跡部景吾。佐伯虎次郎。千石清純。
 彼らは不二周助のためならば何でもやる守護者である。





 

× × レンジャー
                
〜気分はむしろスカベンジャー?〜



朝―――対英二
午前練習1―――対乾おまけで観月
午前練習2―――対榊
午前練習3―――対切原
昼食1―――対裕太ついでに観月
昼食2―――対手塚
午後練習1―――対華村 New!
午後練習2―――対河村 New!
午後練習3―――対忍足 New!
午後最終練習―――対手塚班無差別 New!
食前風呂―――対リョーマ New!



 

朝―――

 英二は目覚ましが鳴る
10分前に目が覚めた。合宿が始まってから毎度の事である。こうして朝早く起きて、同室者の事をじっと見るのが彼の朝の日課である。
 「えへへ〜v 不二〜v 今日も可愛いにゃ〜vvv」
 ベッドに寝転んだまま、手を伸ばす。ぷにぷにと頬を突付けば、む〜と口を尖らせ。
 同室者の特権。こんな不二の姿を見たことがある者などそうはいまい。
 「おはようのちゅ〜vvv」
 身を乗り出し―――
 とんっ。
 ―――そこで英二は再び眠りについた。





 英二の後ろ首に手刀を叩き込み気絶させた犯人は、
 「や〜れやれ。今日もぴったしかんこんって感じ?」
 「つーかわざわざマザーキー取って来るなんて手間かけてねえで普通に開けりゃいいじゃねえか」
 「やっだなあ跡部くん。それやったら不法侵入じゃん。錠傷つけて証拠残すし」
 「それはお前がヘタだからだろ千石? それに金庫の方の錠は傷つけんだろ?」
 「そ〜んなミスしないって」
 「言ってる事支離滅裂だな」
 「あっはっはv まあ何にしろ―――」
 「そうだな」
 「さっさと出ないと、起こしちまうかな?」
 「んじゃ、さっさと出ようぜ。あれだけ決まりゃ菊丸も当分目ぇ覚まさねえだろ」
 「じゃあそういうことで」
 『おやすみ』





 
10分以上後・・・。
 「英二。ほら英二起きて」
 普通に起きた不二。乱れた布団の下で深く深く寝入っている英二にため息をついた。
 「全く。せっかくの合宿なんだから何で1日くらい早く起きようって思わないのかなあ」



戻る
2005.1.15






 
午前練習1―――

 「ではこれより動体視力を鍛えるためカラーコーン練習を行う。1人
200球で失敗したら交代。なお失敗した者には乾より提供されたこの―――青酢を飲んでもらう」
 『ゔ・・・・・・』
 出されたものを前に呻く一同。この中には酸っぱいもの嫌いでかつてコレを飲まされ倒れた不二も含まれる。
 「では、練習開始だ!」



 そんなわけで練習が行われ、9人中8人が失敗した。なお失敗した者をダイジェストで見ると、河村・海堂・裕太そして不二はそこまで動体視力に優れていなかったため普通に間違え、データマン3名も確率計算などで挑んできたが完全運任せのボール選択に負け、真田はスイングの速さでぎりぎりまで粘ったがやはり見えないものはどうしようもないらしく最後の最後で失敗した。
 全員で青い液体の入った紙コップを手に取り、一斉に口をつける!!
 『ぐげっ・・・・・・!!』
 「あ、おいしい」
 『はあ!?』
 「さ、さすが兄貴・・・」
 「恐るべし不二・・・。1回で青酢をマスターしたというのか・・・!!」
 驚く一同を他所に、不二はこくこくと飲み干していった。
 飲み干し、首を傾げる。
 「みんな、飲まないの?」





 「なるほどなあ。普通に飲むとこうなんのか」
 地獄と化したコートを見やり、珍しくも何のトリックもなく唯一まともな理由として持ち前の動体視力の良さで青酢を免れた佐伯は、手に持っていたものを軽く放り投げた。小さなビンに入っていた、青い色素を。
 配布されていたスポーツドリンクにコレを混ぜ、不二のものとすり替えておいたのだ。普通のコップならば濁りからバレたかもしれないが、白い紙コップに入れたのだ。気づいた者はいないだろう。ちなみにこの色素は店で売られている何の変哲もついでに味も無い着色料。つまり不二が飲んだのはただの青いスポーツドリンクというわけだ。そりゃおいしいだろう。その上不二の異常味覚もとい味覚異常については青学メンバーと裕太はよく知るところ。たとえあんな反応をしたとしてもあっさり納得される。
 「にしても・・・」
 呟く。もう片方の手に紙コップ―――すり替えた本物の青酢を持って。
 「どうしようコレ・・・・・・」





 「んふふふふっ。やってくれますね乾君。さすがです。では次は僕もぜひその案を取り入れ―――」
 まあ何でもいいがそんな感じの呪詛を洩らしつつ、ダメージから回復したらしい観月がコート脇へと歩いていっていた。
 自分の荷物の前で屈む。嫌な汗を拭き、口直しにとストローに口をつけ―――
 「ぐがはあっ!!」
 青酢の連打攻撃により、今度こそ完全に沈黙した。



