変わり者オンパレード♪
まずは春日春日様のイラストをどうぞ。
こんな話―――になりませんでした(爆)。
Act1.跡部
俺様の下僕その2―――あの野郎は『俺たち恋人だよねv』なんて言いやがるがぜってー違う―――は意外にも人気があるらしい。なんであんなヤツがそんなに人気があるのか不思議でたまらない。世の中変わり者ってのが多いようだ。
俺? ンなワケねーだろ? ざけた事言ってんじゃねえ。
別に俺はアイツの事なんて――――――
♪ ♪ ♪ ♪ ♪
「あん?」
いつもの如く樺地を引き連れ校舎から出てきた跡部は、門前にあったその光景に眉を潜めた。いつもなら、ここでどこぞの部外者が乱入してくる筈だ。そいつの学校からここまでそう近くはないというのに毎日毎日飽きもせず。しかもハイヤーで帰るというのにそこまでの数十mでいいからと引っ付いてくる。あまりにもその姿が可哀相過ぎるから仕方なしに車に乗せてやる。もちろん自分の家の前で落として。ついでにそれまでの間に何だかんだで20発ほど殴ったりする。それが『いつも』の事。
門前に、確かにその部外者―――山吹の千石清純はいた。氷帝自体髪色自由の校則とはいえ、黒っぽいブレザーの中での白ラン&馬鹿丸出しのニワトリ頭はとてつもなく目立つ。見失う事もましてや見間違える事も絶対にない。
が、そいつは1人ではなかった。ついでにそれが自分が出てきたというのに即座に駆け寄ってこない理由。
千石は門前で何人かの女子と話していた。さすが『可愛い子ウォッチング』が趣味だと言い切るだけある。とりあえず氷帝の中でも男子に特に人気だとかなんとかいうグループをしっかりキャッチしたらしい。元々千石の性質としてそうなのだろうが、軽い物腰は相手の警戒心をあっさり無視して中に入り込む。
最新の芸能情報に今流行りのゲームやファッション。占いの話なんかしつつもその間女どもをおだてる事は忘れない。
自分には全くわからない話。だからこそ千石も自分相手の時はそんなネタはまず出さない。
広がる笑い声。いつのまにか千石の周りには話していた女達だけでなく他の奴らまで群がっている。
そいつらの中心で身振り手振りをつけて楽しそうに話している千石を見ていると―――
―――何故だろう。どうしようもなくムカツク。
「やっだ〜。キヨ君ってば!」
ぱん!
「ひっどいな〜。ぶたなくたっていいじゃん! ぼーりょくはんた〜い!!」
「はたいただけだって! も〜ほんっとに面白いな〜!!」
あはははははは・・・・・・
さらに大きくなる笑い声。
「オイ樺地!」
「ウス」
たった一言の呼び掛けだけで全てわかったようで、先にハイヤーへと荷物を持っていくため、樺地は跡部のテニスバッグを持ったまま彼の下を離れた。
1人きりになったところで、止まっていた足を動かす。
笑っているそいつは気付かない。先に気付いたのは話していた女どもだった。
「あ・・・・・・」
気付いたやつらの顔色が変わる。いつもなら赤くなって次に悲鳴が上がって。なのに今日は青くなって声を殺して。
態度の違う周りに苛立つより、滑稽なその態度に笑いたくなる。一体今の自分はどんな顔をしているのだろう。
さすがに自分に背を向ける千石も周りの様子に気付いたらしい。笑いを止めてこちらを振り向く―――
―――前に、跡部は彼の巻いていたマフラーを後ろから思い切り引っ張った。
「ぅぐっ・・・・・・!?」
突然の衝撃に、呻く千石の体が揺れる。
なおもきつく引っ張ると、堪えきれずにマフラーに手をかけたまま後ろに倒れこんできた。
その間にもさらにマフラーを体に巻きつけていく。割と長めのマフラーは首だけに飽き足らず上半身と手まで拘束してくれた。
完全に縛られ、そして完全に倒れた千石の体を片腕で受け止める。
「跡部・・・くん・・・・・・?」
苦しい中でもなんとか見上げてくる千石。驚き見開かれる目を、己の中に取り込むかのように体を引き寄せる。
「あと・・・―――ん!?」
引き寄せて―――キスをする。
一気に上がる悲鳴。無視して開いた唇の中に舌を突っ込んだ。
「ふ・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・」
千石も手練ではあるがこちらも遊びの経験なら豊富にある。慣れた者は普通の快感には満足しないが逆に言えば普通以上の快感には敏感かつ貪欲だ。
「う・・・ん・・・・・・」
最初は驚きに開かれていた千石の瞳も今や閉じられ気持ち良さを存分に味わおうとしている。縛られていなければ肩にでも手を回していたかもしれない。開かない彼の手はそれでもこちらの頬を両側から挟み込んでいた。
千石も積極的に動き出したところで、跡部は口を離した。
2人の間で伸びる糸。その先には目元を染め瞳をとろんとさせる千石が。
こちらに体重を預ける、力の抜けた体を抱きかかえる。
「あと、べ、くん・・・・・・?」
向こうから見てみれば意味不明の行動の連発に、心配げに千石が呼びかけてくる。
それに答えるわけもなく、どころかむしろ無視する形で周りを見回し―――
跡部は鼻で笑った。
「こいつは俺様への貢ぎモンだ。勝手に手ェ出してんじゃねえよ。アーン?」
周りに向ける、冷たい笑み。整った綺麗な顔からは不思議な色気が、そして全身に纏うオーラからは圧倒的にして絶対的な支配感が溢れている。
「は・・・はい!! 申し訳ありません!!」
その両方にやられ、平に平に謝る者達。それを満足げに見下ろし、軽く頷いてみせる。
口角を吊り上げる跡部。笑いながら、
――――――無意識にも抱き締める腕に微かに力を込めた事に気付いたのは、抱き締められたままの千石だけだった。
Act2.千石
俺の恋人―――まあ向こうは『下僕2号』なんて言ってるけどね―――ってのはとんでもない意地っ張りかつヘソ曲がりだ。どの位かって言うと、俺の事を未だに恋人だって認めない事が証明する通り! も〜いい加減俺の事恋人って認めようよ〜!!
