青学の人々
No.1.Writing 太一
9月×日 日曜日 曇り時々晴れ
ダダダダーン! 山吹中1年テニス部員の壇太一です。今日は室町先輩と千石先輩と一緒にここ、青学に偵察に来ましたです! 3年が引退してどうなったか見に来ました。同じく引退したはずの千石先輩がなんでいるのかはまあ置いておいて。
「部員は全員集まれ!!」
あれ? なんでかそう命令しているのは引退したはずの手塚さんです。よくよく見れば3年の元レギュラーさん達は全員います。さすがにレギュラージャージじゃなくて普通のですが―――凄く妙な感じです。代わりに別の人が来てますがはっきりと似合ってません。似合ってるのはやっぱりずっと来ていた桃城さんと海堂さん、それに越前君くらいです。
「じゃあ今日はこれから行なわれる秋の新人戦に向けて体力―――特に持久力の向上のためのトレーニングを行うよ」
乾さんがそう言うと・・・・・・なぜかコートから外へ出てきました。
「そこ、少し練習に使いたいからどいてもらえないかな?」
あ、不二さんに注意されてしまいました。なので少し下がります。これでフェンスの周りが1回り分空いた事になるですが・・・・・・、何に使うんでしょう?
「まずは全員フェンス周りを20周して」
『まずは・・・・・・?』
乾さんの言葉にみんなやたらと嫌そうな顔をしています。よっぽど練習が辛いのでしょうか?
「先輩、質問っス」
「何だ?」
越前君が質問してます。やっぱ嫌そうな顔です。
「『まずは』って、その後なんかあるんスか?」
「ああ、特にないよ。その後は1周55秒ペースで走ってもらうだけで」
20周走り終わってからペース設定ですか。さすが青学。練習もキツそうです!
「・・・・・・ちなみにまた何か罰ゲームが・・・?」
桃城さんも手を挙げてます。けど『罰ゲーム』ってなんなんだろ?
「今回は・・・・・・これだね」
あ、なんか脇から取り出してます。コップと水筒みたいです。こぽこぽこぽ・・・・・・って、なんか赤いジェル出てますです。
『うわーーーーー!!』
『なんだあれーーー!!』
「改良型ペナル茶23号。以前不二に指摘された通り辛さを75%ほど上げておいたよ。ちなみにもちろん胃に悪影響は及ぼさない」
「へえ、ホント?」
・・・・・・みんな引いてます。そんな中乾さんと不二さんだけ平然と話してます。
「―――じゃあ他に質問もないようだし始めるよ。
GO!」
『うわーーー!!!』
乾さんの掛け声に、みんな頑張って走っていきました。見送って、ちょっと休憩。
20周、終わりました。さすがです。早いです。ボクならとっくに倒れてます。
「さていよいよか・・・・・・」
隣にいた乾さんがなんか呟いてます。ちょっと嬉しそうです。
―――なんて言ってる間にみんなが戻ってきました。50秒くらいです。まだまだ元気そうです。
「50、51、・・・」
走り過ぎていくみんなは、テーブルに置かれたスポーツドリンクを取っていきます。あ、これはさっきこっそり飲んでみたので間違いないです。
「54、55・・・・・・」
何人か間に合いませんでした。―――あれ? なんかここに来る寸前で固まってます。間に合わなくてもしっかり走りきらなきゃいけないと思うんだけどなあ・・・。
「―――55秒、経過」
『ひ、ひいいいいいい・・・!!』
なんか凄く怯えてるです。あ、乾さんがさっきの飲み物(ですよねえ・・・?)を持って行ってます。
「―――55秒、経過」
さっきと同じ台詞を言って止まってる人たちに渡してるです。逆光になってて怖いです。
飲んでます飲んでます。
『・・・・・・うぎゃあああああ!!!』
でもって悲鳴上げて倒れました。泡も吹いてます。
「何だ・・・?」
他に偵察に来てた人たちが首を傾げています。その間にも22周目を終えた人たちが帰ってきました。ピクリともせずに倒れてる人たちを見てます。
「ま、まさか・・・・・・!!」
「さらにパワーアップしたのか!?」
あ、さらにペースが上がりました。本当に凄いです。
「あ、あの・・・・・・」
「何だい?」
勇気をもって乾さんに話し掛けてみました。意外と軽く応えてくれたです。
「それ、なんなんですか?」
「ああ、コレ?」
言いながらボクに紙コップを近づけてきました。
「飲んでみる?」
その言葉になぜか近くにいた竜崎先生が反応しました。倒れてる人たちの事考えるとちょっと怖いです。けど何事もチャレンジ! これがあの都大会の日、亜久津先輩と越前君に教わった事です。
一気に飲んで・・・
「ぐっ・・・!?」
げほがはがは!!
