「ほんまにええの?」
「まあ、なんか
10月誕生日のヤツらに回されるみてえだしな」



渋る跡部(理由は問うなかれ)から忍足は、『跡部様クローン幼少のみぎり
ver』を受け取った。





1015―――イイ子
                     〜
10月誕生祭その4:忍足〜








 「ヘンな事やんじゃねーぞ?」
 「わーっとるわーっとる」
 「・・・ホントーにか?」
 「ほんまほんま。
  何? 跡部。俺が何やる思とるん?」
 「そりゃ・・・・・・
  ――――――言えっか//!!」
 真っ赤な顔で怒り出す跡部に心の中で舌を打ち、忍足は笑顔のまま手を振った。
 「まー心配すんなや。一晩でそんな出来るワケあらへんやろ?」
 「心の傷は一晩で充分つくだろーが」
 「ほんなら・・・・・・」
 「そーだな。てめぇに貸すのは止めて―――」
 「そないな事言うとらんよ!? めっちゃ楽しみやったんよ景吾と暮らせんの〜♪」
 「・・・・・・一晩だけだからな」
 「わーっとるわーっとる」
 尚も渋る跡部を何とか帰し(もちろんチビ景吾は置いていかせ)、
 「さ、仲良うしよな〜景吾vv」
 忍足は、チビ景吾の前にしゃがみにっこり笑った。







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 「なあ、景吾。俺今日誕生日なんよ」
 「そりゃ知ってる」
 「さよか? せやったら―――」
 「ちゃんと奉仕しろよ俺様に」
 「・・・・・・なん?」
 「だから、誕生日だろ?」
 「そやけど・・・・・・それでなして奉仕?」
 問う忍足に、
 チビ景吾は疑い0%の頷きで断言した。





 「誕生日ってのは、いつも以上に奉仕する日なんだろ?」





 「・・・・・・誰から聞いたん? ンな事」
 「跡部が言ってた」
 「・・・・・・。そら納得やな」
 日々偉ぶっているようで周りに尽くす我らが跡部様。誕生日となればより一層気を使う事になるんだろう。
 それでもそれを嫌そうに言わない―――むしろ嬉しそうだ―――チビ景吾に苦笑が洩れる。
 (ま、世話好き根性は生まれつきみたいやしな)
 彼と知り合ったのは3歳、保育園の時からだが、3つ子の魂百までを地で行くらしく、その時から現在で変わった事といえば、からかいに対して少しだけ耐性がついた事位か。まあ・・・
 (アレだけ毎日濃ゆいメンバーに囲まれとるんやったら当たり前やろうけどな・・・)
 つまりで思う。このチビ景吾はそれらの耐性がまだついていない。
 忍足は、にんまりと笑った。
 言う。
 「せやったら奉仕せななー。
  景吾様〜。さっそく何しはります〜?」
 「そうだな・・・。
  もう夜も遅いし、風呂でも入るか」
 「さよか〜? ほんなら俺は景吾様のお背中でも―――」
 言いかけた忍足は、なぜかいきなり襟首を掴まれた。
 引き寄せられる。目の前にはチビ景吾。
 キスでもしそうな至近距離で、
 チビ景吾はそれはそれは綺麗に微笑んだ。





 「風呂入ってきやがったらぶっ殺すからなvv」





 「ちょ、ちょお待ちい景吾。自分今んドコで覚えたん?」
 非常に何か見覚えのある笑顔と言葉。しかしながら跡部はこのような、見る者を恐怖のどん底に突き落とすような方法は取らない。彼なら普通に睨め上げドスの聞いた声で脅すはずだ。
 (これは・・・・・・まさか・・・・・・)
 嫌な予感にかられる忍足。その予感は―――
 ―――もちろん現実のものとなった。