戻る
2005.1.15






 
午前練習2―――


 榊班のコーチはもちろん榊である。コーチというのは教え子の様子を逐一洩らさず観察し、適切な指導をしなければならない。
 ―――といった事を建前に観察する。
 (ふむ。不二周助か・・・。色白小顔で四肢も締まっているし腰もくびれている。可愛がるには随分いい躰だな)
 いつもの生真面目な顔でそんな不埒な事を考えるのもまた監督特権。
 決めたならさっそく行動。丁度自分の練習を終え汗を拭く不二に近寄ろうとし―――
 「―――すみません榊監督」
 「む? 跡部か。どうした?」
 どこからか現れた跡部に、くるりと不二から背を向けた。
 近寄る。
 「ちょっと監督に相談したい事がありまして」
 「お前は華村班だろう? ならば華村先生にしなさい」
 「ですが・・・、やはり榊監督の方が俺の事をよくわかって下さっていますし・・・・・・」
 微妙な上目遣い。僅かだが拗ねるように口を尖らせる。総じておねだりをしている様子。
 「私でなければ無理だ、と、そうお前は言いたいのか?」
 「はい・・・」
 小さく頷かれ、榊もまた頷き返した。
 「わかった」
 「本当ですか・・・!?」
 「ああ」
 「ありがとうございます!」
 嬉しそうな顔。他の者には決して向けないであろうもの。相談されたという事含め、優越感が沸き起こる。
 「では、他の者は練習を続行しろ」
 『はい!』
 9人の声を背に、榊は跡部を引きつれ物陰へと入り・・・・・・





 2分後。
 「む?」
 「どうした弦一郎」
 「跡部だけが戻ってきた」
 「・・・・・・そのようだな」
 真田の指摘にそちらを向く柳。2人が消えた物陰から現れる1人だけに気付き、返事をした時にはもう真田は次の行動に移っていた。
 「跡部」
 「よお真田。どうした?」
 「それはこちらの台詞だ。榊コーチはどうした? 一緒にいたのだろう?」
 「ああ、榊監督か? なら1人でどっか行っちまったぜ?」
 「1人で? どこかへ?」
 「お前はどこへ行ったか知らないのか? 跡部」
 「さあな」
 肩を竦める跡部。この様子では本当に知らないらしい。
 「そうか。引き止めて悪かったな」
 「いや別に。お互い頑張ろうぜ」
 「ああ」





 1人になり、跡部はくしゃりと頭に手を突っ込んだ。ふっ、と軽く息を吐く。
 「ま、いくら俺だろうとさすがに三途の川の場所は知んねーしなあ」


戻る
2005.1.15






 
午前練習3―――


 (俺は生まれ変わったんだ・・・!! それを今度こそあの人に―――!!)
 固い決意を胸に実際は硬い拳を作りそう誓う切原。誓い、練習を無視して榊班の元へ行こうとして・・・
 「あ、切原く〜ん! もしよかったら俺の練習付き合わない?」
 「千石さん・・・・・・」
 横手からかけられた声に、でもってラケットごと手を振りながら近付いてくる千石に、
 「あ、俺今から用あるんで・・・」
 「ああそう? じゃあ仕方ないか」
 適当に言ったところ、あっさり受け入れられた。ちょっと予想外。
 (何も訊かないのかこの人・・・)
 自分は明らかなサボりだが、まあ千石もあまり真面目に練習をやる部類ではないだろう。だから見逃されたのか・・・などと考えていると。
 千石はさらにあっさり続けてきた。
 「ところで手塚くんがこっち見てるけど。今俺倒すと実力認められたりして試合してもらえちゃったりするかもね」
 「・・・・・・策士っスねアンタ」



 そんなこんなで試合が始まり、
 どごっ!!!
 ―――そんな感じの音で試合は終わりを告げた。





 「いっや〜不幸な事故だったねえ」
 倒れた切原を見下ろし、千石はぽりぽりとこめかみを掻いた。どうやら本当にえげつないテニスは止めたようだが―――だからといって相手もそれをしないなどと思ってはいけない。それならばまず切原自身の対戦相手が彼に向け文句を言うだろう。
 偶然体勢が崩れたところに顔面を狙った・・・もとい顔面へ飛んできた一撃を避けきれず、あえなく切原は地に伏すハメとなった。あるいは赤目モードなら避けられたかもしれないが。
 突付く。全く起きそうにない。
 身を起こし、
 「手塚く〜ん!!」
 「―――何だ? 千石」
 「切原くんが熱中症で倒れたみたいだからどっか涼しいトコつれてっとくね」
 「そうか。頼んだ」





 ・・・・・・なおこの後切原は、真夜中意識を戻し自力で脱出するまで食品倉庫に閉じ込められていた。

戻る
2005.1.1619






 
昼食1―――


 (えっと・・・乾さんと柳さんが真正面同士、隣がそれぞれ海堂と真田さん。隣の列に兄貴と観月さん・・・・・・なんでこの2人が正面同士なんだ? まあいいけど・・・・・・、河村さんは―――ああやっぱ乾さんたちと同じテーブルか。そりゃ誰もあっち行きたくないよな・・・。
  で、俺は〜・・・・・・)
 一応ひととおり検証する裕太。検証し・・・結局出てくるのはため息だった。どこをどうやっても自分の座席は決まりきっていた。兄の隣か、観月の隣か。
 どちらを選んでもあまり大差はなさそうだ。適当に近くにあった観月の隣を選ぼうとして―――
 ぎんっ!!
 射抜くような二対の目に思いっきり睨まれた。もちろん不二と観月の。
 冷や汗が流れる。視線だけながら目は口ほどにものを言う。言いたいことはものすっっっごく!! よくわかった。
 ―――『もちろん僕の隣だよねえ、裕太』
 ―――『んふふふふっ。さあ裕太君、僕の隣を選びなさい』
 ・・・いっそ『隣』のテーブルを選びたくなるのだが、もちろん2人がそれを許してくれるわけはないだろう。
 ぴたりと止まり・・・・・・・・・・・・
 「お〜い裕太君こっちこっち」
 「佐伯さん!!」
 お助けキャラの登場に、裕太は感涙むせび泣いた。―――もちろん表には現さずに。
 不二の隣にいた佐伯。つまり観月・不二・佐伯でLの字を作った状態。必然的に自分が座る席は決まった。観月の隣へと。
 ―――『なんでそっちに行かせたのさサエ!!』
 ―――『ま、仕方ないだろ? ここで揉めてちゃ昼食えないし』
 顔中に不満を乗せる不二を、佐伯はにっこり笑っていなした。さすが幼馴染として長年この兄に付き合ってきただけある。
 さて食事開始。当然のようにギスギスした空気が―――
 ・・・・・・思ったほどは流れなかった。



