「では、オーダーを発表する。ダブルス2。跡部・真田」
 榊のそんな言葉に、
 『・・・・・・・・・・・・』
 切原、不二、そして千石は、
 極めて妙な顔つきをした。





最狂! 跡部と真田、デスタッグ!!







 「―――む。どうした?」
 最初に気付いたのは、もちろん真正面にいた榊。彼の言葉に、コーチ・選手隔てず他の7人―――この中には当然当の跡部と真田も含まれる―――もまた3人を注目し・・・
 「あの〜、すみません榊監督・・・・・・」
 「何だ? 千石」
 「そのオーダー・・・・・・



  ――――――
何間違った成果ですか?」



 引きつった笑みでこれ以上ないほどに首を傾げ問う千石。不二に切原、さらに応援席では氷帝メンバーに立海・六角メンバー、淳と裕太まで頷いている。
 「・・・・・・何?」
 意味がわからず榊が問い返す。それにさらに千石が続ける―――より早く。
 「てめぇ千石!! 何榊監督のオーダーにケチつけてやがる!!」
 榊崇拝の跡部が千石の襟を締め上げた。
 「ちょちょちょ〜っとタイム跡部くん!! だって今のオーダーは〜・・・・・・ねえ?」
 微妙な笑みのまま視線で他へと同意を求める。先ほど頷いた面々がさらにうんうん頷いた。
 「失礼っスけど榊監督・・・・・・
  ――――――アンタ正気っスか?」
 「跡部くんと真田くんのダブルスっていったら・・・・・・」














































  「「去年の
Jr.伝説造り上げたペアじゃないですか」」











































 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何?」
 榊の反応はさらに遅れた。逆に―――









 「どういう意味だそりゃ!!」
 『伝説』の意味をよく知っている当事者―――跡部の反応はやったらと早かった。
 「だって跡部くん!! 君だけだよ!? 去年の
Jr.で真田くんノックアウトできたの!!」
 「てゆーかアンタ何
味方退場させてたんスか!? 先輩たちとみんなでビビったっスよ!!」
 「だから!! だから今回こそそのリベンジを果たそうって事でダブルスになったんだろーが!!」
 「果たせるの!? ねえ果たせるの!?」
 「果たせる見込み0だからアンタずっとシングルス担当だったんじゃないっスか!?」
 「るっせー!! 大体頭にボール3回くらいぶつけられた程度であっさり気ぃ失う真田が弱すぎんだろーが!!」
 「君のボール頭に3回喰らうまで立ってられた真田くんの方を表彰したいんだけど!?」
 「てゆーかアンタ頭に限定しなかったら
10回はぶつけてたじゃないっスか!!」
 「しかも破滅への輪舞曲までぶつけたってどう!? 真田くんピンポイントで狙ってどうするのさ!!」
 「そもそも喰らうんじゃねえ!! ちったぁ避けるとか防ぐとかしろよ!!」
 「無理っスから!! どこの世の中に後ろから飛んできたボール避けたり防げたり出来るヤツがいるんスか!?」
 「そん位レギュラークラスなら出来て当然だろーが!!」
 「それはあくまで悪意バリバリの敵が後ろにいてしかも警戒していた場合!! 信頼すべきダブルスパートナーは警戒しない!!」
 「はっきり言ってアンタとパートナー組むんだったら後ろ向いてアンタ警戒した方がずっと安全っスよ!!」
 「だったらそうすりゃ問題ねえだろーが!!」
 「どこに!? むしろ問題しかないから!! それダブルス組む意味0!!」
 「明らかに害にしかなってないっスよそのダブルス!!」
 「榊監督!!」
 『榊監督〜〜〜〜〜〜!!!!!!!』









