『俺にとっちゃ、ホントのライバルと言えるのはアイツだけだからな』

『あの時の俺は、何としてでも手塚に勝ちたかった。ただ、その一心だった』

『だからこそ、俺はヤツが万全のコンディションで再びコートに戻ってきた時、真っ先にこの手で手塚を倒す。俺以外の誰にも倒させはしねえ』

『そして今度こそ、ヤツを越えてみせる!』






そのようなあの男の言葉を聞いていると、
―――なぜだろう。酷く苛ついた。










盲目的恋愛感情












 その日の夜―――
 「む・・・」
 「手塚か」
 「真田」
 ばったり会った2人は、もう少し何か気の利いた台詞言えよと周りの者みんなに突っ込ませつつそのまま何となく共に過ごす事になった。





 「体の調子はどうだ?」
 「まずまずだ。
  現在はリハビリ中だが、全国大会までには必ず戻る。そのために部員たちは俺のいない間にもよく頑張ってくれたからな」
 「確かにそのようだな」
 手塚のいない状態での自分達との対戦。青学の方が不利だと、その事に驕りを持ったわけではないがそれは厳然たる事実としてそこに横たわっていた―――はずだった。
 頷いて―――それで終わらせる。終わった事を話し合っても仕方がない。愚痴とは弱者の怠惰の事だ。何にせよ、全国大会で倒せばいい。今度こそ、手塚も戻り万全の状態となった青学を。
 ―――と、ふと昼間の事を思い出した。
 「そういえば手塚」
 「む? 何だ?」
 「お前は―――跡部の事をどう思っている?」
 一瞬のためらい。理由は自分でもよくわからない。
 暫しこちらを見やり・・・
 結局手塚が返してきたのは答えではなく、更なる問だった。
 「それはどのような意味でだ?」
 『どのような』―――即ち2種類以上あるという事だろうか。1つはライバルとして、では他は?
 「どのような意味においてもだ」
 「そうか」
 鉄皮面を全く崩す事無く答える真田に、手塚はさらに暫し悩み込み・・・
 「・・・・・・いいライバルだな」
 ぽつりと、そう呟いた。
 「あの時の試合、周りは賛否両論分かれているようだが俺にとっては最高の試合だった。例え肩を壊す事になろうと、後々の何を犠牲にする事になろうと、それでも最後まで戦い抜きたいと思った。全力を持ってぶつかり、そしてアイツに勝ちたいと思った―――叶わない夢だったが」
 『アイツ』。随分と親しい言い方だ。手塚が他にそのように呼ぶ存在などどれだけいるのだろう。
 手塚の表情に、僅かに変化が現れる。おどけるように微かに肩を竦め、
 「やはり負傷した状態で勝てるほどアイツは甘くはなかったようだ。むしろ失礼な事をしたかもしれない」
 「・・・・・・」
 否定しかけ・・・止める。負傷した、していない。そんな事は関係ない。2人にとって、やはり互いは最高のライバルである事、それに関しては最早疑う余地もなかった。
 「だからこそ、次こそは万全な状態で戦いたい。そして―――今度こそ勝ちたい・・・!」
 そんなに強調しなくとも。そんなに真っ直ぐな瞳を見せずとも。
 もうわかっていた。完全に2人の想いは繋がっている。
 真田は小さくため息をついた。気づかれないように、ひっそりと。何故そうする必要があるのかは自分自身にもわからないまま。
 意外とそれがわかったのは手塚の方かもしれない。小さく小さく苦笑する。
 「跡部が俺の事ばかり話していたのが気に喰わないか?」
 「そんなわけなかろう」
 即答。それを聞いた上で―――
 「そうか。ならいい」
 手塚は頷くだけだった。
 頷いて、続ける。
 「俺はいささかムカつくがな」
 「・・・・・・何?」
 今何か・・・、もの凄く目の前の男が発したとは思えないような言葉が聞こえたような気がするが・・・・・・。
 問い掛ける真田に対し、手塚は窓から外を見たまま言葉を続ける。
 「跡部は俺といる時決して俺に話し掛けはしない。いや、『話し掛けて』はいるのだろう。ただしアイツの頭の中に俺は存在しないが」
 「どういう事だ?」
 「アイツが俺と話す時は、必ず氷帝のメンバーかさもなければ不二や佐伯、千石といった奴らの話になる」
 「・・・・・・なるほど」
 噂としては割と有名なものだ。跡部・佐伯・千石・不二が幼馴染であるという事は。なんであんな性格の異なる4人がそんな関係なのかという謎と共に。
 真田は別に噂に敏感なわけではない。直接それを知る者に話を聞いていたからだ。
 幸村は、中学で立海のある神奈川に来るまでは―――東京にいたそうだ。そして小学校の時、自分は参加が禁止された
Jr.大会で(そのときはまだ病気ではなく、実力が違いすぎるからと周りの大人たちに止められたそうだ)出て上位をかっさらっていった彼らに興味本位で近付いたらしい。
 ―――『アイツらは面白いよ。特にアイツらといる時の跡部はね。今では「氷帝帝王」なんて言われてるけど、随分とからかわれてた』
 自分達含めこの世代が台頭してきた時、確か幸村はそう言って笑っていたか。
 「つまるところはそういう事だ。越前の台詞ではないが、俺もまだまだのようだな」
 「つまり―――いずれは自分が『アイツ』の中でのトップに立つと?」
 「お前も同じだろう? 真田」
 ―――『お前も本当は、俺と同じ気持ちなんだろ?』
 前日の夜には跡部に似たような事を言われた。どちらかと言うと・・・・・・
 「俺は誰にも負けんぞ」
 「奇遇だな。俺もだ」