 「でさ、その時に越前が―――」
 「へ〜。あの越前がねえ」
 「んふふっ。裕太君、どうです? この合宿は」
 「え・・・? そりゃまあいい・・・ですよ?」





 無難な会話を進めながら―――でもってその最中不二の口から出る他人の名を心のブラックリストにねちねち書き込みながら―――佐伯は向かいの2人を見てほくそえんだ。
 嫌味を言おうにも切り出せない観月。これで話していたのが裕太だったらやれブラコンだやれさっさと弟離れしろといくらでも言えるのだが、残念ながら自分と観月の間に何の接点も無い。自分と不二が話したところで『久しぶりに会った幼馴染と楽しく会話』としか変換のされ様がないのだ。なおこれが観月でなく跡部だったならそれこそ「いい加減てめぇらそのブラコンっぷり治せよな」などと嫌味言いたい放題なのだが。
 そして肝心の裕太もまた何も切り出せない状態だ。自分の立場―――ヘタに会話に加われば陰険対決にまき込まれる事はわかっているだろうし、それに自分たち幼馴染が仲良くしている際は不介入という暗黙の了解が出来上がっている。
 (ま、これも一重に景吾のおかげか)
 裕太が加わる度、いや、自分以外の誰かが不二と仲良くする度不機嫌全開となる跡部。わかっていながらそれでも構わず不二に接触出来るほど裕太の神経は図太くなかったようだ。尤も・・・
 (そんなん俺と千石位か)
 肩を竦め、佐伯は不二との会話に打ち興じた。
 (まあ何にしろ、『家族』は大切にしなきゃね。―――『未来の』込みで)





 『ごちそうさまでした〜vv』
 「クッ・・・! この借りはいずれ・・・!!」
 「はあ・・・。何もなく終わった・・・・・・」







 ―――なんだか今回サエが打算まみれですが、たとえ邪魔者であろうと不二とは違う意味で裕太は可愛がっていると思います彼は。

戻る
2005.1.19






 
昼食2―――


 榊班に一歩遅れて食堂に入ってきた元竜崎、現手塚班。さっそく自校の
No.2を見つけ(ついでに他は全て無視し)、手塚は彼の隣に席を取ろうとして―――
 「よお、手塚」
 「跡部か」
 「お前これから昼か?」
 「お前も練習は終わったのか?」
 「なら丁度いい。一緒にメシ食おうぜ」
 妙に噛み合わないようで実はかなりの話術とツーカーぶりを見せつけ、近寄ってきた跡部と昼食を共にする事となった。



 次の日も、
 「よお、手塚」



 その次の日も、
 「よお、手塚」



 そのまた次の日も、
 「よお、手塚」





 「跡部、質問なんだが」
 「あん? 何だ?」
 「お前、他に友人知人の類はいないのか?」
 「どういう意味だ!? つーかてめぇにゃ言われたかねえよ!!」
 どばんと机を叩いて怒鳴る跡部。そのまま立ち去るかと思われたが・・・
 再び腰を下ろし、あまつさえ肘をつき顔を寄せてきた。
 甘い笑顔で、甘い声で、囁く。
 「ンなの、お前といたいからに決まってんだろ? なあ手塚」



 これを境に、さらに跡部は積極的に動き出した。夜などもわざわざ手塚に会いに行き、周りの者に手塚×跡部デキてる説を存分にばら撒きそして・・・・・・





 「ハッ! これで一番邪魔なヤツは消したぜ!」
 「跡部くん勇者〜」
 「周ちゃんを護るためなら汚名のひとつやふたつ被る、か・・・。なんっかお前の事初めて尊敬したよ俺」





 ・・・・・・こんな会話がなされていた事は、もちろんなした当人たちだけの秘密である。







 ―――王技というか帝王技:手塚封じの跡部切捨て大作戦☆ しかし実は一番邪魔なヤツは手塚ではないような気がしてたまらないウチのサイトにおいては・・・。

戻る
2005.1.19






 
午後練習1―――


 「やはりこの班分けは失敗だったかしら?」
 それぞれの練習にいそしむ班員を見ながら、華村はコーチにあるまじき台詞をホザいていた。
 ため息が漏れる。
 「せっかく学校混合で合宿があるっていうから来たのに・・・」
 なんと言うかつまらない。そう・・・
 ・・・・・・この班は見ていて萌えないのだ!!
 「いえ、華はあるのよ確かに。一番の大輪が」
 見やる。現在筋トレマシーンにて細く色っぽく喘ぐ彼。それ自体は大いに結構だ! ぜひともこんな彼の姿は音声込動画つまりはビデオに納めたい。が、
 「駄目なのよそれだけじゃ!!」
 突如髪を掻き乱してわめき出す華村。驚く班員の中で、件の彼こと跡部はそれはそれはものごっつう不審げな半眼を送ってきた。
 今度は心の中で呟く。
 (ホラこの態度! 確かにこの年上にも容赦なさげな切捨てっ振りが彼の持ち味でもあるんだけどね・・・!
  ―――やっぱ子どもは可愛さ第一でしょ!?)
 「みんなトレーニング続けてて」
 「先生は?」
 「ちょっと出かけてくるわ」



