「――――――っ!!!???」
 桜の花散る4月上旬。見せられたそれに、烈は無言で驚きを露わにしていた。





ちっちゃな2人。





 




 「どや!? 烈!!」
 「そ、そんなまさか・・・・・・!!」
 自慢げに見せつける不来。手にした紙―――健康診断の結果を。
 注目すべきはその1つ、身長の欄だった。測定を終え、保健委員の手によりしっかり判子付きで書かれている。





 ≪不来裕也 身長
160cm≫と・・・・・・。





 「そんな馬鹿な!! この間測った時は2人揃って
159cmだったじゃないか!!」
 「成長期、っちゅーヤツやな。俺かて伸びるんやで。これからグングンなあ」
 「くっ!! なんで不来にはあって僕にはないんだ・・・!!」
 「あ〜楽しみやな〜。これから烈を見下ろす毎日か〜♪」
 「たった1
cmだろ!? そんなに変わりないだろーが!」
 「それはどないやろ?」
 「何・・・?」
 「お前は
159cm。俺は160cm。1のケタだけやのうて10のケタまでちゃうんやで? こらもーでっかい差や。10cm違う言うても語弊あらへん位なあ」
 「何でだよ!? 1しか違わないだろ!?」
 「ところで『ウェイバーの法則』っちゅーモン知っとるか? 1と2やったらでっかく感じるけど
1846973418469735やとそない違わないよう感じる事や」
 「だったら
159160だって―――」
 「せやけどなあ―――
  コレが
199999992000000やとめっちゃ違う感じせん?」
 「そ・・・それは〜・・・・・・」
 「スーパーの売りモンに8が並ぶ理由はなんや!? 切り良く0よりずっと得に感じるからやろ!? これが5から3になってたらどや!? それ程特に何も感じんやろ!?」
 「〜〜〜!!
  イチイチ的を射た説明を・・・!!」
 「ほ〜らなあ!? せやったら
159160もでっかい違いやん!!」
 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
 「おっしゃ勝ったで烈!! 今年度はこの調子でどかどか行くわ!!!」
 「く〜や〜し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!」







†     †     †     †     †








 そんなこんなで今日も騒がしい2人。「じゃあここで身長測っていったら?」と保健委員の瀬堂にアドバイスされ、さっそく保健室へ直行。測ってみた。
 測ってみて・・・





 「はい。不来君烈君2人とも
159cmね」





 『は・・・?』







†     †     †     †     †








 「あ〜っはっはっはっはっは!!!!!!! 半日天下だったな不来!!」
 「何でや!? 俺は確かに
160cmと!!」
 「どーせちょっと背伸びしたとか足裏に何か仕込んだとか髪固めたとかそういうオチだろ!?」
 「しとらん!! 俺は正々堂々正面から測って
160cmやったんやぞ!?」
 「正面から? 身長は背中で測れよ?」
 「ちゃう!! 後ろめたい事0で真正面から挑んだ言うたんや!!」
 「何だよ紛らわしいなあ。
  なんにしてもだ。
  ―――――――――――――――――――――――――や〜い
159cm〜♪ 身長詐欺〜♪ い〜けないんだ〜値詐称〜♪」
 「くっ・・・!!
  何やこのごっつうムカつく扱き下ろし方・・・!! ちゅーかお前も一緒やん烈!!」
 「僕は『
正々堂々正面から測って159cmだったからなあ。お前と違って日向歩いてるぞ?」
 「俺は日陰歩いとるっちゅーんか!?」
 「そりゃ犯罪者が表堂々とは歩けないだろ」
 「こないなモン犯罪に入らんやろ!?」
 「ところでこんな話知ってるか? ものにもよるが、1度罪を犯した者は再び同じ事を繰り返す事がある。それもだんだん大胆に、より重く。
  今回は身長だった。きっとその内自分の履歴になり、最終的に金額になるんだろう。1円? 1万? いっそ1億?
  さってそうなった場合何て言うか知ってるか? 『詐欺罪』って言って立派な犯罪だ。じゃあな犯罪者」
 「そ、そないならんわ俺は・・・!!!」
 「おー口振りがだんだん後ろ向きになってきたぞ〜。ちょっとはなりそうだって自覚アリか〜?」
 「そないならへん言うとるやろーーー!!!???」
 「ここで思いつめてぶち切れるヤツ程犯罪者予備軍だ。それとも傷害罪とかで早めに捕まるか?」
 「く〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
 「あ〜っはっはっはっはっは!!!!! た〜のしいな〜不来苛めは〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
 「お前の方がよっぽど犯罪者ちっくや!!!!!!!!」







†     †     †     †     †








 ところで身長。これは視力や心拍数同様1日の中でも変わるものである。押し潰されれば歪み、縮んでいくのはゴムもクッションもそして骨格も同じ。このため正確な身長を測るためには、1日3回仰向けで測りその平均値を取るという。
 さて不来。午前中の身体測定で測り、午後学校が終わるなりここまで走ってきたらしい。そりゃ縮むだろう。それだけ時間が経った上に刺激を与えれば。





 「相変わらず面白いなあこの2人」
 そんな注意を一切せず、争う2人を温かく見守る瀬堂。彼視点で、今日もまた日はのんびりほのぼのと暮れていく・・・・・・。



―――Fin




 













†     †     †     †     †

 かつて腹黒アンケートを取ったところ、烈兄貴にしっかり票が入っているんですよね。このシリーズを書いていると、兄貴がめちゃくちゃ白く感じてしまったりするのですが。
 ・・・現在ほんっきで白黒の区別がつきません。そして身長の正しい測り方は、た〜し〜かギネスでこんな感じだったような〜・・・・・・。

2005.4.19