テニプリパロディ略してパロプリ劇場
―――スリップスリップ千石次第!―――
突発ラスト予想!―――ラスト
ヒストローム値が、0.1になる―――。
それに先駆け、跡部は21世紀に送り届けられた。
「・・・何でだ?」
「ホラ、連れてった以上帰りまで責任持たないとな」
「そういう台詞はデート中の女かさもなきゃガキに言え」
「ガキだろ?」
「・・・・・・っ!」
佐伯に指差され、跡部は詰まるしかなかった。確かにたかが14、中学生の自分。仕事を持ち自分で生き方を決めている彼らから見れば、さぞかし子どもだろう。
「あーはいはいそーだな。ありがとよ」
分が悪くなったのでさっさと下りる。下ろされたのは、佐伯と出会ったのと同じ通り。
スライド式の扉を開け、外へ降り。
「ああ景吾ちょっと待て」
「あん?」
振り向くなり、
佐伯にキスをされた。
ふっ、と離れる。
優しい笑みを浮かべ、
「今回は、騙してごめんな。独りでも頑張るお前、カッコ良かったよ。
俺がこの時代に生きてたら、
―――好きになってたかもな、お前の事」
「佐伯・・・・・・」
「ちょっと待てよ佐伯ンじゃ俺は〜〜〜〜〜〜!!!???」
「じゃあな景吾」
「ああ」
「くれぐれも、ヘンなヤツには引っかかるなよ? 今度は助けに行けないんだからな?」
「わーってるっての。
んじゃさっさと行け。てめぇらも今度は上手くやれよ?」
「ああ。そうするよ」
「だから俺の立場は〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!?????」
喚く1名をそのままに、
時元移動機は、跡部を残し消えていった。
・ ・ ・ ・ ・
消えて少し。
人通りのない路地で空を見上げ待つ。
一瞬意識が遠のき―――
―――目覚めてやはりいるのは同じところだった。少しだけ立ち位置と角度が違う。
「これで、歴史は戻った、ってか」
持っていたものを見下ろす。『エリザベーテ』を繋いでいた手綱。不二にも言われた通り帰る前に放し、何となく捨てずに持ってきてしまったもの。
巻かれた着物の切れ端含め、それそのものは今この手の中に存在している。
そしてそれを握る手には、
・・・もう傷はなかった。戦国時代でついた傷は。
だが・・・
目を閉じ、思い出す。そこであった様々な事を。
事実はなくなっても思いはなくならない。裏切りも、絶望も、涙も。それらを乗り越えまだ残っていた、友情も、希望も。
全てを内包し、記憶という形で残っている。この頭に、この胸に。
――――――この体に。
最初に移動する時は横抱きに抱かれ、坂本城では背中に庇われ空でデート。そしてさっきは・・・・・・。
―――『くれぐれも、ヘンなヤツには引っかかるなよ? 今度は助けに行けないんだからな?』
「『今度は助けに行けない』ねえ・・・。
ま、大丈夫だろ。なあ?」
くつくつ笑う。そういえばあの『佐伯』には言っていなかった。自分が誰に引っかかったのかを。
(そういや・・・・・・)
唇に指を当てる。言葉の前にされたキス。
思う。
「これも浮気になんのか・・・・・・?」
・ ・ ・ ・ ・
「ただいま」
「おかえり〜」
のんびりと戸を開けると、中から声が聞こえた。
視線を下げる。玄関には家の誰のものでもない運動靴が。
上げる。出迎えに来たのはつい先程まで会っていた相手だった。
「よお佐伯。どーしたよ?」
問い掛ける跡部に、佐伯―――自分と同じ時代に生きる幼馴染は、ん? と首を傾げてきた。
「青学と今度練習試合があってな。その打ち合わせ」
「不二んトコ行かねーのかそのまま?」
「まだ向こう部活だからね。それに―――
―――やっぱせっかく来たんだから恋人には会いに行かないとな」
さらっと言われる。こういった台詞を恥ずかしげもなく言うのは、いつの時代でもコイツの特性らしい。
「んじゃリョーガは?」
「うわさらっと無視か。
アイツなら越前からかって一緒に走らさせられてたから置いてきた」
「・・・まあいいけどな」
戦国時代には殺し殺されしていた奴らが、今はこうして一緒に怒られ見捨てられ。そういえば戦国時代では、手塚は越前兄弟の家来だったか。
(平和なモンだな。今ってのは・・・・・・)
争いも―――まあいろいろあるが、それでも友人同士で殺し合ったりはしない。上下関係もなく、一緒に笑い合える。
「―――どうした? 景吾」
「あん?」
呼ばれ、跡部は意識を現実に戻した。
「何がだ?」
気付かないうちに笑ったりしていただろうか。
恥ずかしさを誤魔化し、努めて平静に応対し。
「顔が赤い」
「・・・・・・」
・・・全て無駄だったらしいので首をコケさせた。
が、
佐伯が続けたのは、そんな跡部の努力とかその辺りとは全く関係ない事だった。
「何だよ? 他のヤツとでも浮気してきた?」
笑いながら問う。だがその目には冷たいものが混じっていた。
察したのだろう。何かがあったのだと。
彼の怒りと嫉妬を理解し、
跡部はクッと笑った。
むっとする佐伯の首に手を絡め顔を近付け、
囁く。
「ちっと未来のお前にな、惚れてきちまったんだよ」
もちろん佐伯にこの意味はわかりはしない。
わかりはしないが・・・・・・
「お?」
きつく抱き締められ、耳元に囁かれる。
「未来の俺でもダメ。
今のお前は、今の俺のモンなんだから」
「バーカ。どんだけの独占欲だよ?」
「ん? これだけ」
くつくつ笑う跡部を、佐伯は全く放さないまま顔中にキスを降らせた。
最後に唇に降らせる。
何度も触れ合わせながら、跡部の頭には未来の佐伯の言葉が蘇った。
―――『俺がこの時代に生きてたら、
―――好きになってたかもな、お前の事』
(つまり、最低限あと10年くらいは平気だってか)
思い出す。未来の佐伯。今より大人の佐伯。
基本はそのままだったが、自分よりも背が伸び、外からも中からも包み込んでくれるようだった。
(ま、俺も充分大丈夫だぜ?)