 さらに次の日の朝。
 ぐごほっ! ごほっ!!
 『あはははははははは!!!!!!』
 「てめぇら何やりやがった!!??」
 「やだなあ跡部。そんなに起こらないでよvv」
 「そうだぞ跡部。せっかく周ちゃんが
愛情込めて味付けしてくれたんだから」
 「愛情込めんなら何にもすんじゃねえ!!!」
 「うっうっうっ。跡部が冷たいよ〜」
 「跡部! お前周ちゃん泣かせて満足か!?」
 「あ〜不二くんかわいそ〜」
 「うっせえ!! だったらてめぇら食ってみろ!!!」
 「さって練習練習」
 「そうだね〜。もうこんな時間だし」
 「あ、待って〜」
 「・・・・・・・・・・・・。
  お前まで逃げんなよ不二・・・・・・」





 騒ぎを撒き散らすだけ撒き散らしてとっとと退散した一同を見送り、
 「先は長いな」
 「全くだな」







・     ・     ・     ・     ・








 各班に分かれ、練習に向かう途中―――
 「ねえ跡部、そういえば前から気になってたんだけど・・・
  ―――君好きな人とかいないの?」
 「あん? 何だよいきなり」
 「まあいいじゃん。俺も気になる〜♪」
 両側から不二と千石にねだられ、跡部は首を傾げつつも答えた。
 「俺の好きなヤツ? そりゃいるに決まってんだろ?」
 「へえ? 誰々?」
 「シャルロット」
 『・・・・・・はい?』
 「あとマルガレーテとエリザベーテ。・・・って絞んねーと駄目か? ああ、でも『1つ』とは言ってねえよな? ならどれもだな」
 自分の飼い猫と飼い犬、飼い馬の名を挙げ満足げに頷く跡部。
 「あの〜。君不二くんの質問ちゃんと聞いた?」
 「聞いたから答えたんだろ?」
 「僕・・・好きな人は? って訊いたんだけど・・・・・・」
 「好きな人『とか』だろ?」
 『・・・・・・・・・・・・』
 何も言えずにぼへーっとする2人に代わり、
 佐伯が後ろから跡部の肩を叩いた。
 「跡部・・・・・・。
  ―――お前それ俺たち以外の前で言うのは止めておけよ」
 「? なんでだ?」




―――天然ボケなアイドルの彼の大Fanです(力説)!

















・     ・     ・     ・     ・

 記念すべきJr.選抜話20話目にして祝☆初真田×跡部! ・・・・・・ってこれでいいのか全てにおいて。
 そんなこんなで6/
30の1時間スペシャル、今度は後半編です。前半ラストから引っ張ってましたが跡部の手塚妄愛発言のオンパレード! 2言目には手塚手塚!! 真田はそんな跡部に苛ついて無理矢理話題をぶった切ったようにしか見えません!! タイトルは跡部×真田とか書いてあったのに!!!
 ・・・・・・と大興奮した人は視聴者の中で何人いるのでしょうか。とりあえず私はアニメのこの話の最大ポイントは出張りまくりしゃべりまくるサエだったと思います。裕太の横を勝ち取り観月には一言もしゃべらせず解説から感想全てこなし、挙句『跡部もうダメだな』的発言までしちゃってv も〜v サエってばvvv
 何かポイントを間違っているような気もしますが、だってサエと跡部のゲーム除く初まともな接触(厳密にはしていません)ですよ? サエが一方的にしただけですけど(爆)。
 おかげで楽しかったよこの話〜vvv しかし・・・・・・跡部負けなかったのか・・・。まあ途中までは全体的に不利っぽい展開というか一方的にやられてる的状態だったからいいけど。これで『中学テニス界最強の男』がリョーマに続き跡部にまで負けたとしたら笑い飛ばすところだった・・・・・・。
 では
20話を越えてますますヒートアップするしかないであろうJr.選抜話。これからもよろしくお願いします。


 なおいきなり出てきた幸村。ラブプリにおける不二・跡部との砕けた会話を聞いていると、(まだ確認していませんが恐らく全員とそうなのでしょうが)はっきりきっぱり不二とサエが幼馴染みといわれるよりこっちの方が納得できます。と以前語り隊の方で言ったような気がするので、今回はこういった設定にしてみました。いいなあ。これからはそうしようかな・・・・・・。

2004.7.6