 というワケで出てきた華村。とはいっても別に本当に用事があるわけではない。ただいうなれば発作―――ではなく、他のチームの練習も見ておきたかったのだ!!
 歩き出したところで、
 「あれ? 華村コーチ」
 「あら千石君」
 向かいからやってきた、こちらは別の班員である千石に声をかけられた。
 「どーしたんですか?」
 「いえ別に―――」
 言いかけ、はたと気付く。千石といえばラッキー・食わせ者の他に女の子好きとして有名だ。元々の性差からくる好みの決定的な差はあるが、もしかしたら彼だったら自分の気持ちを理解してくれるかもしれない。
 (そうよ。きっとそうよ・・・!!)
 そんな事を考えてしまうほど、現在の華村は溜まっていたらしい。
 「千石君、今は何をやっているの?」
 「ああ、自主トレですよ」
 「じゃあやりながらで構わないから私の話聞いてもらえないかしら?」
 「いいですよ? 何ですか?」



 一通り話をし、さらに
10秒ほど沈黙が続き―――
 「―――ああ、じゃあ丁度いいコがいますよ?」
 「本当に?」
 「そりゃ〜もう! 今回の合宿では跡部くんに並ぶ華の持ち主。しかも跡部くんとは対照的に極めて従順。飼うならぜひこのコvv って感じのコが」
 ―――問題どころ満載の売り文句だったが、華村はさして気にしなかったらしい。目を輝かせ、頷いた。
 「じゃあぜひそのコを紹介して頂戴」
 「いいですよ。じゃあ連絡とっておきますので練習終わってからまた来てくださいよ」
 「わかったわ」





 足元に倒れた華村を見下ろし、千石は薄く笑った。拳を掲げ、呟く。
 「でも残念。そのコ既に売約済みなんですよね」
 視線を戻す。待ち合わせ時刻ぴったり。丁度相手が来たようだ。
 「千石君!」
 「やあ、不二くん」
 「どうしたのさ? 何? 話って」
 「いや〜。大した事じゃないんだけどさ〜」
 へらへら笑い、足先で華村を脇へと追いやる。夕暮れ迫る薄闇の中では、ちょっとした暗がりに放り込んでしまえば目の悪い不二には見えまい。
 肩を抱き、逆方向へ促す。
 「食事までまだあるじゃん? ちょ〜っと話さない? 2人っきりでさ」
 「え・・・? う、うん・・・・・・//」
 耳元で囁けば、それこそ従順に頷いてきて。
 かくて千石は、ひょんな事から不二と2人、ロマンティックタイムを過ごす事となった・・・・・・。



 そして夕食後は―――
 「てめぇ不二と何2人っきりになってやがる!!」
 「え!? ちょ、それはちょっとした理由があって―――!!」
 「千石も隅に置けないなあ周ちゃんと2人っきりになるなんてv
  ―――さってところでここの合宿所さ、裏にニワトリと犬飼ってるらしいけど、目ん球抉られるのとはらわた食い荒らされんのどっちがいい?」
 「ご〜か〜い〜だ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」



 こうして、千石はロマン『ちっく』ではなく純然ロマン(訳:現実ではありえない)溢れる時を過ごす事となった・・・・・・・・・・・・。







 ―――始末されるのは華村のはずが何ゆえ千石!? 結局いつもの展開となるのか!?

戻る
2005.1.192.28






 
午後練習2―――


 午前中のプチ騒動にて榊亡き(爆)榊班では、午後の練習をどうするか悩んでいた。
 「とりあえず、榊コーチを探そう」
 『おう!』
 何となく臨時リーダーとなった真田の言葉に従い、班員はさっそく動き出した。



 さてこちら佐伯。午前中の跡部の来訪を見ており、大体の事情を察した彼は2人が消えていった方向へと向かっていた。
 物陰にて、
 「・・・・・・ふ〜ん」
 まあ予想通りの物件―――実に鮮やかな手並みで暴行を受け今だ昏睡中の榊を見下ろし頷く。深い意味はない。ただの間埋めだ。
 「さって、どうしようかなあ」
 このまま報告してもいいが、とするとすぐに榊は介抱されるだろう。不二に向けられるコイツの視線に気を使いながら練習するのも面倒だ。
 かといって何も言わないのもマズい。散策は終わらず、となれば他のヤツがこちらに来てしまう。
 悩み―――
 「―――ん?」
 泳ぐ目が、ふいに一点で止まった。倒れる榊の脇に落ちていたもの。榊らしく、そこらの文房具店で買ったのではない高級ファイル。恐らく各選手のデータやら練習メニューやらが載っているのだろう。
 ぱらぱらめくる。極秘のデータだろうが誰も見ていないのだ。そんな事は構いはしない。
 めくって・・・
 「ああ、あった」
 さっそく練習メニューを見つけ、佐伯は嬉しそうに笑った。これからすぐという事でだろう。割と細かく書かれていた。
 「えっと・・・
  『ダブルス練習。タイプの違う者同士を掛け合わせる事で、新たな一面を見つける。観月・海堂対河村・不二』・・・・・・」
 読み上げ、
 佐伯はぽんと手を叩いた。もちろんファイルを持つ手では無理なので、節でファイルを弾いた。
 ファイルに挟まれていたペンを取り出し、几帳面な榊の字をそのまま真似る。消すような愚かな真似はしない。明らかに修正したと怪しまれる。
 狙うは『不二』の後の空白部分・・・・・・・・・・・・。





