もっかい1から自分のテニスを変えようと思ってます。

・・・・・・勝つために!




強さの秘訣



 生まれ変わった千石清純、初試合は雪辱の対桃城戦。ボクシングにより得た身体と極度の集中力により、最後はラッキーを自ら巻き起こし6−3で勝った。
 握手をする千石を見て、つくづく思う。
 「でも・・・、なんでボクシング?」
 『さあ・・・?』
 リョーマの質問に、答えられる者はもちろん0。自分のテニスを変えるためとはいえ、なんで球技ですらないボクシングを選んだのだろう?
 全員で首を傾げる中で・・・
 「あれ?」
 「どうした? 英二」
 「そういえばさ・・・・・・、
  ―――もう1人いなかった? そういう奴
 『あ・・・・・・』
 英二の言葉に声を上げる青学レギュラー2名(桃除く)。そういえばいた。相手の動きを先読みするため剣道をしていたとかいう某六角生!!
 「なんで誰もが格闘技・・・?」
 「よっぽど周りに不満あるんじゃないっスか・・・・・・?」
 自分らで言っておいてなんだが、妙に寒い空気が流れていった。
 そして―――
 さらに寒さが増していく。
 「ねえねえねえ! 君たちどっから来たの?」
 握手をしていたはずの千石。フェンスの外を歩いていた可愛い子3人を前に、変わった雰囲気はどこへやら、鼻の下をでれ〜っと伸ばし駆け寄って(むしろ瞬間移動して)いった。
 「ねえねえ。とどっか遊び行かない? いろいろ案内してあげるよv」
 「ええ? ホント?」
 「うんうんvv」
 「じゃあ、お願いしよっか?」
 「マジ!? ラッキ〜♪」
 飛び跳ねる千石に、手を差し出したまま固まる桃。見ていた側もまた、ついていけずに呆然と呟いていた。
 「なーんだ。テニスは変わったけど」
 「性格は相変わらずのようだな」
 「ていうか、今まで我慢してた分が弾けちゃったんじゃねーの?」
 「そ・・・、そのようですね」
 「まだまだだね」
 「あはは・・・・・・」
 なんかもうどうでもいい感じでそちらを見やる。そこへ―――
 がしゃん!!
 フェンス越しに千石の顔へと蹴りが入る。
 ジャージに手を突っ込んだまま悠然と声をかけてきたのは、
 「てめぇはまた何してんだ? 千石」
 「あっとべくん!!」
 ―――華村班で練習中の(はずの)その人、跡部だった。
 周りできゃーきゃー騒ぐ女3人は無視し、ジャージに包まれていてもよくわかる長いおみ足を見せつけるようにゆっくりと下ろす。その間に、一度はフェンスから下がっていた千石がより前へと踏み出してきた。
 フェンスを両手で掴み、隙間から顔を出す勢いで話し出す。
 「え〜なになに!? 跡部くんってば俺の試合見に来てくれたの!? てゆーか見てた今の俺!? すっげーカッコよかったっしょ!? 
君のために頑張っちゃったよ!!」
 「ほお・・・。俺様のために、ねえ・・・・・・」
 前半は綺麗に無視し、最後の一言だけに反応する跡部。片手はラケットを持ったまま、もう片方の手をフェンスにかけ、
 「なら―――
  ―――その成果とやら、俺様にも見せてもらおうじゃねーの」
 『―――っ!?』
 軽い呟きと同時、跡部がそれ以上に軽くジャンプする。フェンスに足をかけ、伸ばした手と共にそこから再びジャンプ。3
m以上あるフェンスのてっぺんにかけた片手で身体を引っ張り上げ、一気に飛び越え着地した。
 「・・・・・・・・・・・・って、普通に入り口から入っていったらいいんじゃ・・・・・・」
 そんな切原の呟きは黙殺。いきなりのパフォーマンスに言葉もなく慄く一同の視線の先で、立ち上がった跡部が千石と向き直る。
 2人の間に流れる冷たい風。それに合わせてだろうか、2人もまた、冷たい笑みを口端に浮かべた。
 「今日は、勝たせてもらうよ」
 「大した自信じゃねーの。だが、付け焼刃で勝てるほど俺は甘くはねえぜ?」
