ケビンがイリュージョンを放つ。見て、
「また3つになりやがった・・・」
「え? 俺には5つに見えたけど」
「俺6個!!」
「僕1個」
『・・・・・・・・・・・・。
はあ?』
イリュージョン 視るビジョン
「つまり、動体視力がええ奴には撹乱させる技になりおるけど
―――全然よくあらへん奴には意味ないっちゅーこっちゃな」
忍足の解説に、一同が深く頷いた。先程の会話、順に跡部・千石・英二、そして不二である。千石と英二の動体視力の良さは言うに及ばず。跡部もまた特に話題になりはしないが、総合力があれだけ高い以上動体視力もまたいいのだろう。現に真田も似た程度見えているらしい。ついでに現在試合中でモロに翻弄されているリョーマもまた動体視力はいい。
一方不二。彼はかつてこれと同じような技―――ルドルフ赤澤のブレ球を全く見抜けなかった前歴を持つ。そう考えると今回『1個』だった理由はよく分かるものだ。ついでに見えないから惑わされない事も。
納得し、
ふいに千石が顔を上げた。
「つまり・・・
――――――見える個数が多い程動体視力がいい、ってワケか・・・」
だからどうしたとは言わない。
しかし・・・・・・
互いの視線が泳いだ。目配せする。まるで牽制するように。
どうやら考えている事は全員同じらしい。
「じゃあこうしようか。各校代表者1名出しての一斉勝負。まず青学からは英二ね」
「オッケーオッケー! 任してちょ!」
「山吹からはもちろん千石君」
「動体視力勝負なら俺の畑だよ? 今回は、勝たせてもらうよ」
「氷帝からは・・・跡部でいいかな?」
「ええで。俺にも1個しか見えへんしな」
「フッ。いいぜ。勝つのは俺様だ」
「で、立海からは真田、と・・・」
「よかろう」
かくて、全く以って意味不明の勝負が始まった。
○ ● ○ ● ○
こちらは試合するケビンとリョーマ。視覚は忙しいが聴覚はヒマな2人の耳に、こんな会話が飛び込んできた。
「見えた! 7つ目!!」
「あっま〜い! 俺8個!!」
「クソッ! 5つまでしか見えねえ!」
「まあこないなんは岳人が得意やからなあ」
「なぜこの場にいないんだ赤也! お前がいれば立海大の勝利だというのに・・・!!」
「・・・・・・つまり見えないんだね、真田」
聞き、
2人して肩を震わせる。
(俺達は試合やってんだぞ!? 何やってんだよ日本チーム!!)
歯軋りするケビン。集中力阻害要因を怒鳴りつけようとする。が、
リョーマの方が早かった。
「アンタたち!!」
びしりとラケットを突きつけ、言う。
「俺10個見えるけど!?」
「お前も乗ってんじゃねえ越前リョーマ!!」
こちらは即刻突っ込む。コイツは何回も空振りして何やってんのかと思ったら!!
「な・・・!? 10個・・・!?」
「おチビすげー!!」
「クッ・・・!! 負けたか・・・!!」
「これまでなのか俺達立海は・・・!!」
「―――諦めるのは早いっスよ真田副部長!!」
「お前は―――!!」
「切原!!」
そう、奥から颯爽と現れたのは切原だった。負傷し病院へ搬送されている筈の彼は、肩に真っ白な包帯を巻きつつそれでも悠然とした態度でみんなの前に現れ―――
「俺11個見えましたから!!」
「そんな事言うために戻ってくんじゃねえ!!」
「そんな・・・!! じゅういっ・・・こ・・・・・・!?」
「へへ。悪りいな越前。そうそう何回もお前にゃ負けらんねーよ」
「クッ・・・!!」
得意げな切原の前で、リョーマが始めて崩れ落ちた。
「―――いやまだだ。まだ勝負はついていないぞ切原」
「な、何だと・・・!?」
「手塚部長!!」
今度はベンチに座っていた手塚が立ち上がった。切原を―――ではなく不二を指差し、
「不二が最初に言ったはずだ。各校代表者1名出しての一斉勝負。そして立海の代表は真田だと。お前に参加する資格はない!」
「くっ・・・・・・!!!!!!」
「アンタもかよ!?」
最早悲痛な叫び声を上げるケビン。と・・・
「・・・・・・だったら越前もなくねえか? 青学代表は菊丸だろ?」
そう呟き、跡部が首を傾げた。だが、
「甘いな跡部」
「あん?」
「つまり越前と切原の申告を除けば、現時点でトップは菊丸の8個だ」
「て・・・てめぇ汚ねえぞ手塚!!」
