千城女テニ部員(千城・風輪部員に遭遇)


 「という事で、この度中学テニス部懇談会が開かれる事になった。ウチももちろん参加だ。男女混合で何か出し物をやろうと思う。
  という事で、不来。後は任せた」
 「了解いたしましたわー」
 男テニ部長の光坂先輩に促され、不来が仮会議室(つまりはただの教室)中央に進み出てきた。何の役職もないが、とりあえず他人は認めるお祭り男たる彼はイベント事になると必ずその中心として任命される。本人も特に嫌がっていないところからすると、自分でも祭好きだと認めているらしいが。
 「ちゅーワケで、出し物やります。案ある人おります?」
 しーん・・・・・・
 (いきなり言われても、ねえ?)
 苦笑いするしかない私たちを一通り眺め、
 「せやったら劇にします。演目は白雪姫。主役はお前で」
 「なぜ!?」
 びしりと指を指され、私はイスを蹴り上げ立ち上がった。
 なぜ劇? なぜ白雪姫? なぜ主役が私?
 いろいろな意味を込めての質問だったのだが、不来はラストだけを答えてくれた。
 「お前は主役にばっちりや。華があるし演技も上手い。それにネタにも困らん」
 「ラストはいらん!!」
 大仰な身振りで指を差し返すが、なぜか不来は嬉しそうに頷くだけだった。あまつさえ親指を立て、
 「そのツッコミ完璧や。他のヤツやったらボケが流れてまうがお前やったらしっかり止められるやろ」
 「いつから白雪姫は漫才になった!?」
 「今回白雪姫に新解釈を加えようかと。その名も『喜劇・白雪姫』」
 「い〜〜〜や〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」





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 結局反対には何の意味もなく、かくて『喜劇・白雪姫』とやらは私が主役として始動し出した。
 「一応訊いておくけど・・・
  ・・・・・・『主役』って、イコール白雪姫?」
 何せ不来の考える事だ。通行人(出てくるのかは謎として)を主役として捉えた話を作り出したところで不思議ではない。・・・ある意味それはそれで見ごたえありそうだが。
 そんな私の質問に、
 不来はにっと笑ってきた。
 「安心しい。お前が白雪姫で、俺が王子や」
 「・・・・・・とりあえず、一応話の大筋そのものは変更なし、と」
 確認すべき重要事項を確認し、ほっと一安心する。
 さらに不来が続ける。
 「でもって今回、同じ東京モンの繋がりでウチと風輪合同になったわ」
 「それを最初に言いなさいよおおおおおおおお!!!!!!!!!!」





 かくて、恐怖の舞台が始まった。







喜劇・白雪姫






























△     ▽     △     ▽     △






 「つまりこの劇は」
 アンコールも全て終え舞台袖にて。
 私は半眼で不来を見やった。同じ目で、烈もまた彼を見ている。
 「アンタが烈とくっつきたい一心で作った、と」
 「なるほどなあ。あくまで姫を他者にしたのはカムフラージュか。すっかり騙されたよ。うん」
 「あいやその、やっぱやるんやったら好きな事やりたいな〜思たんよ。
  そやろ? せっかくの交流会やし」
 「おかげで私は暴力部員として知名度上げたけどね」
 「さっき舞台挨拶してる間さあ、特に男子部員がよく僕のところに集まるんだよねえ。舞台ってちょっと上だし? 下から見上げる角度でカメラ構えてるヤツが大勢いたんだけどなあ」
 「何やと烈! お前まさかパンチラ撮らせたんか!?」
 「アホかあ!!」
 どごすっ!!
 「誰が撮らせるかンなもの!! お前のせいでそういうのが来たって文句つけに来たんだよ!!」
 「さよかさよかvv 俺以外には見せたないと。可愛ええやないの烈vv」
 ごん。
 劇中で使われた剣―――もちろんレプリカだが刃がついていないだけで後は本物そのままの鉄製物品―――で殴られ昏倒する不来。ふん!と鼻を鳴らし、烈は去っていった。
 ステキならぶらぶ馬鹿ップル様ご退場。残されたのは、気絶したままの不来と文句を言う機会を失わされた私。
 無抵抗の不来を、今ここで殴り倒していいものだろうか。
 悩むこともなく、
 私は烈が捨てていった『剣』を高く高く振り上げた・・・・・・。



―――Fin







 ―――千城風輪おおむね総出演でのサスペンス(誤)いかがだったでしょうか。不来烈はいいとして、なぜか三村×瀬堂風味になってます。実は加瀬×瀬堂よりはこっちの方が好きだったり・・・・・・って一応『公式』となる私自身が勝手にいろいろ作ってどうする。

2005.6.27