「面倒くさい国」 −King is PAPER!?−
「すみません。ボクはキノ。こっちはエルメス。休養と観光のためこの国に入国したいのですが」
「はい。承りました。ではキノさん、こちらにお越しください」
「そっち、ですか?」
「ええ。入国手続きをいたしますので」
「あ、はい。
―――行こう、エルメス」
「僕はここで待ってるよ。キノ、行ってらっしゃーい」
「ああ。じゃあ終わったら呼びにくるから」
「うん」
「こちらにご記入お願いします」
「はい」
ぺら・・・ぱら・・・ぺら・・・・・・
「すみません」
「何でしょう?」
「これ・・・全部で何枚あるんですか?」
「全部で32枚になります」
「・・・・・・・・・・・・」
「何か至らない点がありましたでしょうか?」
「いえ・・・何も」
「終わった・・・・・・」
「はい。結構です。ではそれを持ってあちらへお願いします」
「え・・・っと、それは―――」
「あちらの課で書類をチェックし、それが終わったら次の手続きをします」
「次の?」
「ええ。今のはキノさんがこの国へ入国したいという志願書になります」
「まあ内容は確かに」
「次はそれに対するこの国からの返書、つまりは確認書です。キノさんはそれに目を通し、内容におかしな点はないか確認してください」
「・・・・・・はい」
「こちらの書類をよく読み、内容に相違がなければサインをしてください」
「はい」
ぺら・・・ぱら・・・ぺら・・・・・・
「すみません」
「何でしょう?」
「これ・・・全部で何枚あるんですか?」
「全部で43枚になりますが」
「・・・・・・・・・・・・」
「何か至らない点がありましたか?」
「いえ・・・何も」
「終わった・・・・・・」
「はい。結構です。ではそれを持ってあちらへお願いします」
「え・・・っと、それは―――」
「あちらの課で書類をチェックし、それが終わったら次の手続きをします」
「次の?」
「ええ。今のはキノさんがこの国へ入国したいという志願書に対するこの国からの返書、つまりは確認書になります」
「まあ内容は確かに」
「次は入国した後の事についてです。宿泊や食事、買い物など、平たく言ってしまえばお金を使う場面でどうするか、キノさんとこの国で正式な契約を果たします」
「・・・・・・はい」
「こちらの書類をよく読み、契約したい番号をチェックしてください」
「その前に質問なんですが―――」
「はい?」
「手続きはこれで終わりですか?」
「まさか。これはまだ金銭的なものについてだけです。この後この国の衛生及び治安に対してどのような対応をとられるかについて同様の契約をします」
「それで?」
「次は逆にキノさんがこの国で問題を起こした際のこちらの対処の仕方などについて。その次は―――」
「―――わかりました。もう結構です」
「ではこちらに―――」
「いえ。ボクはこの国には入国しません」
「え!? なぜですか!? この国はとてもいいところですよ!? なにせ全て契約によって成立している。それも文章という形あるものによって。だからこそ余計なトラブルのない平和な国であり続けられるんですよここは!!」
「そうですか。その方針はいいと思います。ですがボクはこの国に入国するのはやめようと思います」
「なぜ―――いえ、人にはそれぞれ理由があるものですね。残念ですが、わかりました」
「すみません」
「いえ。今度またこの国に訪れる機会がありましたらそのときはぜひどうぞ」
「ええ。そうします。
では。ボクはこれで」
「ああ、でしたらキノさん・・・・・・」
「え?」
「入国手続きを取りやめるのでしたらそのための取引を―――」
「おかえりー、キノ。遅かったね」
門の前でのんびりと言うエルメスに、キノは軽く肩を竦めた。
「まあね」
「じゃあこれから入国?」
「いいや。この国に入るのはやめたよ」
「え? 何で?」
「入国手続きだけで3日たちそうだったんだ」
ため息をつくキノ。心底疲れたと言いたげなその様子を見て、エルメスがきょとんと尋ねた。
「何あったの?」
「キノー! 次はどこの国行くのー!?」
「そうだなー!!」
イライラを解消するかのようにエルメスを爆走させながら、キノは空を見上げ、
「どこかはわからないけど―――とりあえず行きたいのは『簡素な国』かなあ!?」
「何それー!?」
そして、青空の下1人の人間を乗せたモトラドが走っていった。誰もが忙しく働く、『平和な国』を背に・・・・・・。
終
・ ・ ・ ・ ・
本日受けたとある講義にて、集団のまとめ方の1つにこのように(?)法でまとめるというものがあるそうです(当たり前)。というわけでできたこんな話。冗談抜きで3日間ひたすら手続きで終わらせるってのもよかったな・・・・・・。
さって今度こそ陸消化―――もといリク消化のため頑張るぞ! おー!!
2003.6.28
ちなみに今回、わざと場面ごとにやったらスペース開けました。キノも面倒くさければ読み手も面倒くさい、唯一書き手のみが文章使いまわせるため楽だったこの話。極めて最悪ですね・・・・・・。