Cool red  hot blue






 本日、大雪により高校は休校。珍しい事態に騒ぎ立てる者数知れず。
 そんな中、星馬烈は1ヵ月後に迫ったセンター試験のため黙々と勉強していた。たとえ数年ぶりの
12月の初雪だろうとそのおかげで学校が休校になろうと受験生には関係ない。一応勉強時間が増えたことには感謝するが。
 「烈兄貴〜〜〜!!!」
 と、どたばたどたばたとやかましく入場してくるのは言わずと知れた弟の豪。隣の部屋のはずなのに階段を駆け上がる音が響いたことからすると、起きて早々窓一面の雪を見て、大はしゃぎで庭を駆け回ったのだろう。まさしく犬のごとく。
 「雪だぜ雪〜〜!!!」
 「はいはい見りゃわかる」
 予想通り―――まあむしろわからないほうが不思議だが――入ってくるなり大騒ぎする弟に白い目を送った。ふとその視点を下に向け、あーあ、床びちょびちょだよ。なにやってんだか・・・等と思ってみたりする。
 「―――って、あり? 騒がねーの?」
 「騒ぐ・・・って、お前今いくつだよ」
 「雪だぜ雪。年なんて関係ねーだろ」
 「お前はもうちょっと関係持たせろ」
 ―――などなど不毛な言い争いをしていると・・・
 「烈ー、豪ー!!」
 下から母・良江の声が響いてきた。
 さすがに言い争い(?)を止めてドアから顔を出す。
 「何、母さん?」
 「何だよ?」
 「アンタたち、暇だったら外の雪かきしといてくれよ」
 「雪かき!? おっけーおっけー!!
  ―――んじゃ行くぜ、烈兄貴!!」
 (なるほど・・・・・・)
 どうせこれにかこつけ自分を外に出すつもりなのだろう。いくら受験勉強といったところで母親の命令に逆らえるほどの重大事項ではない。
 ―――などという彼の考えからわかるとおり、実は烈はいまさら焦って勉強する必要はない。第1志望から試しで受けてみようとする超難関の某国立大学まで全て余裕でA判定をもらえるのだから当然だが。
 (・・・・・・ま、いっか)
 小さくため息をついて、烈もまた外に出る準備をした。







