DearHeart・・・
〜いとしいキミ〜






 バレンタインデーも間近に迫ったこの日、少年2人は決して間違ってはいないが正解とも微妙に違う知識を提供されていた。







 「北斗」
 「何? 母さん」
 「もうすぐバレンタインね」
 「バレンタイン?」
 「そう。
男の子がチョコをもらえる日。母さん北斗においしいチョコ作ってあげるからね」
 「ホント!? ありがとう、母さん!」





 「スバル」
 「何だ? エリス」
 「もうすぐバレンタインね」
 「バレンタイン、とは?」
 「
好きな子に贈り物をする日よ。それで好きですって確認するの」
 「贈り物? それは何でもいいのか?」
 「う〜ん。日本ではチョコみたいだけど、何でもいいんじゃないかしら。アメリカでは本とか花とかが多いし。
  ま、相手の喜びそうなものならいいんじゃない?」
 「ちなみに君の場合は何をもらったら喜ぶ?」
 「え? 私? え〜っと・・・アルクトスの自然データかしら? 地球とはいろいろ違うみたいだし、研究してみたいから」
 「なるほど・・・・・・」
 「あ、何々? あげたい人がいるとか? 『ちなみに』なんてつけて私に訊いてきた時点で本命あり、でしょ」
 「ち、違う! そ、そんな意味じゃ・・・・・・!!!」
 「あ〜。顔赤いわよ」
 「こ、これは・・・/////!!!」





v  v  v  v  v






 そして、バレンタインデーのこの日。







 「わ〜、母さん、エリス、それにみんな、ありがと〜vv」
 
GEAR研究所のみんなとそれぞれの家族で開かれたパーティーにて、北斗はそのかわいい容姿とそれに輪をかけてかわいい性格が女性陣にうけ(腐女子的発想)、パーティーに来ていた全員からチョコをもらっていた。





 一方スバルの場合。
 「エリス、これ・・・」
 「え? あ・・・・・・。
  これ、アルクトスの・・・!
  いいの?」
 「ああ」
 「ありがとう。スバル」



 「銀河」
 「お? どうしたスバル・・・・・・って、これ
C-DRiVEのニューシングルじゃねーか!」
 「銀河はそれが好きだと聞いて」
 「いいのか、もらっちまって!?」
 「もちろんだ」
 「サンキュー、スバル!!」



 等など。他に研究所の男性たちにはエリス同様アルクトスのデータを渡し、さらに女性たちにはアルクトスにあるきれいな花や珍しい細工の施された装飾物などを贈った。





 そして最後に・・・・・・
 「北斗・・・・・・」
 「あれ? スバルどうしたの? 何か元気なさそうだけど?」
 「実は―――
  すまない。北斗に送るプレゼントがないんだ」
 「え・・・・・・?」
 突然スバルに頭を下げられ北斗はきょとんとした。そこにさらに続く意味不明の(笑)謝罪の言葉。
 「何を贈れば北斗に喜んでもらえるかずっと考えていたのだが・・・・・・。ついに今日になっても思いつかなかったんだ」
 「あの・・・それって・・・・・・?」
 「決して北斗の事をどうとも想っていないわけじゃないんだ! すまない。僕が北斗のことをよくわかっていないせいで―――!!」
 「ちょ・・・! ちょっと待ってよ!!」
 さらにエスカレートしていく謝罪に、慌てて止めに入る北斗。この時点においてもなお2人の『バレンタインデー』に対する認識はずれたままだ。これで理解しろという方に無理がある。
 「どういうことなの? ごめん。僕、スバルの言いたい事がよくわからないんだけど・・・・・・」
 ここまで真剣に謝られると、むしろ理由のわからない自分のほうが悪いような気がしてだんだん小声になっていく。
 その北斗の言葉にスバルはようやく顔を上げ―――
 「『バレンタインデー』とは好きな人に贈り物をする日なのだろう? だが僕は―――」
 「ストップストーップ!!」
 説明をしながらも再び思いつめていくスバルにせいしをかけ―――北斗は首を傾げた。
 「え? バレンタインデーって、男の子がチョコをもらう日じゃないの?」
 「何?」
 「だから―――」





 ―――と
30分ほどの協議と、それを見かねた周りの者の助言の末、ようやくバレンタインデーに対して共通の認識を持つようになった2人。
 「そういう日だったのか・・・・・・」
 「うん・・・、僕も初めて知った・・・・・・」
 ほーっと感心したところまではいいが・・・・・・。
 「でもどうしよう! 僕そんな日だって知らなかったから、贈り物用意してない!」
 「僕も…探したが見つからなかった。これでは用意していないも同じだな」
 共通の認識。即ち――



バレンタインデー=好きな人に贈り物をする(主にチョコレート)




 女性→男性と限定しなかったのは各国により様相が違うからというのと(なにせここには世界中から研究員たちが来ている)、スバルも北斗も男の子だからという理由によってである。
 「―――あ、じゃあ・・・・・・」
 「何だ?」
 悩み込んでいた北斗が顔を上げ―――
 ちゅっ。
 「〜〜〜//////!!!」
 突然のことに頬を押さえ真っ赤になるスバル。
 「な、な、な・・・・・・!!!」
 もちろんいきなりの大胆な行為に戸惑ってだが後ずさる彼を、北斗は悲しそうな目で見つめた。
 「他に贈り物思いつけなかったんだけど・・・。ごめんね。やっぱ迷惑だった、よね・・・・・・」
 「北斗・・・・・・」
 それでも優しく微笑む北斗を見つめ、スバルは真剣な目で彼の肩を掴んだ。
 「そ、そんなことはないんだ。ただいきなりで驚いただけで・・・その・・・・・・気持ちはすごく嬉しい。だから―――」
 と、徐々に顔を近づけていく。北斗もまたスバルを見つめ・・・・・・。
 「―――おー北斗、スバル! こんなところにいたのかよ! せっかくのパーティーなんだからそんな隅にいねーで楽しもーぜ!!」
 「あ、銀河」
 突然現れた第3者にスバルはその姿勢のまま硬直し、そして北斗はそんな彼からあっさり背を向け銀河に向き直った。
 「ん? 何かやってたのか?」
 「別に? なんでもないよ」
 「そーか? ま、早くしねーと飯なくなっちまうぜ!」
 「今行くよ」
 言うだけ言って立ち去っていく銀河を手を振って見送り、北斗はもう一度くるりと振り返った。
 その視線の先には未だ硬直したままのスバルが・・・・・・。
 くす、と笑って、
 「ハッピーバレンタインデー。スバル」
 と耳元に囁き、再び北斗はスバルの頬にキスを落とした。ありったけの思いを込めて・・・・・・。







 いろいろと紆余曲折はあったが、結果的には誰もが幸せになれた、そんなとある日の出来事。

―――Fin














 

v  v  v  v  v  v  v  v  v  v  v  v  v  v  v  v

 さ〜てフライングバレンタインデーSS第1弾は電童でスバ→北でした。決してこの2人は恋人ではありません。なにせ北斗は友情と愛情の区別もつかない純情少年ですので。いちいちおたおたさせられるスバルも大変だ(他人事)。
 クリスマスの雪辱をやっと晴らしたこの作品。あ〜書いててホンっトかわいかったよ〜vv いえ自分の作品がではなく2人の性格が、ね。もー他の作品みんな黒すぎ、ていうか強者そろいすぎだから。このジャンルのみが精神安定的効果を果たしてくれそうです(泣)。
 では、他の作品もどうぞよろしくお願いしますv

2003.1.28