英二・リョーマ・裕太・手塚・跡部の場合


 「はい、食べてねv」
 笑顔で渡される、地獄への招待状。手渡された『それ』を手に、俺は完全に固まった。
 「ち、ちなみにコレは・・・・・・」
 「もちろん、僕の手料理vv」
 (・・・・・・・・・・・・)
 決定打が押された。もう駄目だ。自分の運命は決まってしまった。
 差し出された物を見る。一見盆に載せられた定食風。しかしながら同じ定食だとしてもそこらで出される物件とは格が違う。完璧な見た目はそれだけで食欲をそそるものだ。思わず涎が出そうになる・・・・・・実際を知らなければ
 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
 知っている者として・・・・・・・・・・・・垂れるのは、冷や汗だった。
 不二の手料理というのは極めてタチの悪い代物だ。見た目はいいのだ見た目は。あくまで見た目は。クドいが
見た目は
 だが・・・・・・
 食べなければ待っているのはさらなる地獄だ。わかっている。わかっているからこそ・・・
 ――――――自分に選べる道は1つしかなかった。
 「はい、あ〜んvv」
 恐る恐る、口を開く。突っ込まれるそれは味すらも感じさせない内に食べた者を混沌の底へと・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・導かなかった。
 「うま・・・・・・い・・・・・・・・・・・・・」
 呆然と、呟く。料理品評家ではないのでいい台詞など思いつけないが、それでもかつて観た『レポーターが「美味い」の次にいう言葉は?』を参考にするなら―――
 「う、美味すぎて言葉が出ない・・・・・・」
 「ホント!!??」
 ぱああああああっ・・・・・・と花を咲かせる不二。見て、俺は1つしっかり頷いた。
 「ああ、本気で美味い・・・・・・!!」
 「よかった・・・・・・vvvvvv」
 不二が嬉しそうに微笑む。俺もまた、嬉しくて笑った。



 そんな、甘く幸せな時・・・・・・・・・・・・。





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 次の日。
 「あれ? メールいっぱい来てるな・・・・・・」
 不二はメール着信画面を見て首を傾げた。朝から誰だろう? こんなに送ってくる人は。
 「えっと、差出人は・・・・・・英二に越前、裕太、手塚、跡部まで?
  本当になんなんだろう・・・?」
 開いてみて・・・
 「・・・・・・なんなんだろう?」
 さらに首を傾げた。書いてあった内容を見て。
 書いてあった内容。それは・・・・・・





 <今年こそぜひまともな味覚を!!!>



―――Fin







 ―――ちなみにこのメンツの中にサエが入っていない理由。サエはいつも跡部に食わせていたため、むしろ不二の手料理マズくて万歳! だからです。

2005.1.51.8