思い切り咳き込んでしまいました。か、辛い・・・!!!
「大丈夫?」
「は、はいです〜・・・」
また差し出された紙コップ―――今度はスポーツドリンク入り―――を飲み、ボクは涙目で返事しました。
「これ・・・なに入ってるんですか?」
凄く気になります。
「ひ・み・つ」
・・・・・・人差し指をピコピコ振ってあっさりかわされてしまいました。その隣でさらに悶絶する人が出てきてるです。
教えてくれそうにないので練習の方をチェックします。もうトータルで50周越えました。新レギュラーの人たちもさすがについていけなかったようです。今ボクの目の前にある死体の山の中にレギュラージャージの人が5人混じってます。
「う〜ん、さすがに元レギュラー達はまだ元気か・・・」
乾さんがストップウォッチを見て呟いてます。ボクも持ってたストップウォッチを見ます。―――まだ1周53秒くらいです!!
「これから少しルールを変えるよ。ビリだった人―――じゃあまた決着が付かないだろうから、1周ごとに制限タイムを1秒ずつ縮める。それで脱落した人にはコレね」
『うげ・・・・・・!!』
丁度ここを走り去ろうとした8人のうち6人がうめいてます。アレをジョッキ1杯って言うのはさすがに辛そうです。―――けどなんで手塚さんと不二さんは何にも言わないのかなあ・・・・・・?
ただいま56周目です。この周は50秒以内で走らなければなりません!
みんな必死です。最初は少しふざけていたのに真剣に走ってるです!
「45、46・・・・・・」
「ぬおおおおおお・・・!!」
「47、48・・・・・・」
「負けるか〜〜〜〜〜!!」
「49・・・・・・」
「――――――!!!」
「――50」
乾さんの手前、3メートルくらいのところでカウントが終わっちゃいました。さすがにこれだけ疲れて1周50秒は無理だったようです。
ぴたりと止まる8人に、乾さんがジョッキの載ったテーブルごと近付いていきます。
「50」
『・・・・・・』
「50」
『・・・・・・・・・・・・』
全員が同時にジョッキを取りました。鼻をつまんだり、もうヤケクソか腰に手を当てたりして一気飲みをしています。
『うぎゃあああぁぁぁ・・・!!』
さすが元レギュラー、やはり鍛え方が違うんでしょうか、その場では倒れずに水道の方へ走っていってます。あんなに走ったのに本当に凄いです!!
「室町先輩!!」
ちょっとまだ興奮したまま、ボクは隣で無感動みたいな先輩に向き直りました。
「何だ?」
「山吹中[ウチ]もやりましょうよアレ! 絶対いい練習になります!!」
拳を震わせて力説するボクに・・・・・・
「―――まあ気が向いたらな」
やっぱり無感動のまま先輩はそう返事しました。けど僕は諦めません! あれは画期的です! きっと先輩も1度飲めばその良さがわかるはずです!!
とりあえずアレの材料を考えないと!! というわけで今日の日誌を終わりにします。では!
そんなわけで今回は日誌風に。この後ヤだろうなあ、山吹中。ある日の練習で太一が怪しさ大爆発の赤ジェルを手に笑顔で迫る!! もうホラーだ!! あ、そうそう日にちでわかるとおり3年はもう全国を終え引退しました。けど毎日のように練習に参加してます。・・・ヒマなんかい! でもって引退後行なわれた合宿(やはり3年が出てたりして)最終日2日間で9月のランキング戦が行なわれ(8月後半だけど)、リョーマ・桃城・海堂は当然の如くレギュラー。あとは1・2年の中からテキトーに(ヒド・・・)。堀尾君がレギュラーになったかどうかは皆さんの想像でどうぞ。あ、けど【Lucky〜】では今だレギュラーになれていなかったような・・・・・・。リョーマと同じブロックに当たり2人目は2年に取られた、とか?
では、この他校生及び他人、つまりは青学男子テニス部というか男子レギュラー以外の視点で繰り広げられる【青学の人々】、次は聖ルドルフ裕太視点で、かな? けどこれはちょっと日誌風(つまりは裕太視点)というよりそれに近い3人称になるかもしれません。相変わらず1人称は苦手です。しかも次回は本気で青学サイドのみで動きそうだし。
2002.9.8