私、小坂田朋香は越前リョーマ君が大好きです☆
恋愛定義
練習中 Side朋香
「よし! 20分休憩だよ!」
桜乃のおばあちゃんの掛け声に、私は大きくガッツポーズをした。
(よっし休憩になった!!)
喜びながらもリョーマ様レーダー発動! 暑い中、木陰に向かうリョーマ様さっそく発見!!
「朋ちゃん、早・・・・・・」
同じくリョーマ様を捜していた桜乃を置いて、さっそく保冷バッグに(というか釣り人が使う感じの魚入れるアレ)を担いでみんなの方へ。
「みなさ〜ん! お疲れ様で〜す! 体力・気力回復にスイカなんていかがですか〜? 甘くて美味しいですよ〜!!」
「ええっ!? スイカ!?」
「いるいる!!」
厳しい練習でヘバっていた人たちが、早口でまくし立てる私の声に即座に反応してきた。よし! これは行ける!!
あらかじめ一口大に切っておいたスイカをはいv と大皿ごと渡し、即座に身を翻す。もちろん狙いは木陰で休むリョーマ様vv
「リョーマ様〜v スイカどう?」
先程までとは打って変わった猫撫で声。この辺りの使い分けは乙女の常識! 気にしちゃいけないわ!
帽子を顔に被せて陽射しを遮り寝かけていたリョーマ様もまた、私の声に反応して(ここ重要!)顔を上げてくれた。
「・・・・・・くれんの?」
「もちろんvv」
「サンキュ」
きゃああああ!!! リョーマ様が私に礼言ってくれた〜vvv
私の差し出していた皿から綺麗に丸く形取られたスイカをひとつ、ふたつ。
「あ、甘い」
「でしょ?」
そんな感想を洩らすリョーマ様に、私もとびきりの笑顔で頷いた。なにせこのスイカはあらゆるスーパー、八百屋を回り1つ1つ叩いて中身をCheck! しかも食べ比べまでして一番いい農家のを選んだんだから! おかげで家族ご近所全員スイカ恐怖症になったけど!
「でも・・・、やっぱ喉乾くかも」
「それなら大丈夫!
―――はい」
ごそごそとやはりバッグを探り、取り出したのはもちろんポンタ(笑)。リョーマ様の好みのグレープ味を中心に、最近出たばかりの新商品など何種類も買っておいたから外す確率ごく少なし。さっきまでの練習を思い浮かべるとここはやっぱ馴染みの味ね。それで安心感を得て先に進みたいのよ(断言)。
というわけでグレープのポンタを差し出す。
「へえ。気が利くじゃん」
やったビンゴ大当たり!!
いつもみたいににやりと、でもちょっと疲れた顔に嬉しそうな笑みを浮かべるリョーマ様。プルトップを開け、ごくごく飲み干すその顔はどことなく満ち足りた感じで。
(やっぱリョーマ様カッコ良い・・・・・・vvv)
「――――――何?」
「え!? な、な、ななな何でもないから!! は、はははははは!!!!!!」
「・・・・・・。変なの」
きょとんと首を傾げてリョーマ様が再びポンタを飲み始める。
私はそれを見ているだけで幸せでたまらなかった・・・・・・。
―――と、朋香があまりの幸せさに昇天しそうな頃、肝心のリョーマは・・・・・・
練習中 Sideリョーマ
「よし! 20分休憩だよ!」
オバさんの合図に、俺は軽く息を吐いた。
(やっと終わった・・・)
練習が嫌なワケじゃないけど・・・・・・暑い! 日本の夏のこのジメジメ蒸し暑さって運動する身にはサイアク。
(あっちの木陰行って休も)
丁度いい―――とはとても言えない小さな木陰。どうせあの中でも暑いだろうけど、直射日光が防げるだけまだマシ・・・・・・かもしれない。
帽子を顔に被せて寝そべる俺の耳に、遠くから騒ぎ声が聞こえてきた。
「みなさ〜ん! お疲れ様で〜す! 体力・気力回復にスイカなんていかがですか〜? 甘くて美味しいですよ〜!!」
「ええっ!? スイカ!?」
「いるいる!!」
(ウルサイ・・・・・・)
口の中でぼそりと呟く。でもスイカ。ちょっと欲しいかもしれない。
(けど起きる気しないし・・・・・・)
悩んだところで、救いの神―――なのかなんなのか、とりあえず騒音の中心―――が来た。
「リョーマ様〜v スイカどう?」
さすがに人の耳元では騒がないみたいで。でもそういえば他の応援団の前じゃ遠慮なしに騒いでなかったっけ。
もう確認する必要もないほど聞き慣れた小坂田の声に、俺は帽子を取って顔を上げた。
「・・・・・・くれんの?」
「もちろんvv」
「サンキュ」
(ラッキー・・・)
“棚からボタモチ”だっけ。日本のことわざで言うと。
突き出されたスイカ(丸型)を口に放り込む。
「あ、甘い」
「でしょ?」
別に自分で育てたんじゃない(んだろう。このノリじゃ自分で育てたって言われても信じるけど)のに嬉しそうに頷く小坂田。特に気にせず1つ2つ。
水分をもらって―――そういえば何にも飲んでなかった事を思い出した。
「でも・・・、やっぱ喉乾くかも」
(てゆーかポンタ飲みたいし。出来ればグレープ味。なんでここ自販機ないんだろう・・・・・・)
この合宿所最大の不満。自販機も売店もない。近くの店まで行こうと思えば先生たちに許可を取らなきゃいけない。
「それなら大丈夫!
