リョーガの場合 *佐伯が本気で修復不可能なほど壊れています。


 「越前リョーガ! お前の悪事もここまでだ!! 観念しろ!!」
 「はあ?」
 いきなりワケのわからない事を言い切られ、俺はまさしく『阿呆』の典型といった顔をした。
 「あのなあ佐伯、何言って・・・」
 台詞が、途切れる。そこにいた『佐伯』を見て。
 佐伯・・・だと思う。確信は残念ながら持てないが。
 そこにいたのは―――
 ―――なぜか少女だった。某美少女戦士のような感じで、肌にぴったりフィットのレオタード風改造セーラー服に身を包み、何だか不思議な決めポーズでこちらをびしりと指差している。現実逃避でちょっと冷静に考えれば、そういえば先程かけられた声は彼の、耳に響くバステノールではなく脳に突き刺さる感じの高音だった。背もちょっと縮んでるか。
 まさか・・・と思い、自分を見下ろす。普段着るジャージだのその他服だのとは一線を隔した黒マントに軍服っぽいスーツ。
 「・・・・・・・・・・・・」
 のっけから全体的におかしいノリ。あまりにおかしすぎてどこから突っ込めばいいのかわからない。あえて言うなれば・・・・・・
 (つまりこりゃ夢、と・・・・・・)
 そう割り切ってしまえば楽なものだ。なおも決め台詞らしきものを続ける佐伯にすたすたと近寄り、
 「―――っ!!??」
 佐伯の台詞が切れる。まあいきなり股の間に手を突っ込まれて、それでも平然と台詞を言い続けるヤツ・・・・・・だとずっと思っていたのだが。
 顔を真っ赤にして固まる佐伯。これ幸いと、掴んだところを揉んでみる。極端に短すぎるスカートは、ほどんど捲くれもせず受け入れてくれる。
 「へ〜え。見た目だけ女体化かと思ったら、ちゃんと見えねえトコまでしっかり出来てんだな」
 「やあっ!!」
 やっと佐伯の思考がまともに回転し出したようだ。先手を打って手を離し、こちらの胸に手を当て突き飛ばそうとする佐伯の腰を抱き込んでやれば、作用反作用で下半身はむしろ接近する事になった。
 密着する腰。今度は後ろに手を回し、逆側から攻める。左手で胸を触れば温かく柔らかい。やはりこっちも本物のようだ。
 「きゃ・・・や・・・、あっ・・・」
 目を硬く閉じ顔を背け、佐伯は気持ち良さそうに喘ぎ悶えた。いつもとは全く違う様。
 (ヤベ・・・)
 早くも自分も興奮してきている。このまま今すぐ押し倒して前から後ろから上から下から味わい尽くしたい(最低)!!
 ―――そんな思いが、というか実際的なものとして触れ合った腰から自分の昂ぶりを感じたのだろう、我に返った佐伯に今度こそ突き飛ばされた。
 「何すんだよ//!?」
 両腕で自分を抱き込みガードする佐伯。涙目で、それでも頑張るそんな可愛らしい様も鼻血を誘う。
 と―――
 「も〜許さないからな!!」
 そんな事を言い、胸元のどでかいブローチからバトンを取り出した佐伯はもたもたと必殺技らしきものを発動し始めた。ちなみに実際トロいワケではない。ただ・・・
 ・・・・・・テレビとかでやる必殺技発動をそのまま目の前で見せられると、やる事なす事全体が余分過ぎると思うほうが普通だろう。何でわざわざ長々叫ぶ? 踊る? バトン振り回す? これでやってるのが佐伯じゃなかったら、見た目のウザさに即座に蹴り飛ばしてた。
 (ああ、な〜るほどな・・・)
