ほわいとでー的3倍返し[トリプルカウンター]の罠・・・・・・




千石:「はい跡部くん。ホワイトデーには3倍返しv」
跡部:「ああ? ふざけた事ほざくな千石。
ありゃ1コ平均1万円だ」
千石:「はあ!?」













〜そんな始まり〜


ぎゃぐちっくせんべ
ver





「あ〜と〜べ〜くんっ!」
「あん?」
振り向いたところで、
「む・・・・・・」
背後まで近寄っていた男に、いきなり口にものを突っ込まれた。
「・・・・・・何しやがる」
砕き、溶かし、飲み込んで。
口の周りに僅かについたチョコを指で取り、舌で舐めつつ尋ねた。
「何って・・・そりゃショコラだけど?」
「・・・ンなモン見りゃわかる」
「あれ? 見えたんだ」
「てめぇは俺様舐めてんのか?」
「うっわ〜。跡部くんってばえっち〜vv
そりゃもちろん舐められるんなら舐めた―――」
ごすっ・・・・・・
「一生来んな」
何かを言いかけた男―――千石の頭にかかとを落とし、跡部は踵を返し・・・・・・
・・・・・・かけて止まった。
「結局何がやりてーんだ? てめぇは」
倒れた男を見下ろし問う。足首を掴まれ動けないというのもあるが。
「え〜っとね」
冷めた目を向ける中、ようやく起き上がってきた千石がぱたぱたと砂を払い、
「はいっv」
目の前に箱を差し出してきた。
少し蓋を開いた箱。中は彼の言葉どおり、ついでに味通りのショコラで、さらには振り向く一瞬で見えたとおりのものだった。
1つ減った中身を指し、
「で? これがどうした?」
「だからっv
ホワイトデーだからお返しvv」
「ああ?」
言われた言葉の意味がわからない。
(ホワイトデー『だから』・・・・・・?)
ホワイトデーといえば対になるのはもちろんバレンタインデー。さて疑問。
(俺はこいつに何かやったか・・・・・・?)
首を傾げる跡部に、千石は笑って説明をした。
「だ・か・ら♪」





















・     ・     ・     ・     ・




















それは、当たり前の話2月14日、バレンタインデーの事――――――
―――と見せかけ、実際はもう少し前からの事だった。





「あ〜と〜べ〜く〜〜〜ん!!」
「ああ? 千石か」
「うわ。なんかすっごい! 嫌そうな言い方じゃなかった?」
「毎日てめぇもご苦労なこったな。サボりになんじゃねーのか?」
「はは。心配ご無用! 俺脚には自信あるからね。ちゃ〜んと午後の授業には間に合わせて帰るよ」
などと言う様に、ここは氷帝学園中等部、もう少しいえば跡部のいるクラスであり、今彼と話している千石はわざわざ昼休みに学校を抜け出しここまで通いつめていたりする。
地区こそ分かれるが意外と近い2校に万歳。いやそれはいいとして。
「で? てめぇは何が言いたい?」
「だ・か・らv
も〜すぐバレンタインだな〜って話vv」
「で、ンなくだんねー話をするために毎日来て、俺様の昼食の邪魔をしてるってワケか」
「・・・・・・もしかして跡部くん、お昼の邪魔されんのに一番怒ってる?」
その辺りの質問は適当にスルーして、
「『ああ、バレンタインだなそういや』」
「めちゃくちゃ棒読みなんだけど・・・・・・」
「で、もう一度だけ訊いてやるがてめぇは毎日何しに来てんだ?」
「いやその質問は初めてなんだけど」
「さっさと帰れ」
「すみません冗談です二度とダメ出しはしませんから聞いてくださいお願いします」
「よし・・・・・・」
「跡部くん! 何気に俺で遊んでる!?」
「アーン? てめぇは俺様のおもちゃだろ? 遊んでやるだけありがたいと思え」
「しくしくしくしくしく・・・・・・」
「てめぇの方が遥かに棒読みじゃねえか」
「いやそれはいいとしてね。
もうすぐバレンタインじゃん。というわけで、













