わんだふるどりいむ







 日が暮れる海沿いの道で。日中散々練習したのにまだ足りないのか、あの人はお供もつけず1人黙々と走っていた。
 妨害するように、その道の途中に立つ。こちらに気付いたか、その人は一瞬だけ俺のことを横目で見やり―――そのまま横を通りすぎていった。俺じゃ足を止める価値すらないらしい。
 ・・・ムカつく。
 合わせるように、俺も走り出す。あの人以上のペースで。
 あっさり俺が抜き去る。気持ちがちょっとは晴れる。これで俺の事を気にしてくれるだろうという期待で。
 目だけ後ろに向ける。その先にあったのは相も変わらず同じペースで淡々と走るその人。完全に相手にされてない。
 少しずつペースを落として、俺はその人に並んだ。さすがに何か用かと目線で問い掛けてくるその人に、
 皮肉を飛ばす。
 「アンタ意外と面白みないっスね。抜かれて平気なんだ」
 「バーカ。あんなペースで走ってたら
30分も持たねえだろ」
 返事は即座に返って来た。
 「
30分も・・・って、どん位走るつもりっスか?」
 「ここら1周だから、
10kmってトコか。そのペースじゃ30分じゃ無理だろ?」
 「うげ・・・。
10km・・・・・・?」
 「嫌なら今すぐ止めていいぜ?」
 こっちを見下ろし、にやりと笑ってくるその人。馬鹿にされるのは余計ムカつくけど、面白がるこの人のこんな顔なんてそうそう誰でも見られるものじゃなくって。
 それだけ『許されて』いるのが嬉しい。もちろん顔に表すつもりはないけど。
 俺は口を尖らせ、『生意気なルーキー』そのままの態度でいった。
 「そん位楽勝っスよ。いつも走らさせられてんだから」
 「・・・そりゃさりげに自慢になってなくねえか?」
 肩をコケさせ、その人が呻く。呆れ返って―――
 ―――俺の頭を、ぽんぽんと叩いてきた。
 「んじゃついて来な。ラストまで来れたら褒美やるよ」
 「ホントっスか!?」
 「ああ。ただし―――
  ―――ラストまで俺について来られたらな」
 そう言うと、
 その人は一気にペースを上げた。最初俺が走ってた以上に。
 「ちょっと!! それじゃ持たないんじゃないっスか!?」
 いきなりつけられた差。慌てて追いながら叫ぶ俺に、
 「そりゃお前の話だろ!? 俺は充分持つぜ!?」
 肩越しに振り返り、その人は余裕綽々の笑みを浮べていた。
 余裕の笑みで、言う。
 「さあどうするよ越前! 残り
500mだぞ!!」
 「はあ!? 
10km走んじゃないの!?」
 「とっくに
9.5km走り終わった! もうラストだ!」
 「じゃあ―――!!」
 「今ここで追いつけなきゃ約束は破棄だな!」
 そんな事を言いながら、益々ペースを上げていくその人。俺にチャンスはくれないらしい。尤も―――
 (だから面白いんだけどね)
 心の中だけで呟き、俺は一気にスパートをかけた。
 「じゃあ代わりに追いついたらしっかり褒美下さいね!!」
 「ハッ! 言うじゃねえの! 追いつけるモンなら追いついてみな! 俺はそうは甘くねえぜ!?」
 「上等!!」



