観月の場合――――――と見せかけ・・・


 「くっ・・・!」
 目の前に横たわる憎っくき相手、不二周助。見下ろし、
 「おやおや様はないですねえ、不二君」
 「こん、な、事・・・・・・!!」
 「『あるわけがない』、ですか? ですが残念ですね。今僕の目の前で貴方が這いつくばっている、それが『こんな事がある』最高の証拠じゃありません? 違いますか?」
 「〜〜〜〜〜〜っ!!」
 「どうやら貴方のその減らず口でも今の僕の理論には太刀打ち出来ないみたいですねえ。残念です。貴方はもっと張り合いがある相手かと思っていましたが。
  ―――では約束どおり、裕太君は頂いていきますね」
 言葉を合図に、裕太が現れる。尊敬と敬愛の眼差しを兄ではない者に向ける、裕太が。
 「裕太!!」
 「んふっ。いくら呼びかけようと無駄ですよ。もう裕太君に貴方の声は届かない。彼は僕のものなのですから」
 「裕太あ!!」
 「泣きたいですか? せっかく貴方の元へ戻って来かけたというのに。裕太君は弱いお兄さんに愛想を尽かせたようですね」
 「卑怯だぞ、観月!!」
 「今更ケチをつけるんですか? およしなさい。貴方の惨めさがより露になるだけですよ?」
 「お前がイカサマしたんだろ!?」
 「僕がイカサマ? また何をおっしゃるんです。第一―――
  ―――そのように言いがかりをつけるのならばもちろんあるんですよねえ、証拠は」
 「くっ・・・・・・!!」
 「自分の負けを認めたくなくて相手を卑怯者呼ばわり。弱者の典型例ですね。失望します」
 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」
 「では、ごきげんよう不二君。もう二度と会う事もないと思いますが」
 この上なく嫌味ったらしく挨拶し、観月は裕太を連れて去っていった・・・・・・。
 遺された不二の慟哭が響く。
 「観月いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」





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 『――――――っつー夢見たんだ。気をつけろよ、周』
 「うん。いつもありがとうね景。おかげで助かるよ」
 『じゃあな』
 「じゃあね。結果は今度教えるよ」
 ぷつっ・・・。
 電話を切り、不二は小さく呟いた。
 「また観月も馬鹿な手考えるなあ。その程度で僕を出し抜けるワケないじゃないか」
 呟き・・・さらに続ける。
 「それにしても景もよく毎回毎回予知夢なんて見られるなあ。
100%当たるから凄いよ」
 常々不二をまるで我が子のように可愛がる跡部景吾。度を越えたあまりの可愛がり振りは、元々持っていた洞察力の鋭さと相まってかついに不可能を可能にした。
 彼は不二に何か起こる―――正確には未来の不二に何か起こる度夢として見、そしてそれを聞いた不二が危険を回避するというのがいつものパターンだった。
 「今度乾にでも言ってみようかな・・・。
  ・・・・・・やっぱやめとこ。それで力がなくなったとかいうのも嫌だし」
 ―――不二の危機は全て察知する跡部景吾。彼は・・・代わりに己に降りかかる不幸には全く気付いていなかった。



 こうして、今回もまた(不二のみ)安泰に過ぎ去っていったのであった。



―――Fin







 ―――不幸です跡部がやったら!! 最も利用されているのは彼ですか!?
 そして今回、見ている人に合わせ『夢』部分が他のものと描き方違います。どう違うかというと・・・一人称がない! ・・・・・・だからどうしたといった程度ですが、まあ一応本人以外という事で。

2005.1.8