口を放し、真正面にて再び囁く。
「んじゃ、ちゃんとてめぇのモンにしろよ? 俺の永遠」
「もちろん」
―――突発ラスト予想! 終
おまけ―――
ちなみにこちらは25世紀。
佐伯の進言もあり、リョーガ・切原は共にクビを免れた。代わりに減給処分となった。2人合わせて1人分の給料となったらしい。なるほど1人切るのと同じか。
ただでさえ安月給がますます安くなった。嘆くリョーガには、
更なる試練が待ち受けていた。
・ ・ ・ ・ ・
「という事で、良かったなあリョーガ。俺のおかげでクビになったり挙句殺されたりしないで。
という事で、
――――――もちろんこの礼っていうのはしてくれるんだよなあ? 例えば俺のおかげで稼いだ金を貢ぐ、とか」
「鬼かお前はあああああああああ!!!!!!!!!!!!」
・ ・ ・ ・ ・
こうして、一生佐伯の奴隷となる事が確定したリョーガ。今思わずとも、やはり光秀であった間が一番豊かな暮らしが出来たし真っ当な人間として扱って貰えていたような気がする。
「・・・・・・・・・・・・ま、いっか」
今日も元気にいびられながら、そんな風に思えてしまう彼は、
――――――それはそれで幸せなのだろう。
―――突発ラスト予想!おまけ 了
―――はい、本編より一足先に終わりましたラスト予想。『追い詰められるリョーガ』が書きたかったので妙に中間暗いですが・・・・・・
・・・ああ良かった。本編というかラジオはそんなにぐろげちょの展開にはならなかった。
では、21世紀だけ出すつもりが25世紀までフォロー(?)してみたこのラスト。掲示板の予告通りハッピーエンドで〆させて頂きます!
P.S.
そういえばサエ、結局跡部の『永遠』はモノにし損ねたのか・・・。25世紀の跡部。もし在たとしたら何やってるんだろ・・・・・・?
さらにP.S.
不思議な存在として軽く出てきて終わった25世紀のリョーマ。彼がなぜ都合良く現れる事が出来たのか、謎なままでも良いのですがあえて補足しておきます。
佐伯に取引を持ちかけられ25世紀に帰ってきた真田。が、切原に時元移動機[アシ]を奪われ大ピンチ☆ このままでは事情を知らない切原によって、歴史は取り返しのつかない事になってしまう!!
もう一台借りる許可を得るため訪れたのが局長幸村の元だった。事情を聞き幸村は思う。「その計画には致命的な欠陥がある」と。そう。
―――秀吉が光秀の死をちゃんと認めなければ成立しないのだ。
ではどうするか。無理矢理認めさせるか。それとも・・・。
そこで思い出したのがリョーガの弟、リョーマの存在。かつて兄に助けられ今では普通の暮らしを送るリョーマに、幸村は1つ相談を持ちかけてみた。
「お前の兄貴、助けたくないか?」と。
全てを知ったリョーマは、今度は兄を助けるため過去へと向かった・・・・・・。
こんな感じです。ただし局長権限とはいえ一般市民をそう易々過去へ連れていけば大問題になりますので、局員が使用する正規の移動機ではなくリョーガが以前使っていた手作り品で行かせました。秀吉が『車輪と棒と板の組み合わさった妙なものに跨り』と評したそれは、この世界で言うところのチャリンコです。局員=ワゴン車。サエが裏ルートで手に入れた=スクーター。リョーガの手作り=チャリ。・・・どんどん乗り物としてランクダウンしてますね。
そしてリョーガが38回目でようやく成功した歴史変更。リョーマは一発で出来たようです。弟の方が兄より世渡りは上手そうですし。ちなみにちゃんと狙い通りに行けたのは、幸村の監修の成果でした。じゃなかったら一体どこ彷徨う事になるのやら・・・・・・。
2006.1.16〜31