 対峙した2人。最早誰にも止めるのは不可能なバトル。
 千石がぺろりと舌を舐め―――
 「行くぜ!」
 掛け声と共に―――跡部がラケットを捨てた
 『は・・・・・・?』
 今度こそ完全に理解不能なノリ。合わせて千石までラケットを捨てている。
 直接千石に迫る跡部。最初に突き出すは牽制の拳。一切手では触れず、千石は最低限の体捌きでそれをかわした。
 懐に入っての千石の攻撃。こうなれば身体の小さい千石が有利か。鳩尾へと突き出された一撃を、跡部は身体の横に残していた右手で逸らした。
 力が流れる。僅かにたたらを踏む千石の身体を、こちらも鳩尾狙いで跡部の膝蹴りが襲う。
 間一髪。逸らされた向きに合わせさらに踏み込んだ千石が、身を屈め転がりつつ攻撃を逃れた。
 立ち上がり、再び真正面で向き合う2人。
 「なるほどな。随分集中力上げたじゃねえの」
 「ふへ〜。やっぱボクシングの合間にサエくんに練習付き合ってもらってよかった〜」
 「ちっ。それでか。ボクシングやってたっつーのに何で足技まで慣れてんのかって思ったら」
 「ははっ。ボクシングやってるなんて言ったら、跡部くん絶対足技仕掛けてくるって思ってたからね」
 言いながらも、互いに自分の有利な間合いへと詰めていく。千石のプレイを見て即座にボクシングだと気付いた竜崎班。結構格闘技
Fanの多い彼らから見ても、2人の動きは相当のものだった。
 と―――
 「―――あの〜。訊きたいんスけど・・・」
 「あん?」
 「何だい?」
 オズオズと上がる声、上がる手。すっかり忘れ去られていた桃の質問に、律儀に2人は返事をした。
 「千石さん、まさかとは思いますけどボクシング覚えたのって・・・・・・」
 先ほど誰もが思った事。
 ―――『何故ボクシング?』
 その答えはまさか・・・・・・
 額に嫌な汗を流す一同の前で、
 千石はあっけらかんと笑ってみせた。
 「いやあ。俺ってば関東大会で神尾くんに負けちゃったじゃん? それで跡部くんにボロクソに言われてさ、悔しくてつっかかったらやっぱボロクソに負けて。だから強くなって勝てるようにって徹底特訓をね」
 「つ、つまりテニスはその副産物・・・・・・?」
 「え゙・・・・・・?」
 突っ込まれ、千石もまたようやく気付く。そういえばこのノリでは―――
 「あ、あはは。まさかv そんな事あるワケないだろ? もちろん
テニスのために頑張ったさvv」
 「浮いてます千石さん言葉とことん」
 「こ、この様子だと完全にテニスの事は忘れ去っていたようですね」
 「それでありながら
偶然テニスにも応用がきいた、と・・・・・・」
 「お・・・、恐るべし『ラッキー千石』・・・・・・」
 「つまり―――」
 周りの意見を総括し、リョーマが桃に告げた。
 「桃先輩はやっぱ『ラッキー』に6−3でボロ負けした、という事っスね」
 「うるせーぞ越前!!」
 痛すぎる指摘に顔を赤くする桃は放って置くとして。
 今度は英二が手を上げた。
 「ついでに訊くけどさ、
  もしかして佐伯が剣道やってたのもまさかそんな感じで」
 「うん。サエくん元々足技
Onlyだったけど、やっぱ跡部くん相手にそれだけじゃ心もとないかな、って事で足は一切使えない剣道やってんだって」
 「剣道は剣道で制約多くないか? やるんだったらいっそ千石みたいにボクシングとかにした方が・・・」
 「だよにゃあ。佐伯だってフットワークいいんだし」
 「ああ、それも考えたらしいんだけど、やっぱ動きの先読みは剣道かな、って」
 「そうっスか? 剣道って何気に袴とか着込んでる分筋肉の動きって見にくいような・・・・・・」
 桃の言ってはならない一言に、千石が顔ごと視線を逸らした。
 代わりに跡部が答える。
 くしゃりと髪を掻き上げ、
 「その他手ぇ傷付けたくないだのなんだの寝言ほざいてやがったが、どうせ本音はテニスラケットでぶん殴るため―――」
 