「最初から青学が勝つ公算があったからこそ指摘したのか!! 貴様スポーツマンとしての誇りは失くしたか!?」
「スポーツマンシップに乗っ取るのならばまずルールを守る事だ」
「勝て千石! こうなったらてめぇが頼りだ!! 何としても菊丸に、青学に勝て!!」
「その通りだ千石! 我々の希望はお前だけだ!!」
「イエッサー!! 跡部くんの応援つきなら俺頑張っちゃうよ〜!!」
「・・・・・・それでいいんだ、跡部も真田も」
「もうちょい手段は選びいよ、2人とも・・・」
「ついでに手塚もね・・・・・・」
○ ● ○ ● ○
同時刻、客席にて。
「ちなみにお前じゃったらいくつ見える? 佐伯」
「14個」
「惜しいのう。俺は13個じゃ」
「え? ンなに見えんのかよ? 千石だって7個しか見えねえって言ってんだぜ?」
「つーか・・・あの短時間でよくそれだけ数えられるなお前ら」
丸井と黒羽のいろんな意味での感心に、
まず14個見えた佐伯が顎から指を外した。
薄く笑い、言う。
「コツがあるんだよ」
次いで、13個見えた仁王が補足―――『コツ』を加える。
「見えたボールはそれ以上追わん事じゃな。流れるビデオじゃのうて一瞬の写真として捕らえるとよく見える」
「へ・・・?」
「千石は動体視力が良すぎるんだよ。他のヤツなら捕らえた映像そのまま脳に伝えるのが限界なのに、千石はさらに見えたボールを無意識の内に目で追ってる」
「『残像』言うのは追えないから見えるんじゃ。追えたならそれは残像としては残らん」
「当り前の話、端からボールは1個。目で追えたんならむしろ見える数は少なくなる」
「それで千石の数が切原以下なのか・・・・・・」
丸井がそんな基準で納得する。去年のJr.選抜であったのだ。動体視力を鍛える練習が。これは今のものと違って、単純に動体視力がいい者ほど良い成果を出す仕組だ。
確かに真田が言う通り、切原は立海内で最も動体視力が優れている。だが千石はそんな切原をあっさり上回った。どころか千歳と並んで全選手中トップの成績を収めた。
「んじゃあこの勝負って・・・・・・」
「千石が『勝つ』としたら多分見すぎて疲れたからだろうな」
「虚しい『勝ち』だな・・・・・・」
「でもって菊丸が越前より個数が少ないのは一瞬でそれだけ数えられないからでっしゃろ」
「やっぱ数えられねえのかよ・・・・・・」
「てか菊丸、算数の能力越前以下・・・・・・?」
○ ● ○ ● ○
そんなワケで―――
「ゲームアンドマッチ! 越前リョーマ! 7−6!」
「勝った〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「あ〜〜〜!! 負けた!!」
「クッソ! 千石てめぇ何やってんだよ!!」
「せっかく俺勝ってたのに・・・・・・」
「だからいい加減その勝負止めろっつってんだろ!!??」
○ ● ○ ● ○
こうして、日米Jr.選抜親善試合は日本の勝利に終わり、
そして関東中学選抜動体視力対決は青学の勝利で終わった。
「バカばっかなのか・・・? バカばっかなのか日本の中学生ってのは・・・・・・」
そんなケビンの疑問を残したままで・・・・・・。
―――Fin
○ ● ○ ● ○
ようやっと観ましたケビンvsリョーマ戦(またしても撮り溜め中)。も〜ケビンのリョーマ大好き光線が目に耳に痛かったです。合宿では跡部→手塚。試合ではケビン→リョーマ。ンなに何かやらせたいのかアニメスタッフ!! 思いっきり踊らされてどっちもやったけど妄想!!
そしてこのイリュージョン。みんなの申告個数おかしくありませんでした特に千石さん・・・? 彼の動体視力って、英二やリョーマの比じゃないんじゃなかったんですか・・・(By青学vs山吹戦)? 英二に負けてるって・・・・・・。
そんな疑問を事故解決もとい自己解決したのがこの話。動体視力極端にいい人って実は逆に残像見えないような気がしてたまらないのですが・・・・・・。
では以上、何よりたまらなかったのは予告から公開されていた跡部と千石さんの会話だと断言できる回よりでした。せんべ(逆も可)Fanの私は嬉しくて雄叫び上げましたよ。「英二邪魔!」と・・・・・・(それでも私は英二もFan・・・)。
2004.12.5