跡部と佐伯の場合
目の前にて、夢が起こっていた。夢だと・・・・・・信じたいそれが。
「跡部くん! サエくん!! 不二くんを俺に下さい!!」
突如正装して現れた千石。どこだかわからないが高級料亭ちっくな畳の上で、いきなり座布団を捨て頭を下げてきた。
「跡部、サエ・・・。
今までお世話になりました・・・・・・」
その隣では、こちらは晴れ着姿の不二が目元にハンカチを当てている。
(こ、この展開は・・・・・・)
(まさか・・・・・・!!!)
顔中から流れる、怒涛の汗。古今東西この展開といえば来るのは1つ。
それを決定付けるかのように―――
2人、手を取り声をハモらせ宣言した。
「俺たち―――」
「僕達―――」
『結婚します!!』
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
z z z z z
次の朝。
「―――あ、千石君」
「不〜二く〜んvv 明けましておめ―――♪」
どすごすがす!!
不二家門前にて。不二に駆け寄ろうとした千石は隠れて見張っていた跡部と佐伯にさっそく殴り蹴り倒された。
地面をごろごろ転がり、
「―――っていきなり何すんのさ2人と―――!!」
「帰れ千石!!」
「2度と周ちゃんに近付くな!!」
「今後周の半径3m以内に近付きやがったら滅殺すっぞオラァ!!」
「・・・・・・はあ?」
ワケがわからず首を傾げる。いきなり現れた2人は、不二を守るように抱きしめキシャー!! と人間が出す類ではない警戒音を発している。
「な、何あったの・・・? 2人とも・・・・・・」
「さあ・・・・・・?」
ビビりまくり、数歩後ずさる千石。不二もまた・・・どころかそんな2人にがっしり捕らえられかなり怖いのだが、残念ながらこの状況のため逃げられなかった。
怯える2人に、
一応まだ人間としての理性が残っていたらしい2人が、はた迷惑にも抱き締めたまま千石を指差した。
「俺らはてめぇと周の結婚は認めん!!」
「どうしてもしたかったら俺達の屍を踏み越えてしろ!!」
「え、っと・・・・・・」
「ゴメン・・・。いろいろ突っ込みどころ多すぎてもー何突っ込んでいいのかわかんないんだけど俺・・・・・・」
1分ほどその状態で硬直した後・・・・・・。
「・・・・・・1つだけ言わせて。俺不二くんと結婚するつもりは微塵も―――」
『問答無用!!』
「ぐぎゃああああああああ!!!!!!!!!」
z z z z z
屍を乗り越える前に自ら屍になろうとしている千石を見やる。跡部と佐伯もさすがに抱き締めたままの攻撃はしにくいか、ようやっと解放してくれた。
目線を逸らし、
不二は乾いた笑いを浮べた。
「越前と付き合ってること・・・・・・、
――――――言わない方がよさそうだな・・・・・・」
―――Fin
―――というわけで、不条理に殺される千石・・・・・・ではなく親馬鹿な2人でした。確かにいきなりの結婚宣言はさぞかしショックだろうなあ・・・。そしてリョーマなら本気で2人の屍乗り越えそうだなあ・・・・・・。
2005.1.7