 その後、何の問題もなく練習は行われた。佐伯が榊から預かってきたというファイルに書かれていたメニューを元に、ダブルスの練習試合を行う。選手は観月と海堂。そして河村と―――『不二』裕太。
 全くダブルスとして成り立っていない2組を見て、
 「榊コーチも、随分変わった人たち選んだねえ・・・・・・」
 「まあ、変わってるから『新たな一面』が見つかんじゃん?」
 首を傾げる不二に、佐伯は笑ってそう答えた。







 ―――この2組のダブルス対決は実際あったんですよね。もちろん全く合っていませんでしたが。一応全員に一度はテニスをさせようという試みだったのでしょうが、ついついこんな裏話を考えてみたくなるものです・・・・・・。

戻る
2005.2.28






 
午後練習3―――


 忍足は現在悩んでいた。
 (せっかくのチャンスやろ? なして班も部屋も別々になってもうたんや?)
 ―――いや失礼。これは厳密には悩みではなくただの不満だった。
 悩みはこの次に来る。
 (あ〜どないしたら不二と接近出来るんやろ? 食事は班ごとやし、風呂は自由としても他のヤツも誘いかけるやろうしなあ。寝る前部屋に―――っちゅーても口実があらんしなあ)
 自分にしては随分後ろ向きな考え方。しかしながらこれには深い事情がある。忍足が前向きに攻められない、深い深い深〜い事情が。
 (ヘタに近付きおったらまったアイツらにな〜に言われるか)
 アイツら―――もちろん言うまでもなくかの3人である。さすがにここまでやれば、なおかつそれが幼い頃からずっと続いていれば、そろそろこの『事故』の裏に気づく者も出てくるわけだ。『クセ者』となれば尚更。
 ポイントはここだった。3人に反論(という名の攻撃)をさせずに不二に近付く方法。これが見つからなければ合宿中一切手が出せない。
 (それやったら勿体無いやろ? 何のためにこない合宿来おった思うんねん。しかも岳人遠ざけてまで)
 宍戸と鳳のおかげで日々一緒にいるイメージの強い氷帝ダブルス。実際岳人はよく自分に懐いている。が、
 (アイツがおったら班も部屋も一緒にされておったやろ? せやから置いてきたっちゅーんに何やのこの待遇?)
 全くもって報われないものだ。ただしこの程度で報われるのならばそれこそ班も部屋も別にされた跡部と千石―――による被害者らがまず最初に文句を言うだろうが。
 悩み込み(というほど悩んでもいないが)―――
 忍足はぽんと手を叩いた。こちらは普通に拳を手のひらに叩きつけた。
 「せや」





 「―――というわけで、今日は他の班とのダブルス合同練習を行います。まずは先に許可の取れた榊先生の班から」
 華村の指示を聞き、横目でちらりと睨みつける跡部。睨みつけられ、クッと笑ってみせる忍足。
 榊班のいるコートへと向かいながら、
 「てめぇ、どういうつもりだ?」
 「ん? 何の事かいな?」
 「とぼけんなよ。てめぇが華村焚き付けたんだろ?」
 「ひっどいわ〜跡部。俺がそない男に見えるんか?」
 「そういう男にしか見えねえ」
 「酷ッ!!」
 「どーせアレだろ? 『このメンバーにはダブルス強い選手おりませんやん。せやけど大会じゃ必要でっしゃろ? 対策練っとく必要あるんとちゃいます? けど班ごとに分かれとったら組み合わせ限られてまう。たまには他の班とも組み合わせてみるんも―――ええんとちゃいまっか?』とか言ったんじゃねえのか?」
 「お前・・・・・・外国語上手い割に大阪弁ヘッタやなあ。違うモン混じっとったで?」
 「ほっとけ。
  んじゃ標準語に戻すが、でもってさらに言ったんじゃねえのか? 『丁度跡部と真田が選ばれたんじゃ。例えばこの2人組ませてみる・・・っちゅーんも面白かとね?』とか」
 「戻っとらん戻っとらん。ますます離れとるわ。
  ま、それはそうとさすが跡部。完璧な読みやな」
 「フン。当然だろ?
  ―――だがいいのか? だからっつっててめぇと不二が組める保障はどこにもねえぞ?」
 「わざわざ心配してくれるん? そらおおきに。せやけど心配いらんよ? 俺と不二言うたらお互い『天才』やし、絶対合う思わん?」
 調子に乗り軽く鼻歌を口ずさむ忍足は気付かなかった。隣で聞いていた跡部もまた楽しそうにしていた事に。
 「へえ・・・・・・」





