向かい合う君と僕。笑顔の裏で、心臓が大きく跳ねた。
Battle
簡単な挨拶。お互い軽い挑発を交わし、僕と越前君はそれぞれの場所へとついた。
左手に持ったものを僕に向け、にやりと越前君が笑った。
口だけが、小さく動く。
―――今日は勝つよ。
(生意気・・・・・・)
10人中10人が思うであろう事。でも特に不快感はなかった。
むしろ・・・そういう態度は大好きだ。
おもしろいじゃないか。
自分に歯向かう存在。
爪を立て、目を光らせ。
隙あらば引きずり落とそうと待ち構えている。
(違うか・・・・・・)
彼なら『待ち構える』などという消極的な方法は取らない。
攻めあるのみ。
能動的に動き、隙がなかろうが喉元へ向けて牙をめり込ませようとする。
「簡単には、勝たせないよ・・・・・・・・・・・・」
口の中で小さく呟く。声にはならなかった。だが―――
たぶん彼にはわかっただろう。
口を吊り上げる越前君に、僕も笑みを深くした。
手塚の合図で、始まった勝負。
タタタタタタタ――――――!!!
目にも止まらぬ―――そんな言葉が本当に合いそうな越前君の動き。
(確かに、デタラメなスピードだね)
向かいに立ってくすりと笑う。スピード勝負なら僕は彼の足元にも及ぶまい。
でも・・・・・・
(僕に勝つのは、まだ早いよ・・・・・・!)
手をひるがえす。跳ね上げられたものが、予定されていた軌道を辿り、予定されていた場所へ寸分違わず落ちる。
『おおおおおお!!!!!』
周りからの歓声。
そして―――
「な・・・・・・!?」
目を見開いて、越前君が驚きの声を上げた。
極めて珍しい、彼のそんな姿。
逆に彼を挑発するように、僕は僅かに瞳を細めた。
「くそっ・・・・・・!!」
簡単に逆上する彼。さあ、これからどんなものを見せてくれるんだろう・・・・・・。
そして、判定の時。
『ぐはあっ・・・・・・・・・・・・!!!』
「不二・・・、越前・・・・・・。
お前ら、2人とも・・・・・・失格・・・・・・・・・・・・」
「え〜。なんでさ」
「そーっスよ! ちゃんと判定してくださいよ!!」
((ムリだろそりゃ・・・・・・・・・・・・))
倒れ伏し、ぴくぴくと震えるレギュラーらに気の毒そうな目を向ける部員一同。
彼らの前には、
―――見た目が恐ろしく酷く、味も同様に恐ろしく酷いらしいリョーマの料理と、
―――見た目は信じられないほど綺麗なのに、味は信じられないほどマズいっぽい、というか『マズい』なんて言葉では表現出来ない不二の料理が並んでいた。
―――正式タイトル:文化祭料理担当権は誰の手に!?
【Thrill】に続いてまたもや誤解誘発話。こういうのは大好きです。みんながどう誤った方向に解釈していってくれるか、それを考えるととても楽しいです・・・・・・うわ最低だ・・・。
さってそんな話はなかった事にして、青学の文化祭。トレカ第3弾やらそこらへんのスクールカードを参考にすると、どうもテニス部は激辛お好み焼き(だっけ・・・?)を販売するそうで。そしてうちのサイトでこの2人に料理を作らせるとこのような展開になります。毎度の如く。
ちなみに彼ら2人、あの効果音やらなんやらで何をやっていたのか・・・・・・それは皆様ご自由にご想像ください。ああ、文章onlyってめちゃくちゃにやりやすくていいなあ・・・。2003.6.1