちゃめちゃ幸せだよ!!」
満面の笑みを浮べる言葉通り幸せそうな英二。
幸せな彼はもちろん―――
(あーホンットこの先輩カワイイなあ・・・・・・)
――――――己の腕の中で、愛しい人がこんな思いに耽っているなどと知る由もなかった。
かくて・・・
「んじゃおチビ次は?」
「俺前から欲しかった入浴剤セットあるんスよね」
「んじゃそれ買った!!」
(英二の財布除き)全ては幸せのまま幕を閉じたのであった・・・・・・。
冗談。俺の身の回りでそれが通じない人が多すぎるのは何でだろう・・・・・・―――Byリョーマ
2004.11.16