どごっ!!
 「あはははは。跡部。何か言ったか?」
 『佐伯(さん)!?』
 いつの間にか気配も音もなく跡部の後ろに立っていた件の人物・佐伯が、ラケットではなくコート整備用のほうきを手に笑っていた。
 「あ、アンタ一体何者っスか!?」
 こちらもケンカ慣れしている切原ですら目の前で繰り広げられた不条理事態に大声を上げた。いつの間にかという言葉は決してものの例えなどではない。本当に誰も気付かなかったのだ。跡部が後ろから殴られるまで。
 入り口から入ろうとすれば必ず自分達の横を通る。跡部のようにフェンスを乗り越えたのなら音が鳴るし、やたらと目立つ。しかも彼が着ている服は自分らと同じ、赤白紺が基本となった、決して周りに溶け込まないもの。それでありながら以下略。
 こくこく頷く一同に、佐伯はいつも通りの爽やかな笑みを浮かべるだけだった。
 「俺は普通に入って来たよ? みんな2人に集中してて気付かなかっただけで。大した事じゃないだろ?」
 『いや大した事だから思い切り』
 「そうか?」
 きょとんと首を傾げる佐伯を見て、
 ふいに誰もが思う事があった。
 (そういえば・・・、もしかしてテニス強い人って大抵格闘系も強い・・・・・・?)
 真田は祖父が警察で剣道を教えていて自身も真剣まで使うとか。手塚もやはりまた祖父が警察で柔道を教えていて彼自身習っているとか。跡部・千石・佐伯は今見たとおり。切原もケンカっぷしが強く、確かリョーマもアメリカ生活に対応して護身術+銃が使え・・・・・・
 はっ!と大石が気付く。
 「不二だ! 不二なら弱いはず!!」
 「僕? 僕なら跡部とサエに護身術教わって一通り人体の急所は知ってるけど。後銃はライセンス持ってるよ」
 これまたどこからどう沸いて出たか、とりあえず佐伯と同じ班な時点でこちらも練習を終わらせてきたらしい不二がそんな事を言ってくる。
 「・・・・・・・・・・・・。
  俺も何かやるべきかな・・・・・・?」
 静かに悟る大石に、頷く者多数。
 こうして―――
 ―――中学テニス界の謎はますます広がっていくのだった。



―――この話の主役は一体誰!?

 










♪     ♪     ♪     ♪     ♪

 はい。6/23放送のアニプリ《新生・千石清純》よりでした。・・・なんでこんなにUpが遅いのか、それはもちろん、今日やっと観れたからです(爆)! あ〜千石さんカッコいい〜〜〜vvv やった〜♪ 桃にボロ勝ちだ〜vvv
 ボクシング云々と聞いて最初に思ったのがコレでした。そんなに彼はケンカで跡部に勝ちたいのかなあ、と。いや〜。だって本気で何故ボクシング? サエの剣道もつくづく思ったけど、でもよくよく考えると2人のフットワーク考えると剣道より確かにボクシングの方が合ってるのか・・・? 剣道ってすり足抜き足っぽいし。 ああ、でも剣道に筋力は必要じゃないからそっちでいいのか・・・。
 ―――などと悩んだ結論がこれでした。しかしぶん殴るの目的ならむしろスポーツチャンバラか薙刀か・・・。
 では以上、自壊じゃなくて次回のアニプリは跡部の番。跡部×真田とかタイトルで出てイケナイ妄想した人は果たして何人か。それはしなかったけれど、どちらかというと真田×跡部がいいなあとか思った私は立派に同類です。

2004.6.28