・   ・   ・   ・   ・








 ざっく・・・、ざっく・・・。
 しんしん・・・・・・
 ざっく・・・、ざっく・・・、ざっく・・・、ざっく・・・。
 しんしんしんしん・・・・・・・・・・・・
 「―――だああああああ!!! きりがねえ!!!」
 (当たり前だろ・・・・・・)
 スコップを放り出して頭を抱える豪を冷めた目で見遣る。雪が降り続く中での雪かきなのだ。きりなどあるわけがない。
 「馬鹿なことやってないで続けるぞ」
 そう言い、豪から背を向けて雪かきを続けようとする。
 と、
 ぽす。
 頭に当たった軽い感触に押され、烈の体が前のめりになった。
 もちろんそのまま転ぶような真似はせず、スコップを前に出して支えにして押された側―――真後ろへと向き直る。
 案の定そこにはこちらを見てニヤニヤ笑う豪の姿があって・・・。
 「あっはっは! 兄貴、雪まみれ〜♪」
 「・・・・・・・・・・・・」
 とりあえず言うことは何もない。烈は脇にどかしていた雪山に手をこっそり伸ばし―――
 バスッ!!
 「〜〜〜〜〜!!!」
 「あはははは!! お前のほうが雪まみれじゃないか!!」
 真正面からの奇襲攻撃はさすがに予想できなかったか、見事雪の入ったバケツを頭からかぶる豪。顔面雪まみれになった弟を遠慮なく笑い倒していると、さすがに気分を害したか、豪の肩が怒りで痙攣してきた。
 「やったな〜・・・!!?」
 と、今度は両手に2個雪玉を持ち投げつけてくる。もちろん奇襲ならともかくこんなものに当たりはしない。
 「ば〜か! どこ狙ってんだよ!?」
 怒りを煽ればノリやすいこの弟、あっさりコントロールを失ってがむしゃらに投げつけてくる。
 「当たれ当たれ当たれ〜〜〜〜〜〜!!!」
 最早呪詛のようにも聞こえてくるそれらを完全に無視して、ひょいひょいと避けつつスコップで地面を掻く。
 ずざあっ!!
 「うあっ!?」
 遠心力を利用して放り投げた雪はどんぴしゃで豪にヒット。固めていない分ダメージは少ないが、掛かる量は雪玉の数倍。
 顔といわず体といわず真っ白になった豪に烈は大爆笑した。
 「あ〜はっはっは!!! お前なんだよその格好!!」
 「うっせー!! 兄貴がやったんだろ!!?」
 「そのまま一日中表立ってろよ!! みんな雪だるまと勘違いしてくれるぜ!!」
 「誰がやるか、ンな事!!!」
 「いい案だと―――うわっ!?」
 豪の攻撃パターンが変化―――というか悪化した。せっかく脇に寄せた雪山の雪を水かけのようにはね散らかしている。当然自分にもかなり飛ぶが、相手側も範囲内では極めて避けにくいというかなり有効な作戦のおかげで烈もしっかりかぶる羽目となった。
 「あっはっはっはっはっはっは!! 兄貴も真っ白〜!!!」
 「このやろ・・・・・・・・・・・・」
 「やるかー・・・・・・・・・・・・」
 スコップとバケツを持って対峙する2人。今、戦いの火蓋がきって落とされ―――
 ―――なかった。
 「こらー!! アンタたちは! 一体雪かき1つで何時間かける気だい!!?」
 ばたん! とドアが開き、そこから顔をのぞかせる良江に2人そろって硬直する。
 「ごめん、母さん」
 「ついうっかり・・・」
 そう謝る2人の格好を見てか、良江が大げさにため息をついて見せた。
 「まったくアンタたちは。いつまでたっても子どもだねえ。
  ―――終わったら何か温かい飲み物用意してあげるからさっさと終わらせるんだよ」
 『はーい!!』
 その子どもっぽい返事に苦笑しつつ、ドアを閉める良江。
 「・・・・・・さーて、なんか途中から訳わからなくなったけど、さっさと終わらせるか」
 1/2はしっかり自分にも責任があるが、それは見なかった事にして雪かきを再開する烈。その後ろ姿に、
 「なあ烈兄貴」
 今度は雪球ではなく声が掛かってきた。
 「ん?」
 「―――楽しかった?」
 「え・・・・・・?」
 「だから、雪合戦―――っていうのか、まあそんなのしてリラックスできたか?」
 「豪・・・・・・・・・・・・」
 (変なところで鋭い・・・・・・)
 背中を向けたまま体中の雪を叩き落とす豪を目線だけで振り返って、少し感嘆する。いくらAランクだ、楽勝だといわれようがやはりなにがあるかわからない以上気は抜けない。外にそれを出したつもりはなかったのだが、やはりこの変なところで聡い弟の目はごまかせなかったようだ。
 体ばかり落として肝心の頭に雪が積もったままの豪に向きやり、烈はばたばたと乱暴にはたいた。
 「ってーな! なにすんだよ!!」
 振り返る弟の唇を一瞬だけ掠め取り、驚き見開かれる空の蒼ににやりと笑う。
 「さ〜んきゅ」
 「・・・・・・って、あ、あの今」
 「さー雪かき終わらせるぞー。遅くなるとまた母さんに怒られるからな」
 「って聞けよ人の話!!」
 「雪かきがんばるぞー。おー」
 「烈兄貴〜〜〜!!!」
 そんな、ある雪の降った1日の出来事。



―――fin

 

 

 

 

・   ・   ・   ・   ・   ・   ・   ・   ・   ・   ・   ・   ・   ・   ・   ・   ・

 ふ〜。というわけでレツゴ編も(学校で)書き終わりました。なんと高校生編でバカップル話が出来たよ。自分、成長したなあ・・・・・・。―――いえね、まだほとんどUpしてないんですけど高校生編、なんだかもうバカップル以前にただのギャグになってしまって、そりゃもう豪の活躍の少なさはそれだけで立派なギャグ! 凄いぞ、準主役(あくまでこのサイトでは、ですよ。ちなみにもちろん主役はお兄様ですけどね)!! 
 けど今回烈兄貴の性格かわいいなあ。とことん強気に攻めるのが高校生烈の真骨頂なのに・・・。けどこんな風にガキっぽいのもいいかなあ。と。むしろ私の中では大人ぶる(イイコぶる)兄貴のほうが嘘っぽい。演技ではしょっちゅうやらせてますけどね。
 ではラストデジアド編! さあ、『今日』はあと8時間! そのうち自由に使えるのはせいぜい3時間! 果たして間に合うのか!? ってかネタ思い浮かぶのか!?

2002.12.9