 そして・・・・・・
 「ではさっそく班混合ダブルスを行う。まず私の班より佐伯と不二、それに華村班より跡部と忍足」
 『はい』
 榊に呼ばれ、4人が前に出る。そして―――
 「これより跡部と不二対忍足と佐伯の試合を行う。4人は準備をしろ」
 「はあ!?」
 予想とあまりにかけ離れたオーダーに、忍足が素っ頓狂な声を上げた。
 「―――む?」
 何か―――と榊が問うより早く。
 跡部が忍足を指差し高笑いをしだした。
 「は〜っはっはっはっはっは!! 甘いぜ忍足!! ダブルスっつーのはタイプの違う同士が組んで互いにカバーし合うモンだ! それは他の誰よりてめぇと岳人が証明してんだよ!! 『てめぇに合うのは速攻型のヤツだ』ってな!! 何をどう間違えようがカウンターパンチャー同士のてめぇと不二は組み様がねえんだよ!!」
 「くっ・・・!! せやったらお前はどうやの跡部!! オールラウンダーのお前やって不二と組む資格あらへんやん!!」
 「おいおい忍足。てめぇは普段何見てんだ? 俺が超攻撃型なのはてめぇだってよく知ってんだろ? だったらじっくり攻めるタイプのヤツと組み合わせようと考えるのは当然じゃねえか」
 「せ、せやったらそれこそじっくりの典型で海堂ととか・・・!!」
 「我が強い同士で組むダブルスほどロクなモンになんねえ。残念だったなあ忍足。榊監督が合同練習になんでこんなに即座に
OK出したと思ってんだ? 自分の班でやって大失敗だったからだそうだぜ?
  けどよかったなあ。榊班にもお前と合うヤツがいて」
 「ちょ、ちょい待ちい!! お前と不二はまだ百歩譲って納得するとしてな、なして俺と佐伯が組まなあかんのや!? それこそ誰がどう見ても失敗やろ!?」
 「何言ってやがる? てめぇに合うヤツっつったら超攻撃型だろ? 青学戦じゃソイツ、菊丸と互角に張り合ってたじゃねえか。いいペアになるんじゃねえの? それにそれこそソイツは初日に不二と何の問題もなくダブルスやってたからなあ」
 「我・・・我の強さの問題はどこいったんや!?」
 「お前ら2人とも『特に問題のない聞き分けのいい子』だろ? 世間一般じゃ。なあ?」
 「ぐ・・・・・・!! こないなトコでいい子ちゃんキャラは仇になりおるんか・・・!!」
 「溺れるほどの策でもなかったな。あばよクセ者。
  んじゃ行こうぜ不二」
 「うん。よろしくね、跡部」
 仲良く肩を組み(肩を抱き寄せ)コートに入る2人。かむば〜っく!! とばかりに手を伸ばす忍足へ・・・
 がしっ。
 異常な寒気が背中を襲う。ぎりぎりと押さえつけられた肩側に振り向けば、そこにいたのはもちろん今回臨時ペアとなったかの男で。
 それは、にっこりと笑顔でこう言った。
 「じゃ、よろしくな忍足v」
 「よ、よろしゅう・・・・・・」





 なお件の試合の結果は相方を無視した跡部と佐伯のダブルノックアウト。心配し介抱する不二を他所にこれでやっと・・・と期待した忍足は、次いでやってきた手塚班の、なぜか今度は英二と組まされた。結果このペアが本当に本番で使われる事になったのだが、
 どうしても忍足には1つ納得がいかない事があった。
 「なして俺ら、不二と千石チームに負けたんにペアになったんやろ・・・・・・?」
 答えは実に簡単だった。@
KO負けであった事。A2人をKOに陥れた千石は次いで臨時に組まれた跡部・佐伯ペアに逆にKOされた事。
 一緒に守っているクセに誰の出し抜けも許さないかの3人。おかげで選抜レギュラーの中で忍足と並んでダブルス要因のはずの不二は、オーダーでは最初にダブルスから外されたのだった・・・・・・。







 ―――ラストに捻りが欠片もない理由は、あのメンバーであえて不二をシングルスに、跡部をダブルスに持っていった理由付けがやりたかったからです。ただし既に理由その2ですが。

戻る
2005.2.283.1






 
午後最終練習―――


 「よし! 全員今の練習をあと1セットで終わりにする!!」
 手塚の号令に、全員の熱気が一気に上がった。練習が終われば食事であり風呂であり就寝である。それには
班は関係ない(ここが重要ポイント)。
 (班は誰の陰謀でか分かれたけど・・・!!)
 (これでやっと不二と・・・・・・!!)
 (ここのチャンスは逃せないっしょ・・・・・・!!!!!!)
 意気込む彼ら。しかし、ここで彼らは重大な事態を見落としていた。1つはこの班のコーチが竜崎から手塚に替わった事。生真面目一本やりの彼ならば、たとえ練習時間が終わろうとノルマが達成できていなかったりすればきっちり残す。そしてもう1つ・・・・・・





 「よっしあと1セット・・・!!」
 「あ、菊丸くん! 不二くんがこっち見てる!」
 「えうっそ!? お〜い不二〜!!」
 すかっ!
 「菊丸!! 何を余所見している!? グラウンド
10周!! 終わった後もう1セット追加!!」
 「えええええええ!!!???」



 「一気に決める―――!!」
 「ああ切原くん。あんま『無茶』はしない方がいいよ? ここのコート榊班からよく見えるから」
 「え、な、ちょ、待っ・・・!!」
 どごっ!!
 「〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
 「切原! 模擬練習であろうと試合中に気を抜くとは何事だ!? グラウンド
30周!! 気合を入れなおして来い!!」
 「・・・・・・今なんか、真田副部長の幻聴がしたの俺の気のせいっスか・・・?」
 「そのようなものが聞こえるのがたるんどる証拠!! 
20周追加!!」
 「・・・・・・・・・・・・お願いですから普通に戻ってください手塚さん」



 「へへへっ。あと1セット決めちまえばいいだけっスね? 楽なモンっスよ」
 「その調子だよ桃! 頑張って!」
 「ういっス!! 頑張るっスよ不二先輩!!」
 「桃城!! 練習中に騒ぐな!! グラウンド
20周!!」
 「え!? い、今不二先輩が―――!!」
 「不二!? 不二などどこにいる!? アイツも練習中だろうが嘘をつくな!! 
50周追加!!」
 「公私混同っスよ〜!!」
 「さらに―――!!」
 「行ってきま〜す!!」