 静かに納得する。美少女戦士が『美少女』たる理由。やっていてもウザくないからだ(誤)!!
 たとえどんな美少女だろうとウザく思うだろうが、佐伯なら話は別! このまま
10分ぐらい観ててもOK
 が、
 (必殺技が当たっちまったら普通俺は『死ぬ』んだよなあ? 夢だから別に構わねえが、このままここで終わりってのも、なあ・・・・・・?)
 誰にともなく訊いてみる。思い出す、腕にすっぽり収まった
165cm程度の小さな躰。今の―――現実の佐伯に何か不満を持っているなんて事は・・・・・・まあせいぜい積もって出来る山は千葉ののこぎり山程度だが、それでもやはりこの、『弱い子ちゃん』の典型例な佐伯を堪能しない手はない!!
 (佐伯が出来るっつーことは、俺にもあるって事だよな。何か技)
 念じる。とりあえず適当に。自分の夢ならこれで何かは出てくるだろう。念じ・・・
 虚空から出てきたのはラケットだった。かくりと肩を落とす。
 (お約束かよ・・・!!)
 まあ自分もあんなバトンが出てきて振り回さなければならなくなったらどうしようとも思ったが、
 (せめて剣とか出てこねえのかよ・・・・・・)
 自分の創造力のなさが哀しくなるが、それでも出てきたからにはこれで攻撃しなければ。
 まだ頑張る佐伯へと、リョーガは適当に魔力っぽいもので生み出した黒球を打ちつけた。直接当てず、まずはけん制。普段の佐伯ならあのバトンで余裕綽々打ち返すだろう辺り・・・・・・を。
 「ひゃっ!!」
 ひゅっ―――!!
 びくりと震える佐伯。自然と準備中だった必殺技が中断される。惜しいがそれもまた良し。
 さらに2発、3発。
 「やっ!! 痛っ!!」
 頬を掠り、腕に当たり。もちろん手加減しており、傷もほとんどつかない程度にしているため(何せあの剥き出しのすらっとした手足に顔に傷をつけるのは勿体無い!!)、別に騒ぐほどの事でもない。それこそ普段の佐伯ならば完全無視で攻撃を続けるだろう。
 大げさに痛がり、怯える。目を潤ませ頭を抱えてしゃがみ込む佐伯に、
 (やっべえ。何かすっげー苛めてるっぽいし・・・・・・)
 何がヤバいか。それが楽しすぎるのが一番ヤバい。
 もっともっとやりたい気持ちは満々だが、ただこれをやっているだけというのもつまらない。
 (やっぱ苛めんだったらもっとこ〜いろいろと〜・・・・・・
  ―――お、そうだ!)
 ラケットのガット1本を摘む。指の間であっけなく切れたガット。切れて―――そこから伸びていく。
 さらに何本か切ってやればそれまた伸びていった。佐伯に向って静かにするすると。
 「え・・・?」
 ようやく異変に気付いた佐伯。顔を上げるがもう遅い。逃げようと立ち上がったところで、一斉に襲いかからせた。
 「な、な、な、何・・・!?」
 脚に手に、絡みつき這い上がるガット。四肢を拘束し、胴体まで向かう―――
 ―――ところで止めた。
 「ガットっつーのが色気半減だが、やっぱこーいうのっていいよな〜」
 「は、放せよ!!」
 鑑賞しながらゆっくり近付いていく。糸にかかった蝶を見つめる蜘蛛の気持ちというのはこんなものかもしれないなどと思いつつ。
 実際佐伯は綺麗だった。真っ暗な空間で、同じく黒いガットに絡まれ、それでもなお自分の色というのを保っている。まだ佐伯は佐伯のままだ。
 ――――――これをこれから自分へと墜とす。自分色に染め上げる。この上なく楽しみな行為。