 そして、日の沈む中2人の影はいずこかへと消え去っていった・・・・・・。















































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 「―――っていう夢見たんスよ」
 朝会うなり開口一発そんな事をホザいてくるリョーマに、『その人』こと跡部は心の底からため息をついた。
 「・・・・・・。そりゃどこのバカップルの話だ・・・?」
 項垂れる。が、
 がしり。
 肩から落ちた腕をなぜか思い切り掴まれた。
 「・・・・・・・・・・・・おい」
 より険悪な声で呻く。顔を上げ見やる先では、それこそなぜかリョーマが瞳に異様な輝きを乗せていた。
 輝きを乗せ―――
 「というワケで、さっそく実行しに行きましょう」
 「おいちょっと待て越前! 一体どういう理由で―――っつーか第一問題で今朝だろうが!! しかも練習あんだろ!?」
 「そんなもの心配ないっス」
 「だからどう!?」
 「心配ないったらないんです」
 「わかんねーよその理屈は!!」
 「大丈夫だよ跡部。今がいつかなんて心配ないさ。朝日なんて僕がすぐ沈ませてあげるからね」
 「そーだよ跡部くん! それに練習も問題ないよ! なにせ俺のラッキー・・・もとい原因不明の突発事故でテニスコートは審判台が倒れてぐちゃぐちゃになったり、トレーニングルームは電源が落ちて機械が正常に作動しなかったりするからね!」
 「そうそう。お前の不幸―――じゃなくて越前の幸せのためなら俺もいくらでも協力するからな。
  あ、コーチ達に見つかるとヤバいって? そっちも問題ないさ。階段から落ちるとか上から降ってきたものに潰されるとかそんな日常茶飯事な事故に巻き込まれる事くらい誰にでも起こるって。もちろん『事故』だから犯人なんて探されないし」
 「なんなら一番効果的かつ犯人を特定しやすい手段として僕ら除く全員に『汁』でも飲ませてみる? 1日ノックアウトは確実だよ。特に今回は日が長いからドラムで持ってきてるおかげで充分足りるし」
 「だからてめぇらも勝手に乱入してくんじゃねえ!!」
 「ほら、だから先輩達もみんな大丈夫だって言ってるじゃないっスか」
 「そうだよ跡部」
 「俺らも全力で君達を応援するからね」
 「だから遠慮なく行って来い」
 「ここに言葉の通じるヤツぁいねえのか!!??」







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 こうして―――
 ぐちゃぐちゃになったテニスコート。使い物にならないトレーニングルーム。階段から落ちたり上から降ってきたものに潰されたりするコーチ陣。さらに謎の『汁』により死屍累々と横たわる合宿参加メンバーらを全て置き去りにし、



 「じゃあ行くっスよ跡部さん!」
 「ああもうどこにでも連れてってくれ・・・・・・」



 前代未聞の怪奇現象、午前8時に沈む太陽及び旗を振って見送る友人(?)数名をバッグに、
 跡部はリョーマと共に、いずこかへと消え去っていった・・・・・・。



―――Fin













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 最近久々に『S.H!2』をやり・・・・・・どうしてもペアモードのED(友情度150%以上)その1はこんな感じのやりとりを夢見たくなったりします。それにしてもこのゲーム、最近ようやっと友情度初期25%を、エディットではなく育成して確実に200%に跳ね上げる方法を考案(遅すぎ・・・)。さっそく第一号としてサエと跡部で実験中です。いいなあ1週間経過した時点で140%以上あるって・・・。ちなみに私が作り出した最低記録は不二と観月の0%です。なお初期は2%でした。20%くらいまで上げては下げ上げては下げしてたら、観月に呆れ返られて逃げられました。チッ! いっそこのまま優勝までして欲しかった・・・・・・。後でよくよく解説書読み直したら、『友情度が低すぎる場合は1週間経過した時点でゲームオーバー』としっかり書かれてましたが。
 それはともかく『
S.H!2』。まだまだ面白いですねえ立海レギュラーがいないのとボウリング中流せるBGMがキスプリまでというのが残念ですが。早く3出ないかなあ・・・。『最強チームを育成せよ!』どうなんでしょうねえ? 私育成ゲーム苦手なので買ってないんですよね。『S.H!2』はまだ1週間だから我慢するとして、『S&T』はダメでした。はっきり2ヶ月分で飽きた派です。『R&D』どうしよう・・・。CMではサエが膝枕してるし・・・。あ〜『自分』邪魔〜(注:これはそういうゲームです)。
 ラストにどうでもいい呟き。跡部がボウリングにてターキーに対し、『ターキー? 当然だろ?』というのですが・・・・・・ストライク3連続なんぞという極めて特殊状況(とはいっても跡部はストライク出しやすいですけど素の状態で充分)かつ他にはどこにも使い様のない台詞をわざわざカバーするほどの
PS2の容量には本気で驚きですな。

2004.10.11