は〜。な〜んでこんな人好きになっちゃったんだろ。別に他に相手いないワケじゃないし、いくら顔が良くっても性格コレじゃあねえ・・・
な〜んて。
こんな人だから好きになったんだけどね。ははっ。俺も相当変わりモンだね。
でも・・・・・・
――――――覚悟しといてね。絶対落とすよ。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪
いつも通りの放課後。山吹からダッシュで氷帝まで行って、でもって出てくる跡部を門前にて待つ。それがここ最近の日課。
―――でも今日は、少し変化をつけてみようと思う。
「あ、千石く〜ん!」
「やあ」
話し掛けてきた適当に可愛い子に、千石は手を上げて応える。いつもならコレで終わり。前はこの後話したりデートに誘ったりするのが普通だったけど、彼に出会ってしまった―――彼を知ってしまった以上その程度で満足出来るワケがない。
でも、今日は・・・・・・
「ねえねえ今帰り?」
「え? もちろんそうよ?」
「ヒマだったりしない? ちょ〜っと君と話してみたいな〜なんて思うんだけど」
「あれ? でもいいの? 千石君跡部君待ってるんでしょ?」
「い〜ってい〜ってちょっと位。跡部くんもすぐは来ないっしょ」
「そう? じゃあちょっと位なら・・・・・・」
というわけで、予定通り噛ませ犬Get。後はターゲットが来るのを待つだけ。
(あ、い〜事思いついちゃった♪)
「俺の事はキヨでいいよ。『千石君』って長いじゃん」
「長さの問題? じゃあ―――キヨ君?」
「ほらやっぱ短い方が呼びやすいでしょ? ・・・ってなんで疑問形?」
人の呼び方なんて呼ばれる方には意味がない。呼ぶ方が気にするものだ。
(さ〜って跡部くん。君は名前で呼んだことないよね?)
適当に可愛い子と適当に楽しい話をして適当に盛り上がって適当に時間を潰す。全ては慣れきった所作。もう意識しなくても出来る。そう考えると今までの行いに感謝すべきか。
千石は余った意識を門の内側へと放った。いつ『恋人』が出てきてもいいように。
さほど待つでもなく―――
お供を連れて出てきた彼―――跡部はこちらを見て足を止めた。見なくともわかる。彼の研ぎ澄まされた意識はこちらを焦点と定められている。
痛いほどの視線。心躍らされる最高のスポットライトを浴び、
千石は何も気付かない振りをし、会話を続けた。
「やっだ〜。キヨ君ってば!」
ぱん!
「ひっどいな〜。ぶたなくたっていいじゃん! ぼーりょくはんた〜い!!」
「はたいただけだって! も〜ほんっとに面白いな〜!!」
あはははははは・・・・・・
大口を開けて笑いながらもターゲットの言動を逃すような事はしない。研ぎ澄まされた意識は今や剣の如く。刺されるのも時間の問題。
(さあ、どう出る跡部くん?)