―――はい」
何か自信満々に言って―――バッグから取り出したのは本気でポンタそれもグレープ味。
(もしかして小坂田のバッグって、四次元ポケット(笑)?)
そんな事を思ったりもする。どちらかというと不思議なのは、完全にこちらの思考回路をトレースしてきた小坂田の脳の方か。
(でも都合いいからいいけどさ)
「へえ。気が利くじゃん」
まあこの位は言ってあげないとね。本気でそう思うし。
プルタブ開けてぐびぐび飲んで。
なんでかその先に見えるのはこっちをじ〜っと、じ〜〜〜〜〜〜っと、眺める小坂田の顔だった。やけに目が光ってて・・・・・・実はちょっと怖い。
「――――――何?」
「え!? な、な、ななな何でもないから!! は、はははははは!!!!!!」
顔を赤くして大口開けて笑い出して。
(ワケわかんない)
「・・・・・・。変なの」
首を傾げて俺はポンタを飲み続けた。飲みながら、思う。
やっぱ小坂田って便利だよな、と(人として最低)。
食事前 Side朋香
というわけで、いよいよ私(たち)が腕によりをかけて作った手料理をリョーマ様に食べてもらう時が来た! 実のところ料理人いるしそりゃやったのはせいぜいそのお手伝いだけだけど、でも前の青学合宿のカレーよりはいろいろ内容も豊富だし、よりリョーマ様も美味しく食べてくれるんじゃないかな、って思うのよ!
取りに来る人一人一人に笑顔でお皿を出し(差別はいけないわ。全員公平に接して印象をアップさせなきゃね)、いよいよリョーマ様の番!!
「いらっしゃいリョーマ様〜vv 練習お疲れ様vv 疲れてない? 大丈夫? 大変なリョーマ様のために、私腕によりかけてご飯作ったのvv いっぱい食べてねvvv」
と、もちろん献身的に尽くしてご飯もおかずも大盛りにして―――
「―――小坂田」
「何? リョーマ様vv」
「俺の分出さなくていいから竜崎呼んでくんない?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この瞬間、私の恋のハートはばしりと音を立てて砕け散った・・・・・・・・・・・・。
食事前 Side・・・
「おっチビー! な〜に女の子振ってんだよ〜!!」
「そーだぞ越前! いくらなんでも今のはヒデーよな、ヒデーよ!!」
「え? な、何なんスか先輩たち?」
いきなり後ろから絡まれワケがわからないリョーマ。さらに後ろの先輩ら―――英二と桃のみならず青学の全員が口を出そうとしたところで、
「あ、あの・・・、リョーマ、君・・・・・・」
指名人物・桜乃が登場した。
「ああ、竜崎」
「あの・・・、私呼んでってリョーマ君が言ってたって朋ちゃんが言ってたんだけど・・・・・・」
なんとなくわかりにくい文章だが、とりあえず朋香は言われたまま桜乃を呼んできたらしい。そのいじらしさに誰かがむせび泣きする中で、
「ご飯入れて」
「え・・・?」
『はあ?』
リョーマが言ったのは、朋香に関してでももちろん愛の告白でもなくただそれだけだった。
「ご飯、って・・・・・・」
「なんでわざわざそれであの子追い返すワケ・・・?」
「だって、小坂田に任せるとなかなか出てこないしやったら大盛りにされて食べきれないから」
「じゃあ、私呼んだのは・・・・・・?」
「ヒマそうだったから」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
完。
後日談
数日後というか数時間後、そこには―――
「リョーマ様〜〜〜〜〜〜vvvvvv」
相も変わらずいつもどおりリョーマの応援(という名の邪魔)をする朋香の姿があった。
砕けても即座に復活する少女・小坂田朋香。彼女は今日もまたリョーマへのラブラブアタックを続けている。果たしてこの妄想爆裂娘の神風激突大作戦を向けられている当のリョーマが、これが『恋』だと気付くのはいつの日か・・・?
―――一応End しかし決して終わりは来ない。そう・・・朋香とリョーマが存在する限り・・・!!
vvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvv
やっと書けた・・・。前々から好きだ好きだと言っていたテニプリノーマルCPその1だか2だか3だかハマった時期別では間違いなくTopなのに書かれたのは跡杏に負けた朋リョあるいはその逆。恋する乙女は無敵です。そして鈍感はもっと無敵です。そしてそんな、掠りもしない2人が大好きです!! なお合宿スイカ持ち込みネタは微妙に『S&T』より。あのシーンで完全に朋リョいいな〜っと思ったわけですし。
はい。Jr.選抜合宿ネタその2です。こういう意味では面白いなあこの合宿。杏ちゃんも参加してる以上次のノーマルCPは跡杏か千杏か、か。いや別にノーマルCPで爽やかさを目指しているのではないですけどね。ただほんっとオイシイなあこの合宿、と思って。
では次こそ、待望の不二受け・・・か!?
2004.6.3