豪の場合


 「不来の馬鹿!!」
 「何やと!? 馬鹿はお前や烈!!」
 (おお!?)
 目の前で延々繰り広げられる喧嘩に、俺は小さく拳を握った。不来と兄貴の喧嘩。原因が何かなどはどうでもいい。エスカレートしていくそれ。このまま行けばその内・・・・・・
 「お前となんかもう絶縁だ!!」
 「おおええわ!! こっちこそお前なんぞお断りや!!」
 予想通り。ついに言ってしまった。
 一時的な激情による、中身の伴わない勢いのみでの言葉。少し冷静になれば2人とも気付くだろう。思ってもみないことを言ってしまったと。
 しかしながら・・・・・・
 ・・・・・・例え冷静になったとしても、無かった事に出来ないのがこの兄だ。兄は責任感が強すぎる。『ものの弾み』というものを人にはともかく自分には適用しない。
 2人の関係はこれで終わり・・・・・・とまではさすがにいかないだろうが、それでも今回の出来事は2人の関係に確実にヒビを入れた。我が強すぎ妥協を知らない2人の付き合い。そもそもそこにもう無理がある。
 別れの予兆に一人歓喜の踊りを踊る俺。が、
 事態はそんな俺の予想とは全く別の方向へと動いた。
 不来が言い放つ。こちらをびしりと指差して。
 「お前と比べおったらお前の弟の方がなんぼもええわ!!」
 (はあ!?)
 「何だよそーかよお前実は僕に言い寄っておいて豪が狙いだったんだな!? だったらくれてやるよそんなもの!! ほらありがたく受け取れ!!」
 (ええっ!!??)
 「おうありがたく貰ったるわ!! 後で返せ言うても返さへんからな!!」
 (いやあの・・・・・・)
 「言うワケないだろそんな事!? お前こそ後でやっぱこんな馬鹿弟より僕がよかったなんて泣きつくなよ!?」
 (烈兄貴〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!)





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 「――――――っ!!!
  っは〜。は〜。は〜」
 「どうした豪? 随分うなされてたみたいだけど」
 「あ、兄貴・・・・・・」
 上から覗き込んでくる兄の姿を確認し、豪はもそりと起き上がった。顔から体から垂れるものは汗だろう。真冬だというのに。
 「大丈夫か?」
 額の汗が拭われる。本当に心配そうに見てくる烈の手を取り、
 「兄貴」
 「な、何だよ・・・・・・?」
 至極真面目な声に、烈が身を引こうとした。それすらも許さず、豪はさらに力強く引っ張り、
 「―――不来とは何があっても絶対別れんなよ?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。はあ?」
 「だから―――」
 繰り返す豪を遮り、烈は可愛らしく首を傾げた。
 「何言ってんだよ? 別れる以前に付き合ってないだろ? 俺たち」
 「いや・・・。兄貴と不来のは分類するとしっかり『付き合ってる』ってのに入れられる・・・・・・」
 「また面白い事言うなあ豪」
 「だからさあ兄貴・・・・・・」
 ため息をつき、思う。どうやらこの鈍感な兄のおかげで夢は正夢とならずに済みそうだ、と。
 (あ〜あ。俺ってばなんで応援なんてしてんだろ・・・・・・。
  ――――――ま、いっか)
 あははははとなおも可笑しそうに笑う烈。その笑顔が本当に楽しそうだったから。
 だから、
 この笑顔が見られるのならば、この笑顔が夢とならないのならば。



 ・・・・・・それでもいっか、と思った。



―――Fin






 ―――豪がやけに物分りいいです。まあ悪くてなるのが不来×豪ならば嫌でもよくなるかもしれませんが。
 そしてアンケートで要望が多いぞ『
M.Es』。1日40票以上入った辺り明らかに同じ人の重複投票あるいは管理人室からの票数操作でしょうが・・・・・・・・・・・・来たあああああああああ!!!!!! この時を実は本気で待っていた!! そこまでしてまで投票してくださる存在が現れる日を!!! というわけで喜びいっぱいで『M.Es』――――――続きじゃねえ!! 何だかまた不思議な話が出来上がってしまった!! とりあえず続きはこれから頑張って書きます!! 入れてくださった方の頑張りに応えられるように!!

2005.1.3