ちっちっちっちっち・・・






 合宿2日目の夜。またも浴衣に着替える佐伯に攻め寄る跡部。
 「だから跡部、そういうのは―――」
 「なんだよ。お前だって期待してたんだろ?」
 「そんな事・・・・・・あ!」
 再び浴衣の裾を割かれ、中のものに手を伸ばされ、
 「うん・・・あ・・・・・・」
 口元に手をやり声を殺す佐伯。その手を取り、跡部がにやりと笑った。
 「ンな恥ずかしがんなって」
 「恥ずかしい・・・に・・・・・・、決まってんだろ・・・・・・?」
 佐伯が赤い顔で視線を俯かせる。逸れたのをいい事に、とった手の甲に口付けをし、
 「―――っ!」
 下の方―――自分の脚の間へと導いた。
 「お、お前何・・・//!?」
 ジャージ越しとはいえ触れてしまったものに、目を見開いた佐伯の顔がさらに赤くなる。
 薄く微笑み正面からそれを見据え、
 跡部は佐伯の手を解放すると、彼をゆっくり抱き込んだ。
 耳元で囁く。
 「お前いつも俺がやってばっかだろ? 実際やるとまた違う感じじゃねえ? 『それ』がお前の中に入るんだぜ?」
 「あ・・・・・・////」
 聞かされた言葉に、佐伯は目をとろんと細めた。
 (これが・・・俺の中に・・・・・・)
 改めて実感する事。いつもただされるばかりで。熱に浮かされた頭では詳しいことを考えるのなど到底無理で。
 「ん・・・・・・」
 跡部の肩に頭を預けるように小さく頷く佐伯。自分も余った手で跡部を抱き締めると、跡部が頭を撫でてきた。
 「よし。いい子だ」
 そんな言葉が嬉しくて。
 そんな所作がもっと欲しくて。
 さらに目を細め、ジャージから中へと手を滑らせる。元々大きく開かれた襟首に顔を埋め、肩口を軽くついばむ。
 「ん・・・」
 愛しい人の小さな小さな喘ぎ声に、佐伯はより行為に没頭していった・・・・・・。





 そんな佐伯の死角で―――
 (ヤベえ・・・・・・)
 跡部はざざざっと顔色を引かせ、怒涛の冷や汗を流していた。
 はっきり言って佐伯の行為はめちゃくちゃに上手い。今まで適当に遊び歩いてきた女どもとは比較にならない。
 当り前だ。彼女らと佐伯の決定的違い。佐伯は自分と同じ男であるという事。これを言うと自己自慢に繋がるためあまり好きではないのだが(ちなみに跡部、人前ではナルシー大炸裂だが実は聞き手のない状況で自分に対し自慢するのは心底嫌う派である)、さすが自分が1から仕込んだだけあって佐伯がさりげなく突くポイントはことごとく当たっている。それもその筈、女どもを実験台に、自分で散々練習した成果のみを佐伯に披露したようなものなのだから。
 つまり―――
 普段跡部にやられる行為の数々、そして現在その通り動いている佐伯の行為、それは必然的に、
 ―――跡部がやられて気持ちいい行為を指すのだ。
 もちろん逆に完全初めての佐伯はそんな事を知らない。跡部の行為が上手いのはわかっているが、それは単にその手の行為に慣れているからだろうと一言で納得し、挙句自分は初めてだからヘタクソだと思い込んでいる。
 そして・・・・・・だからこそより頑張ろうと忠実に再現する。
 ごくりと生唾を飲み、歯を食いしばる。そうでもしないと意識が吹っ飛びそうだ。いっそこのまま全てを佐伯に任せ、思う存分酔わされたいと本能が訴えてしまうほどに気持ちいい。
 そんな緊張感が伝わったのだろうか、佐伯の動きがぴたりと止まった。
 「・・・・・・どうした?」
 無理矢理余裕ぶった笑みを浮かべ、問う跡部。引き攣る笑いを見抜けないほど佐伯の『眼』は悪くはなかった。
 「やっぱ・・・・・・気持ち悪いか?」
 オズオズと見上げる。その視線は一点に定まらず・・・・・・やがて結局下のほうへと戻っていった。
 「だよ・・・な。ゴメン・・・・・・」
 口篭もりつつ謝る佐伯。いくら誘われたからといって出すぎた真似をした自分への自己嫌悪か、しゅんとしぼむ彼を、跡部は今度はきつく抱き締めた。
 「んなワケねーだろ? 最高だぜ」
 「ホントか!?」
 「・・・・・・。ああ」
 非常に嫌な予感が駆け抜け、跡部の頷きが一瞬遅れる。
 もちろんその予感に違わず。
 「よかった・・・・・・」
 心底嬉しそうに佐伯が微笑む。微笑んで・・・
 「
じゃあもっと頑張るからなvv」
 「おい待て―――うあっ!」
 「恥ずかしがるなって。いつもお前がやってる事じゃん」
 「く・・・そ・・・・・・っ!!」







