〜そんな始まり〜


微シリアス跡不二ver








『景!』


あん? 誰だよてめえ


『け〜い!』


気安く俺様の名前呼んでんじゃねーよ


『景ってばー!!』


しつけえ・・・・・・




















・     ・     ・     ・     ・




















『ねえ、景。
今日、何の日かわかる?』
『ああ?
2月
29日だろ? だからどうした?』
『それは「今日は何日か」。
じゃなくて、「今日は何の日か」。
それは?』
『うるう年だろ?』
『景・・・。マジボケ?』
『アーン? 何言ってやがるてめえは。
てめえこそさっきっからワケわかんねえ事言ってんじゃねーよ』
『あのね、
今日、僕の誕生日なんだよ? 4年ぶりの』
『あーあー。そりゃよかったな』
『・・・・・・それだけ?』
『他に何があんだよ?
祝っただろ? それ以上俺には関係ねーだろーが』
『・・・・・・・・・・・・。
いいけどさ。景らしくて』




















『け〜いっ! もうすぐクリスマスだね!』
『だから?
クリスチャンじゃねえだろ? てめえも俺も』
『ってあのねえ。今時クリスマスっていったら仏教徒だって祝うんだよ!?』
『・・・つまりてめえはクリスマスってのを利用して馬鹿騒ぎがやりてえ、ってワケか?』
『それは祝ってる人たち全員に失礼なんじゃ・・・・・・』
『家族とでもやってろよ。いつもの事じゃねえか』
『・・・・・・・・・・・・。
そうさせてもらうよ』




















『景! はいコレ!』
『・・・。何だこりゃ』
『ショコラだけど?』
『ンなモン見りゃわかんだろ?』
『なんだ。てっきりそこからわかんないのかと』
『てめえは俺にケンカ売ってんのか・・・?』
『売らないよ。のしつけて返されそうじゃないか』
『だったらさっさと答えろ。何だこれは?』
『バレンタインチョコ』
『・・・・・・・・・・・ああ?』
『ホワイトデー、3倍返し期待してるよv』
『ざけんな』
『・・・・・・・・・・・・。
ひどいなあ。本気なのに』




















・     ・     ・     ・     ・





















こんな夢を見たのは初めてだ。

なのになぜか懐かしい。

向かい合わせの奴の顔。

茶色の髪に大きな目。女みてえなその顔に見覚えはない。

―――のか?

本当に覚えがないのなら、なぜ俺はお前を懐かしいと感じる?

教えろ。

お前は誰だ?










『そうだね。所詮僕は君の中ではその程度の存在だったんだよね・・・・・・・・・・・・』










――――――!!










揺れる瞳で俯く。

曖昧なその笑顔の正体。俺はようやく思い出した。

何で忘れていた? こんな大事なこと。










『ばいばい』










待―――!!










声を出す事は出来なくて。

急いで伸ばした指先も届かない。

俺はただがむしゃらに追いかけた。

足が重い。

走り方がわからない。

詰められない間。

ようやくはっきりした顔は、

再びぼやけていくだけで。

消える一瞬前、

全ての想いを込め、俺は思い出したそいつの名前を叫んだ。



















「周――――――――――――!!!!」




















・     ・     ・     ・     ・



















「――――――っ!!!」
柔らかいベッドの上で、跡部は思い切り上半身を撥ね上げた。
息が荒い。
体中にべっとりと掻いた汗。
「夢、か・・・・・・?」
呟き、顔を拭おうとして―――
気付く。
頬を流れる乾いた跡。決して汗の跡ではない。
思わず辺りを見回す。当り前だが誰もいない。いるのは飼っている黒猫だけ。
誰もいないのを確認し、堪えきれずに跡部は笑った。おかしくてたまらなかった。
今更なぜこんな夢を見る?
もう全ては終わった事だろう?
あいつとの縁ももう切れた。
時折試合で会いはするが、あくまでライバル校生としてのみ。
そもそも元々ただの幼馴染、会わなければ縁などあっさり切れる。
なのに・・・・・・




















俺は、今更何を望んでいる?





















・     ・     ・     ・     ・




















朝、いつも通り愛猫に起こされ跡部は目覚めた。
カーテンを開ける。眩しい陽射しが、なぜか疲れている体には心地いい。
全てがいつも通りの出来事。太陽の光を一身に浴び、今日もここから『跡部景吾』が始まる。
軽く手を翳し目を細める。
遮られた視覚の隙間でふと思い出した。





















「そういや、今日は青学との練習試合か・・・・・・」





















〜そんな始まり〜

跡不二ver


Fin & Start



















・     ・     ・     ・     ・

さて、『・・・みたいなアルケー。』跡不二verでした。とりあえず不二先輩はちゃんとバレンタインにチョコを送ったみたいです。
最初の会話部分は小学校―――というか氷帝学園幼稚舎の頃。この頃(現時点でもですが)まだ付き合ってはいません。不二の片想いではありましたが。
別れたのはもちろん中学入学を機に。そしてもちろん『所詮僕は』云々は跡部様の勝手な妄想です。ふつ〜に別れました。しっかし試合でしか会わないって、お隣さんだろうに2人は・・・・・・。
―――まあそんな突っ込み所満載な話は置いておきまして。
ラストは毎度恒例の



跡部様、3
rdCD発売おめでとうございます!!



2003.12.37