8.ガス中毒―――不二姉兄に遭遇
しゅ――――――
部屋の中を、気体が充満していく音がする。火のついていないコンロから、ガスが勢いよく噴出していく。
都市ガスでは中毒を起こさないというが、きっと徹底的に溢れ返れば何かは起こるだろう。
何かを待ち、瞳を閉じ・・・
どぉぉぉぉん・・・・・・!!
再び地を揺らす轟音が鳴り響いた。
「な、何・・・!?」
慌てて見回すが、別にここが爆発したんじゃない。
外へ飛び出す。同じく飛び出してきた人々がきょろきょろと辺りを見回し、
「あそこ!!」
最初に気付いた誰かに倣いそちらを見る。窓という窓から煙が噴出すそこは、斜向かいの不二さんの家だった。
家の住人である、美人で有名な姉と弟が手で煙を煽ぎながら出てくる。美人であり、かつ同時に妙な噂の絶えない姉弟は、それを裏付けるかのような黒装束だった。
「姉さん・・・。今のは一体何だったのかな?」
ぞろりとした・・・ローブ? 姿の弟周助君が尋ねる。サラサラの髪にも、さすがに埃がついていた。
「私の方が訊きたいわよ。周助、あなた一体何をしてたの?」
こちらは服は喪服だが頭にヴェールをつけた由美子さん。片手で取ると、その下からさらりと髪が現れついでにヴェールからさらりと埃が落ちた。
「僕は姉さんに言われたとおり紋様写して呪文唱えただけだよ?」
「合図してから、って言ったでしょ?」
「言ってないよ? だから急いだ方がいいのかと思ったんだけど」
「こっちの準備が終わる前に儀式始めてどうするのよ」
「終わってなかったの?」
「だから動いてたでしょう?」
「てっきりまた何か食べたかったから作ってたのかと思ったよ」
「そこまで食いしん坊じゃないわよさすがに」
「でもオーブン使ってたでしょ?」
「あれは明日帰ってくる裕太のためのクッキーよ」
「裕太も久しぶりに帰ってくるんだねvv」
「そうよ。だから急いで準備しないと」
「そうだね。でも姉さん、紋様描いた布、燃えちゃったからもう一回描き直すね」
指を立て周助君がそう言う。妙な方向に立てられた指を目で追うと、窓から燃えた灰がひらひら飛び出していた。あれが『紋様描いた布』らしい。
どこをどう突っ込めばいいのかわからず、とりあえずひらひら飛ぶ燃えカスを眺める。それはひらひら、ひらひら飛び・・・
・・・・・・私の目の前に落ちた。
「あ・・・・・・」
どがあああああああん!!!!!!!!
△ ▽ △ ▽ △
こうして、私はガス爆発により死ぬ事に成功した。しかしなぜだろう? 望みが叶ったのにめたくそに悔しいのは。
もしも生まれ変わりというものが本当にあるのなら、私は今ここで誓いを立てよう。
―――次こそ後悔しない生き方と死に方をする!!! と・・・・・・。
―――Fin
―――ブラックユーモアちっくに落としてみました。確か当初の予定では『死ぬのは生きるより難しい』というオチで終わるはずだったのですが、さすが不条理不二姉兄。そしてせなさんというか大神研究所に対する私の認識、とことん間違ってるような気がします・・・。でもだって火山が普通にあるトコって・・・・・・。
2005.7.11