 「残念だったなあ佐伯。そう言われて俺がはいはい従うとでも思ってんのか?」
 「従わなかったらどうなるかわかってんのか!?」
 「へ〜え? どーなんだ? さっぱりわかんねえなあ。教えてくれよ。
  とりあえず、愛用の武器はここにあるけど?」
 佐伯が落としたバトンを拾い、見せつける。ようやく手の中にない事に気付いたか、佐伯は目を見開いてはっとした。
 さらに追い詰める。
 「それに、コレがあったところで今のお前じゃどうしようもねえだろ? その動けねえ体で何するってんだ? 第一する前に俺が止めるぜ?」
 「う・・・」
 呻き、拗ねたような顔をする佐伯。内心汗を拭った。
 (あ〜よかったぜ。普段の佐伯ならそれでもぜってーなんかしてきたしな)
 たとえ四肢を封じられていようが、この状況なら不用意に近付いたこちらにまず頭突き。ひるみ下がったところで唾を飛ばしののしる。足首の捻りだけで靴を飛ばしてくるかもしれないし、いっそガットをぶっちぎってこっちを縛りだすかもしれない。やっぱこの佐伯はいいものだvvv
 「だが―――
  ―――反抗心は早めに潰さねえとなあ。何やりだすかわかったモンじゃねえし」
 にやっと笑い、
 ガット2本に命令を下す。
 命令どおり、動きを再開した2本の内1本は佐伯の服の中を這いずり回った。
 「な・・・? あ、や・・・は、あ・・・・・・!」
 レオタード状の伸縮性ばっちりな生地は、どこをどうガットが動いているか如実に示してくれていた。
 ぐるぐると何周も巻かせる。もちろんその間にもいろいろやりつつ。
 「次から反抗しようとしやがったらこのまんま締めるからな」
 「くっ・・・!!」
 実際軽く締めてやると、それだけでも苦しかったか佐伯が小さく悲鳴を上げた。
 「でもって、
  舌噛んで死ぬとかそういう後ろ向きな案も却下」
 合図と共に、もう1本のガットが動き出す。佐伯の口の中へと、
 「は・・・ふは・・・」
 嬌声がくぐもる。閉じれない口から涎が垂れ、胸元の生地を透けさせていった。下をうねうね動くガットごと。
 これだけやってやればもう反抗はしないだろう。さてこれからどうするか。
 いろいろと考え、
 持っていたバトンを、先程も少し弄ったところに軽く当てた。
 「やっ//!!」
 「自分の武器でヤられるってのも―――けっこー面白れえモンだよな〜」
 「んっ、あっ、あっ・・・」
 ぷにぷに押す。合わせ、佐伯の躰が跳ねた。このままならすぐにイってしまいそうだ。が、
 苦しそうな表情の合間に薄目を開けこちらに目を向ける佐伯を見る。潤んだ目の奥で、揺れる瞳。せっかくの初モノをこんなのに捧げるのはさぞかし嫌だろう。自分は絶対嫌だ。
 バトンを放り捨て、指でなぞる。レオタード越しにもわかるほど、既にそこは濡れていた。
 耳元に、囁きかける。口を封じていたガットを外し、
 「なあ、何が欲しい? ココ」
 「何・・・、って・・・・・・」
 「バトンか―――それとも俺か。お前が言った方やるよ」
 「は・・・・・・」
 耳にキスしてやれば、佐伯は湿った吐息を吐き出してきた。
 戒めを解く。もう必要はないだろう。
 解放された手を、今度は自分に絡めてきた。抱きしめ、佐伯が言ってくる。
 「お前が欲しいよ、リョーガ・・・・・・・・・・・・」