 「―――へへっ。不二先輩は渡さないっスよ桃先輩・・・・・・」
 「うっわ〜スゴいね〜越前くん! 今の不二くんそっくりだったよ〜!!」
 「当然っスよめちゃくちゃ練習したんスから!」
 「ねえねえもう1回やってみてよ!! 今度は会話っぽくさ」
 「いいっスよ。
  『まだまだだね』
  『僕に勝つのは、まだ早いよ』
  ―――まあこんなところで」
 「越前!! お前も何をふざけている!? グラウンド
30周だ!!」
 「え゙え゙〜!?」
 「口答えする気か!?」
 「行ってきま〜す!!
  ―――アンタまさか・・・!?」
 「ええ〜? 何の事だろ?
  ホラ早くしないと手塚くんもっと怒るよ?」
 「くっ・・・!!
  この借りは必ず返すっスよ・・・・・・!?」
 「ばいば〜い越前くん♪」



 「全く。何をみんなふざけてんだ。俺はあんなヤツらとは違うからな・・・!」
 「と〜か言っちゃってv 宍戸くんも早く終わらせて不二くんに会いたいんでしょvv も〜カッコつけちゃってvv コノコノ〜vv」
 「な//!! お、俺がなんで不二と―――//!!」
 「硬派なんだから〜vv カッコい〜vv」
 「おい千石! あんまフザけた事抜かしてると―――!!」
 「宍戸! 練習中に揉め事を起こすな! グラウンド
20周!!」
 「おいちょっと待て手塚!! だったらむしろ千石の方が―――!!」
 「千石がどうした?」
 「どうしたもこうしたも見てみろよ!!」
 「ん?」
 「あ〜練習大変だな〜。でも後1セット。がんばろ〜」
 「・・・・・・普通にやっているようだが」
 「このヤロ・・・・・・!!」
 「揉め事を起こした挙句に他人に責任を押し付けるとは。失望したぞ宍戸」
 「手塚ちょっと待て!! 俺の話を―――!!」
 「これ以上何も言うな。少しでも罪悪感を感じるならばさらに
30周走って来い」
 「千石のバカヤロ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」



 「宍戸さんまであんな失態を・・・!! こうなったら俺1人でもやり通しますよ・・・・・・!!」
 「うん凄いなあ鳳くんは。ちゃんと真面目にやるんだね」
 「当たり前ですよ。何のための合宿なんですか」
 「うんうん。そんな君の事をかっこいいって思ってきっと不二くんも見に来るんだねえ」
 「な、ふ、不二さんが・・・・//!?
  ―――って俺は騙されませんよ?」
 「騙すって人聞き悪いなあ。そ〜んな事ないって」
 「そうやってミス誘って練習終わらせない気でしょ?」
 「俺ってそんなに信用ない?」
 「ありません」
 「んじゃ〜残念だなあ。せっかく不二くんそこで応援してるのに」
 「え・・・//? ・・・・・・って・・・だから! 俺はそんな事には―――!!」
 「あ、こっちに手振ってる。お〜い不二く〜ん!!」
 「お、俺も!! ・・・・・・なんてやりませんよ? やりたかったら千石さん1人でやってくださいね」
 「ああそう? なら別にいいけど」
 「(勝った・・・!!)」
 「―――ところで鳳くん。君さっきっから全然決まってないよ?」
 「鳳! ミスが多いぞ! 3セット追加!!」
 「そ、そんな〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」



 「やれやれ。みんな何をやっているのか」
 「ああ探したよ梶本くん」
 「何ですか? 千石君」
 「いや〜厳密には俺じゃないんだけどさ、ちょっと今いい?」
 「今? 練習中でしょう?」
 「でもまあほんのちょっとなんだけど。榊班の不二くんがさ、何か君に相談したい事があるんだそうだよ?」
 「不二君が? ですがそれこそ練習中では?」
 「やだなあ梶本くんってばv そんな事不二くんだってわかってるってv」
 「ならなおの事―――」
 「その練習中に呼び出すんだよ? 他の人に聞かれたくない事なんじゃないの?」
 「ま、まあそれも一理ありますが」
 「しかもコーチに怒られんの覚悟でさ。コレそーとーな事じゃない?」
 「確かに・・・・・・//」
 「あ〜ちょっと顔赤いよ〜? さては何か心当たりありだな〜?」
 「そ、自分はそんな事―――////!!」
 「まあまあそんな堅くならずにv 手塚くんには俺から言っておくからさvv」
 「で、では失礼して・・・//」



 「お〜い手塚く〜ん!」
 「何だ千石。練習は―――」
 「そんな事より大変! 梶本くんが練習サボってどっか行っちゃった!!」
 「何!? 梶本が!?」
 「なんかちょっと浮かれてたから、もしかしたら逢引とかしてんのかもよ?」
 「梶本・・・。真面目なヤツだと思っていたがまさか神聖なる合宿中に逢引など・・・・・・!!」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「おのれ許さん!! ヤツは見つけ次第グラウンド
100周だ!!」
 「・・・・・・・・・・・・頑張って」