 「佐伯に教わった」





 「さいですか・・・・・・」
 (1日で染まりきっとるやん景吾・・・・・・)
 あれだけ心配した跡部にはとっても悪いと思うが・・・
 ・・・・・・チビの方が余程世の中に順応しているような気がしてたまらない。まるで仕組まれたかのような佐伯の誕生日の存在に、忍足はただただ挫けるしかなかった。
 (もしかして、跡部が俺に貸したんはそういう理由でか・・・!!)
 この景吾なら大丈夫だと、確信を持ったからこそ貸す事を了承したのかもしれない。
 崩れ落ちる。と・・・
 「そうそう忍足、





  ―――誕生日おめでとよ」





 そしてほっぺにキスが・・・・・・
 ・・・・・・もちろん振っては来なかった。
 ちゅv
 頬に当てられたクマのぬいぐるみ。最初からオプションにつけられていた―――というかそれによりチビ景吾をラッピングしていた―――あのクマである。しっかり持ってきていたようだ。
 だばだばと目の幅涙を流し、
 「・・・・・・ああ。ありがとな〜景吾」
 「よしよし。これでノルマクリアだな」
 「ノルマ?」
 「ああ。これだけやったら後は何もやんなくていいしやらせる必要もねえって佐伯が言っててな」
 (そっちかいな狙いは・・・・・・!!)
 本当に、チビ景吾はよく育てられたようだ。
 風呂場に行った景吾を見送り、忍足は携帯に手を伸ばした。呼び出す、番号を聞くだけ聞き使った事のない番号を。
 《プリッ。こちら仁王》
 「仁王か。忍足やけどな」
 《誕生日めでたいのう》
 「そらありがとな。お前に祝われるとは思わんかったわ。
  そんで本題やけどな―――」





 《跡部のクローンならもう造れん。材料は全部使ってしもた》





 先回りして絶望に叩き落されてしまった。
 「・・・・・・・・・・・・さよか」
 《他に用事ないんか?》
 「それだけやなあ」
 《やったら切るとね。今新作造りに忙しい》
 「新作!? そん材料で跡部造れるんやないの!?」
 《・・・・・・・・・・・・。
  もう遺伝子組み込んでしもた》
 「今ん沈黙なんやの!? 造れるんとちゃうの!?」
 《1日あったらな。
  残念やのう忍足。朝言われちょったら出来たんに》
 「せやったら今から―――!!」
 《出来たら明日になるじゃろ。そしたらお前に渡す理由ないでっしゃろ》
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 《残念やのう忍足。諦めんしゃい佐伯色の跡部で》
 「・・・。
  ・・・・・・・・・・・・せやな」
 電話を切り、
 忍足は深い深いため息をついた。
 ボヤく。
 「何やの俺ん誕生日・・・・・・?」







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 次の日。
 「何もしなかったな忍足?」
 「何も出来んようなっとったやないか・・・・・・」
 「よしよし。俺様の教育の成果だな」
 決して『跡部の』ではないと思う。しかしながら、
 (・・・初日佐伯から取り上げんかったんは、今後の事見通してやったんやろか・・・?)
 だとしたら、意外と跡部の成した業かもしれない。
 「じゃあな忍足」
 「おおきに〜」
 手を振るチビ景吾にこちらも手を振り、
 忍足はその手―――どころか両手を跡部の肩に乗せた。
 「何だよ?」
 「1つだけ言わしてえな」
 「・・・何を?」
 訝る跡部に、
 がばと抱きつき。





 「佐伯色に染まらんてくれてありがとな!!」
 「誰がンな色に染まるか離れやがれ!!」
 ゴッ・・・!!





 脳天に鉄拳を喰らいながら、
 それでもあのチビ景吾よりマシだと思う忍足であった・・・・・・。



―――チビちゃん育成おめでとうvv










 滑り込みにて忍足誕。実は初日のサエ誕話後、すぐに思いついたのがこっちだったり。うみゅ。教育の成果が現れております。きっと佐伯の《景吾育成日記》
15日目にはその辺りの事が書かれるのでしょう。意外と実践のため送り込まれた!?
 チビ景吾成長の行方を書くためで全然忍足を祝えていないような気もしますが、その辺りは軽くスルーして〆は、


忍足、お誕生日おめでとう?

2005.10.15