―――チョコちょうだいv













・・・・・・・・・・・・















「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ?」


























































そんなやりとりが何回繰り広げられたか。とりあえず回数はともかくバレンタイン当日まではなされた。
そして当日。





「あ〜と〜べ〜くぅぅぅぅぅぅ〜ん」
今日も机に顎を乗せ捨て犬のような鳴き声を上げる千石。
今日もまたランチタイムを邪魔する物体に―――ついでにその両脇に配置された大量のチョコを詰まらせた袋に。
「ああもーうっぜえな〜・・・・・・!!」
跡部は左手でがしがしと頭を掻いた。
逆の手で持ちっぱなしだったフォークを、皿へと突き刺す。
「とりあえずこれでも食って黙ってろ」
「もごっ・・・・・・!?」
適当に刺さったものを千石の口へと押し込み、ようやく黙り込んだ彼を無視し、跡部は改めて隣にあったラズベリーパイへとフォークを伸ばした。





















・     ・     ・     ・     ・




















「―――と、ゆーワケで。
これはあの時のお返し。跡部くんの気持ちはしっかり受け取りましたって事で」
「・・・・・・・・・・・・ああ」
解説を聞き、跡部は納得したとばかりに頷いた。
そういえばあの時目の前にあったのはデザートの皿。数種の1口大ケーキの乗るそれの中で、珍しくチョコ系のケーキがなかったか。
「やっぱお返しっていったら3倍返しが基本でしょ? 弾んじゃったよ〜」
と、箱の蓋を見れば確かに某高級ブランド品。
入ったショコラ―――というかトリュフ―――の個数を数え、
跡部はふっ・・・と鼻で嘲った。
「言っとくが・・・・・・
デザートは
ひとつ平均1万円だ」
「はあ!?」
「俺様が庶民と同じ物なんて食ってるワケねえだろ?」
「うっそお〜・・・・・・」
「クッ・・・。残念だったな千石。3倍どころか
1/3も返せてねえよ」
「ゔゔゔゔゔ〜・・・・・・
あ! じゃあ残りは俺自身で!!」
「馬鹿が」
がすっ・・・・・・
またまた何かを言いかけた男の首根っこを押さえ地面にこすり付けさせ、
今度こそ跡部はその場を立ち去った。





















・     ・     ・     ・     ・




















『跡部く〜ん!! 跡部くんってば〜〜〜!!』
『てめぇはついてくんじゃねえ!!』
いろいろやりながら立ち去る2人を見送り、





「結局貰ったことは否定しないんだね、お返し」
「天然ボケなのか必死に触れないようしてるのかそれとも実は嬉しいのかものすごく判断しにくいよな」
一部始終を見、ついでに過去話まで聞かされた不二と佐伯はそう結論付けた。
「で、はい、周ちゃん」
「え?」
「お返し。クッキーが本命―――だっけ?」
薄く笑う佐伯の手から『それ』を受け取り、
「ああ、越前君と裕太と手塚と、あと跡部と千石君にもクッキー貰ったな〜・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・周ちゃん、何人にチョコあげた?」
「知り合いみんなにだから・・・・・・
50人以上?」
「・・・・・・。
とりあえず身近なところで跡部辺りから行こっかな・・・・・・」
「?」










そんなこんなで、
『バレンタインデー』というものの意味をイマイチよくわかっていないらしい2名のおかげで、今年もまた進展なしで彼らの恋愛は続くのだった・・・・・・。























〜そんな始まり〜

せんべ+α 
ver


Never
 end


















・     ・     ・     ・     ・

はい。ホワイトデー企画にしてようやっときました『そんな始まり ぎゃぐちっくせんべver』。終わってみるとなんだか余計なものまで入っていますが、この唄の1番はほんと〜にせんべっぽいです。跡部の暴言の数々が笑えますが、それ以上にそれらにもめげずに付き合えるとなるとやはり相手はこの辺りくらいしか・・・・・・!

ちなみに時期もぴったりです。誕生日(
11/25)があり、クリスマス(12/2425)があり、バレンタイン(2/14)があり、そしてホワイトデー(3/14)があり。
<ふざけた事ほざくな>だの<ワケがわからない奴だ>などと言われるとやっぱ来るのは千石さん・・・・・・(失礼)。
しっかし不思議だな〜。



お前が勝手に贈る ショコラの意味を尋ねた答えが ホワイトデー? 3倍返し? ふざけた事ほざくな



・・・・・・結局ショコラはバレンタインデーとホワイトデー、どっちにもらったんだ・・・・・・?




そして今回絵がつきました。
人の横顔を中身付きでまともに書いたのは実に久しぶり―――というか幼い頃わりと誰でもやったであろう落書きを除くと初めてのような気もします。おかげでいろいろと間違ってます。ちなみに輪郭前のほうのみは千石さんが虎砲打ったときのをそのままパクったりしました。しっかし横向きの人の体ってどうなってるんだろう・・・・・・(極めて基本的な事柄)?


2004.2.12