z     z     z     z     z






 ぴぴぴぴぴぴぴぴぴ・・・・・・
 「っああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
 時計の音―――ではなく朝早くから優雅に飛び交う鳥のさえずりで目を覚ますなり、リョーガは腹の底から絶叫した。
 「惜しい!! 後一歩だったってのに!!!」
 なんっで!! 肝心なところで目が覚める!!??
 「やっぱ余計な事してねえでさっさとヤってりゃよかったぜ!!」
 魂の悔恨。己の過ちを悔い改め・・・
 どごん!!
 「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!???」
 「お、リョーガおはよう。朝からうっさいぞv 野生帰んなら誰もいないトコで帰れvv」
 ・・・朝食準備中だったらしい佐伯に、思い切りフライパンでぶん殴られた。
 ベッドの上でのた打ち回る事1分。がばりと起き上がり、リョーガは佐伯へと詰め寄った。ぎゅっと手を握り、真剣な眼差しを向ける。
 「佐伯!!」
 「ん?」
 「イメプレしようぜ!?」
 「衣装お前が用意してくれんなら」





 というワケでさっそく衣装購入。夢どおりにやってみた。
 やってみて・・・・・・





 「うん。面白いプレイだったな」
 「全っ然! 面白くねえ!!」
 佐伯に組み敷かれ―――というとちょっとはマシに聞こえるのだが、つまりは佐伯にボコボコにやられ足で踏みつけられ、リョーガは血の涙を流した。
 夢の内容を話し、じゃあやってくれとリクエストしたところ佐伯はああわかったと快諾した。快諾し、今に至る。
 「何をどうわかった結果ンな暴挙に出たんだよお前は!?」
 とりあえず足はどけさせ反論するリョーガに、
 「何言ってんだよ? そういうものじゃヒーローというかヒロインというか、とにかく正義が勝つのがお約束だろ? だから勝ったじゃないか途中経過省略して」
 「すんじゃねえ!! その『途中経過』がやりてえっつったんだろ!?」
 「いやだってどう転んだって結局はこうなるんだから。ホラ諺でも言うだろ? 『終わり良ければ全て良し』って。途中にはこだわらなくていいって教えじゃん」
 「それでも途中にはこだわるモンだろーが!! 『結果はともなわずともその過程が大事だ』って誰だって言うじゃねえか!!」
 「でも正義と悪になぞらえれば結局は結果勝負だろ。途中で何があろうが―――例え大苦戦の末に倒そうが、そのせいでビル壊したり地球爆破させたり、またはさっくりあっさり盛り上がりどころか身もフタもなく3分で倒したりしようが『悪は滅びた!』の一言で全部片付けられるワケだし」
 「正義だってやり方間違えりゃ立派なリンチだ!! ちゃんと理由言って1度やられて相手の卑怯っぽいトコ見せ付けられて、そっから這い上がって一発逆転するから見てるヤツも納得すんだろーが!! そもそも『正義』なんて主観の問題なんだから!!」
 「主観の問題。さてお前は最初に言った。『お前が美少女戦士役、俺が悪役だ』と。
  つまりこの時点で俺が正義お前が悪っていうのは個々人の考え方じゃなくて公式設定となった。何をやろうが『悪』のお前が『正義』の俺を訴える資格はない」
 「ぐっ・・・!!」
 素直に反論を引っ込めたリョーガ。佐伯はうんうんと頷き、
 手を差し出した。
 「というワケで、イメプレ代」
 「は?」
 「お前のワガママに付き合ってやったんだから、ちゃんと貰うのが当然だろ? 安心しろ。売春よりお買い得にしてやるぞ? こんな変態プレイ付き合わされたのに俺って優しいよな〜」
 「お前の方がよっぽど悪役じゃねえか!!!」
 「あ、それもいいな。じゃあ次は配役交代して―――」
 「ぜってーやりたくねええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!」



―――Fin







 ―――ええっと、最近こういうダメダメ子なサエが
Myブームです。思い余って書きました(爆)。ただしさすがにサエに女言葉は喋られられませんでしたが。そしてアニプリJr.選抜合宿でのサエをこんな感じに見ていた自分もどうかと思います。だって乾に柳にしてやられて不二に庇われて〜〜〜!!!
 しかしやっべ・・・。密かな裏としてこれからもやりたいなあ・・・。サエをめぐってリョーガvs跡部とか。この設定ならタ●シード仮面様が跡部ですか・・・。助けられて腕の中でぷるぷる震えるサエ。役得で跡部は手を出し放題です。2人で間違った方向に争って、巻き添えくって放り出されて世界は平和になりました、と。
 なおこの話、最初はリョーガがサエを徹底的にいたぶるものでした。途中で手を抜いたのはリョーガが根性なしだから(笑)・・・ではなく、リョーガだと結局ラストは優しくなっちゃうかなあ、と思ったもので。逆にサエならラストまで一貫して苛め続けたでしょうね(それもどうかと・・・)。

2005.3.31