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 そして行われた不毛な勝負。跡部もまた美技の数々を行使したが、片や完全再現出来るほど慣れまくり、片や今回初めてとくれば、勝敗―――先に達するのがどちらかなどは目に見えて明らかだろう。
 「うあっ・・・!!」
 一声上げて達した跡部。力の抜けた彼を支え―――
 ―――佐伯はベッドへと押し倒した。
 「何、の・・・真似だ・・・・・・」
 荒い息を付きつつ何とか押し返そうとする跡部の両手を封じ、
 「よくよく考えたんだその2。周ちゃんに見られて何が恥ずかしいって、こういう事やってるっていうより、俺がお前にやられてるって事実なんだよな。
  つまり―――



  
―――俺がお前をヤれば問題なしだ!



 「ちょっと待て!! だったら俺はどーなんだ!!」
 「え? お前別に恥ずかしくも何ともないんだろ? だから
TPO構わずやってくるんじゃないのか?」
 「てめぇが恥ずかしいって感じんならその時点で俺だってそう感じるに決まってんだろーが!!」
 「ほおおおお・・・。
  つまりお前は自分が恥ずかしいと感じてた事をいつも俺にはやらせてた、と?」
 「ぐっ・・・! そ、それに関しては今回の事とは―――」
 「関係大ありだぞ? 無理矢理話題逸らそうとしたって無駄だからな」
 「だ・・・大体そもそもてめぇだって気持ち良さそうにヨガってたじゃねえか!! ならいいじゃねーか!!」
 「ふんふん。という理屈からすると今回『気持ち良さそうにヨガってた』お前はこうされて問題なし、という事だな?」
 「くっ・・・・・・!! このヤロ・・・・・・!!」
 「反論なし。じゃあそれで決定だな。
  今までさんざんやられた分、覚悟しろよ、跡部vv」





 かくて―――
 「うああああああ!!!!!!」
 2人の部屋からは、一晩中悲鳴が聞こえてきたと言う・・・・・・。







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 次の日―――
 げっそりこけた跡部に、隣を取った不二が食事を摂りながらぽつりと呟いた。隣の部屋にいた不二が。
 「跡部・・・・・・。
  何やるにしても別に僕は構わないけどさ・・・・・・もう少し静かにしてくれない? 僕らも集中できなかったんだけど」
 「ああ・・・。出来るならそうしたいな・・・・・・」
 昨日の事+不二に完全にバレていたショックにげんなりする跡部は気付かなかった。今の不二の発言がどれだけ意味の深い―――有体に言ってどれだけヤバいものかを。
 反面つやつや爽やかな顔で朝食をおいしく頂くS2人こと佐伯と千石に、跡部はただただ恨みがましい視線を飛ばすしかなかった。






―――(またしても跡部は報われぬまま)Fin











 はい。【ちっちっちv】の続編? でした。だからいちゃ甘跡虎は?
 ・・・・・・駄目でした。乗っ取られました跡部様(爆)。おかしいなあ。乗っ取られる的展開は合っている筈なのに、最初あった <サエ、恥ずかしがりながら跡部の前に跪き『今日は俺がやってやるから・・・////』> 的展開はどこへいったんだろう・・・・・・?
 むう。サエ受けの中では跡虎が一番好きなのに、なのになんでこうも上手く行かないんだ・・・!? かつては不二の乱入あり、せっかく2人になればサエの逆襲。報われないなあ、跡部・・・・・・。

2004.7.18