お供の樺地が跡部のもとを離れる。ハイヤーへと向かったか。すぐ出せるように。
近づいてくる跡部。前髪をブラインドに一瞬だけ視線をやる。
(おーおっかない)
据わった眼差し。きつく結ばれた口元。溢れる怒気。
どこぞの天才ではないが、そういう姿はいいもんだ。ゾクゾクする。特に自分がそうさせているのだと思うと。
ようやく周りも彼の存在に気付いたらしく、波紋を巻き起こすまでもなく一斉に引いていく。この辺りが彼の本領発揮といったところか。
全てを一瞬で支配する。その中でただ1人、『支配』されぬままに千石は話を続けた。
(3m・・・2m・・・1m・・・0)
頭の中でのカウントダウン。0のところで気付いたフリをし振り返る―――
―――より彼が動く方が早かった。
「ぅぐっ・・・・・・!?」
いきなり後ろからマフラーを引っ張られる。苦しさに首元へ手を当てる合間にもさらに力はかけられ、足を動かす間もなく後ろへ倒された。
よろめく自分の体。そこにグルグルとマフラーを巻かれていく。首から繋がる上半身と、マフラーを取ろうと首元へ持っていっていた両手ごと。
受け止められる頃には完全に縛られた状態で。
「跡部・・・くん・・・・・・?」
意図したのかそれともそこまで頭を回らせなかったのか、絞められた状態で他の部分まで縛られればたとえ彼自身は手を離そうがこちらの首は絞まったままだ。演技抜きで苦しげな声を上げつつ見上げる。
そこに見えたのは、もちろん跡部の姿。たとえ顔では無表情を装っていてもわかる。瞳の奥に湛えられた怒りは。
わかっていたからこそ、さらに煽る。
引き寄せられるままに顔を近づけながら、千石はもう一度呼びかけた。
「あと・・・―――ん!?」
ゆっくりと開いた唇に、唇が重なる。その感触を楽しむ事もなく、一気に舌が差し入れられた。
「ふ・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・」
普段は自分がする立場だが、やはり彼も上手い。
それだけのテク、自分の体を腕1本で支える力強さ、驚きと共に上がる周りからの妬み。そして何より―――跡部の嫉妬心。
全てが心地良くするスパイスで。
「う・・・ん・・・・・・」
彼以外が相手では絶対に味わえない最高の快感[エクスタシー]。逃さず味わおうと瞳を閉じて、跡部の頬を両側から挟みこんだ。
適度にお互い気持ち良くなったところで―――
跡部が口を離した。
2人の間で伸びる糸。その先には自分を熱っぽい眼差しで見る跡部が。
力を抜いて、完全に体重を預ける。それを跡部は難なく抱き止め、さらに抱きかかえた。
「あと、べ、くん・・・・・・?」
何をやりたいのか、予想がつかないわけでもないがそれはともかくとして。
こんな風に彼に抱かれるなんていうことは滅多にない。いつも自分が抱きついて、抱き締めて。
自分が抱き締める時とはまた違う感覚。全身で跡部の力強さと温かさを感じ、千石はそれこそ彼にしては珍しく顔を赤らめた。
そんな彼を見るまでもなく、跡部が周りを見下し鼻で笑った。
「こいつは俺様への貢ぎモンだ。勝手に手ェ出してんじゃねえよ。アーン?」
「――――――!!」
(跡部くん・・・!! だから『恋人』だってば〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!)
―――なんていう風には思わない。普段から俺様俺様してはいるが、跡部がこのように独占欲を丸出しにするものは実のところあまりない。当り前だ。何でも手に入る俺様だからこそ逆に何かに執着する必要がないのだから。
「は・・・はい!! 申し訳ありません!!」
絶対支配圏に捕らわれ怯え、謝る噛ませ犬と周り。
満足げに微笑む彼が、無意識下で抱き締める腕に微かに力を込めた。
それに気付き、千石は抱き締められたまま全身全霊の愛しさを込め、跡部の頭に小さなキスを送った。
―――Happy End
おまけ
「でもね、跡部くん。
―――人を縛る場合は、結び目は手の届くところに作っちゃダメだよ?」
「ああ?」
後ろから聞こえてくる謎の言葉。それに怪訝な顔をして跡部が振り向いた―――
「――――――!!??」
―――頃には、なぜか千石ではなく自分が縛られていた。
「てめ千石!! 何しやがる!!」
「え〜? だから言ったじゃん。『結び目は手の届くところに作っちゃダメだよ?』って」
怒鳴りつける跡部を前に、千石はいつも通りの食えない笑みを浮かべ、
「よっ、と」
跡部を肩の上に抱え上げた。
「さ〜って跡部くん1人お持ち帰り〜♪」
「ふざけてんじゃねえ!! さっさと下ろしやがれ!!」
「やっだよ〜ん」
暴れて下りようにも上はマフラー、下は千石で拘束されている。千石は自分の言葉を忠実に守ったらしい。結び目は背中ど真ん中。両手を一緒にされた状態ではどう頑張ろうが届かない。
「くっそ・・・・・・!!!」
ハイヤーまで運ばれる数十mの間、自分史上最大の恥と屈辱を味合わされた跡部は、ただひたすらに千石へ如何に報復を果たすかそればかりを考えていた。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
はい。春日春日様より送って頂きましたFAXを元に妄想を大爆走させてみました。させすぎて攻め受け逆になってます。ダメじゃん自分。
そして2人が絡んでる的物は苦手だというのに頑張ってくれた彼女の努力を見事無にするかの如く何も行われないただのギャグです。う〜みゅ。裏でやはり何か書くか・・・。しかし春日様。跡千は限りなく無理です。ど〜やったとしても最終的にはせんべにぶっ飛んでしまいます。おっかし〜な〜。
さあ! 次こそ彼女の努力に応えられるよう頑張るぞー!!(←ちなみにこれはむしろ嫌がらせ)
2004.1.1〜1.2