 「・・・・・・跡部さんって・・・、本気でそこまでダブルスヘタなんスか・・・・・・?」
 ぎゃいぎゃいと騒がしい輪から離れたリョーマ。騒ぎを遠くから眺めながら、先ほどの千石の発言に同じく頷いた不二へと尋ねた。
 「ヘタだねえ・・・・・・」
 即答。
 「はっきり言って、以前の君と桃のダブルスは跡部に比べれば遥かに可愛いものだったよ・・・・・・」
 遠目でそんな事を語り出す不二。眼差しの先に描いているのは一体何についてなのか。
 「跡部とダブルス組んで・・・・・・試合が『終わる』までコートに立っていられたのは僕が知る限りサエただ1人だったなあ。サエはサエで跡部だけ警戒して、結局3ゲームの間に5回ぶつけられそうになってケンカになって2人で退場喰らったけど」
 「あの、さ・・・・・・不二。訊きたいんだけど・・・・・・
  ――――――勝つか負けるかするまで行った試合、あんの?」
 「ないね」
 先ほど以上の即答。ちなみにこれまた件のメンバーがこくこく頷いている。
 氷帝メンバーが知っているのはもちろん同じ学校だからだが、さらに立海メンバーは全員去年の
Jr.選抜合宿に参加し件の『伝説』をその目で見、そして淳含めた六角メンバーは佐伯転入以降ちょくちょく遊びにくる跡部らと仲良くなり、テニスもよく共にしていたりする。









 ちなみに裕太は・・・・・・
 (変わんないなあ、跡部さん・・・・・・)
 ちょっぴり懐かしい思い出に、1人静かに涙を零していた。










 「大体ちっとぶつけた程度でてめぇらいちいち騒ぎ過ぎなんだよ!!」
 「『ちょっと』!? 3ゲーム中
10回ぶつけて『ちょっと』!?」
 「ぶつけるたんびに点落としてんスよ!? ゲームにして2ゲーム半!! 全部自爆点で相手にポイント上げてどうするんスか!!」
 「それ以上に取りゃいいんだろーが!!」
 「そもそも落とさなければもっと楽に行けるでしょーが!!」
 「ハンデだハンデ!!」
 「アンタもさりげにちょっと不毛だなとか思ってんじゃないっスか!!」










 なおもそれこそ不毛に続く言い争いをこちらも遠くから見ながら、
 (今更そういう事言うなよな・・・。オーダー提出しちゃったじゃないか・・・・・・)
 榊もまた、無表情の奥で1人静かに泣いていた・・・・・・。







×     ×     ×     ×     ×








 「ゲームセット!! ウォンバイ日本!!」
 わああああっ・・・! と盛り上がる周りは放っておいて。
 「ハァ〜ハッハッハ!! 俺様が本気出しゃこんなもんだ!!」
 自慢げに高笑いを上げる男も放っておいて。









 「真田副部長・・・。お疲れ様っス・・・・・・」
 「うん・・・。君はよく頑張ったよ・・・・・・。ごめんね。止められなくて・・・・・・」
 コートを出るなり意識を失った真田を待機させていた救急隊員たちが運んで行くのを見ながら、これ以上見ていられないとばかりに目を手で覆いホロホロ涙を流す切原と千石。
 そして・・・・・・









 「実は立海戦で切原君にボールぶつけられた時ね、
  ―――正面から悪意バリバリでぶつけられるって新鮮だなあ、ってついつい思っちゃったんだよね。いつも後ろから悪意0でぶつけられてたから」
 またまた懐かしげな目つきで言葉を紡ぐ不二に、









 (氷帝帝王って一体・・・・・・)
 会場中が、ひとつの疑問で埋め尽くされたのは言うまでもないだろう・・・・・・。










―――という結果しか予想できない自分がどうかと思う。












 ようやっと撮り貯めしていた分のアニプリ観ました。予告でびっくり☆ この2人がダブルス・・・? しかもいきなりあるって事は1じゃなくって2? 最初に意表つくにしてもなんだか一番在り得ない組み方のような・・・・・・。まだリョーマと切原が組んだ方が納得出来そうな・・・そしてまともに試合が進みそうな気がするのは私だけでしょうか・・・・・・? だって跡部のダブルスのヘタさといったら(以下略)。
 そんな感じで
Jr.選抜試合編。合宿以降は初めてですね。そして今回、デバガメ隊とか茶々入れ隊とかダメ出し隊とか臨時解説員とかがその他脇役としてしか出られなかったのが残念だ(あえて誰とは言いませんが)。以降もこんな感じで続きます?

2004.8.16