 「―――というワケで手塚くんいなくなっちゃったんだよ」
 「は〜あ。手塚も何やってんだか」
 「でもさあ、まだ練習終わってないじゃん? 今目ぇ離したらみんなどっか行っちゃうと思わない?」
 「そ、そんな事はないと思うけど・・・・・・。俺はみんなを信じるぞ?」
 「いや練習中は別にそれでいいと思うんだけどさ、とりあえず終わった後用具入れは鍵かけとかなきゃマズいっしょ」
 「確かにな。それに日誌とかきっちりつけなきゃなんないってのに・・・」
 「だからさ大石くん。君手塚くんの代わりにやってあげたら?」
 「まあ副部長だし。その辺りは毎日やってるからいいか。
  ところで千石、お前は?」
 「俺? 練習終わったから先戻らさせてもらうよ」
 「ああ、お疲れ」
 「みんなに頑張ってって伝えといてね」
 「わかったよ」
 「それじゃ」





 そして・・・
 「―――だってさ」
 『千石ううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!』







 ―――この班、全員がノリ良さそうでいいですね(梶本もかよ・・・?)。以上。他の班だとやりにくいのかな?芸当でした。あ、でもサエで榊班ならやりやすいか。問題は跡部で華村班・・・・・・。

戻る
2005.3.1






 
食前風呂―――


 「不二先輩は綺麗好きだから、飯の前に絶対風呂に入るはず、と・・・・・・」
 と期待に胸膨らませ風呂に入ってきたのはご存知青学期待のルーキー越前リョーマ。勝負勘に優れ、ついでに周りに鈍感な彼は他者の期待どこ吹く風と、さっそく中学テニス界のマドンナこと不二周助に接触する事に成功した。が、
 ここにも障害が1つ。
 「よっ、越前」
 「佐伯さん・・・・・・」
 シャワーを浴びていた不二に目を奪われていたリョーマ。湯船からかけられた声に、一気に現実へと引き戻された。
 「アンタも風呂っスか、不二先輩と
 「奇遇だなあ」
 しれっとやり過ごされる。肯定らしい。
 (つまり、この人先追い出さないとダメ、と)
 勝機がないわけではない。こういう大浴場ではマナーとして体を洗ってから湯船に浸かる。佐伯がこの辺りを知らなかったら大爆笑だが、とりあえず合宿初日、知らなかったらしい英二と切原をなぜか知っていた跡部が怒鳴りつけるという珍事件が起こったおかげで、話と共にマナーは一気に広がっていった。まさか佐伯がコレを耳に挟んでいない筈はないだろう。
 「あ、越前」
 「ども」
 挨拶もそこそこに急いで髪顔体を洗う。風呂にざばりと入れば佐伯は今だにそこにいて。
 「早いな〜越前。さすが風呂好き」
 「誰に聞いたんスか?」
 「不二に」
 これまたさらりと言われる。へ〜と相槌を打ちながら―――リョーマはお湯の設定温度を1度上げた。
 (もうけっこー中いんでしょ? さっさと出ないと危ないんじゃないの?)
 「あ〜やっぱ大っきい風呂っていいよな〜」
 「・・・そっスね」
 頷きながら、さらに1度。
 (ほら早く出なよ)
 また1度。
 「越前、お前も体伸ばしたら? 凝り固まってんだろ?」
 「んじゃあ・・・」
 広げつつ、1度。
 のんびりとして、1度。
 タオルで風船を作って、1度。
 絞って頭に乗せ、1度。
 ―――現在
45度。
 (だから早く出ろよ・・・!!)
 いい加減こちらも熱い。ヘタをするとこちらが先にのぼせてしまいそうだ。
 「あ〜気持ちいいな〜」
 (はあ!!??)
 信じられない台詞に耳を疑い―――そちらを見、リョーマはにやりと笑った。佐伯も相当に辛いらしい。強がりながら、僅かに息が上がっている。
 (よし! このまま行けば・・・!!)
 ダメ押しにと、一気に2度上げる。元は白い佐伯の顔が、相当に赤らんできた。
 (これで俺の勝ち・・・!!!!)
 喜んだ・・・・・・ところで。
 「―――じゃあ僕も洗い終わったし、お風呂入ろ」
 (げっ・・・!!)
 一気に血の気が引く。現在水温
47度。さすがに変えてすぐにそこまで熱くはならないだろうが、それでも普通の風呂より遥かに熱い。
 一方不二。暑さには弱いらしい。前回青学の短期合宿にて共に風呂に入ったが―――他のメンバーが彼と入りたがらない理由がよくわかった。めたくそに寒かった。風呂から出て震えたのはあれが初めてだった。
 不二の手が――――――湯に触れる。
 「待―――!!」
 「熱っ!!
  ―――よく2人ともこんなお風呂に入れるね。凄いなあ。僕は先に上がるから、2人とものんびりしててね」
 「待ってください先ぱ―――!!」
 「じゃあ」
 ぴしゃん
 無常にも閉められた扉。じっと見つめるリョーマの背後で、
 「お疲れさん」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」







 ―――リョーマとサエ。この2人というとどうしてもお風呂対決をやらせたくなる私でした。

戻る
2005.3.1







 跡部・佐伯・千石の3人が手を取り合って不二を守る話というリクエストがアンケートにてきたもので、さっそくやってみました・・・・・・って個別撃破じゃん。そして千石さんが殴られない代わりに他の人がエライ割食ってます。やはり駄目なのか!? 誰かを犠牲にしないと!!
 ・・・なおこの話、不二の『お相手』が存在する限り続きそうです。むしろ『完全滅殺されるまで』ですか?
 そういえばスカベンジャー。『掃除屋』という意味で白血球の中でもマクロファージなど貧食細胞を指します。あるモンは何でも喰うぞ!という感じで。

2005.1.15