某月某日氷帝学園にて。
 始まりは跡部のため息だった。





 「
ダメじゃん、アイツ





 ・・・・・・・・・・・・



 『はあ!!??』









クセノカンセン








 「―――ああ?」
 準レギュラー同士の練習試合。日吉に面白いように遊ばれる滝を見ての跡部の感想になぜか慄く正レギュラー一同。
 なんだかやられた側の怒りを招きそうな口調ながら、とりあえず疑問符付きで尋ねる。お前等のその反応は何なんだ、と。
 それに答えるためなのか、一応最も近くにいた―――3m程度しか後退しなかった忍足が硬直姿勢を解いた。ちなみに彼があまり後じさらなかったのは、応援席最前列から本当に後ろに下がった―――階段を後ろ向きで上ったためである。横の通路へと避けた者は最高十m程は遠のいた。
 硬直は解きつつも、近寄らないまま震える手を翳し呟いた。
 「跡部・・・・・・今、お前何言うた・・・・・・?」
 「アーン? 滝がどーしよーもねえな、っつっただけだろ?
  それとも何か? てめぇら揃いも揃って滝の味方しようってか? 他人の実力まともに判断出来ねえヤツに正レギュラーになる資格はねえよ」
 「滝なんてのはどーでもいいんだ」
 2番目に遠くに遠のいた宍戸がさりげにボロクソに言い放つ。ちなみに最も遠ざかったのは彼。
 「じゃなくてな、跡部。今お前何て言ったよ? 全文そっくりそのまま言ってみ?」
 向日の言葉に、跡部がさらに眉を寄せる。
 「だから滝が―――」
 「せやなくて『そっくりそのまま』や。そないな始まりやなかったやろ?」
 「何なんだよ結局」
 「いーから。ホラ、言ってみろって」
 「・・・・・・・・・・・・」
 周り皆に頷かれ、組んだ腕を片方解いて口元へと当てる。言葉など重要なのは中身だ。余分なもの[ラッピング]たる台詞そのものにどれほどの意味があるのか。
 ・・・・・・などと思う跡部はもちろん忘れていた。自分が何て言ったかなど。
 視線を落とし考え込み、しかしながら絶対結論には辿り着かないであろうそんな雰囲気を醸し出す跡部を全員で暫し見やり―――
 今度は跡部除く全員がため息をついた。
 「無自覚かいな・・・・・・」
 「つーか・・・そーなるほど馴染んでたんだ・・・・・・」
 「はあ? だから何なんだよ」
 自分ひとりがわからないなかなかに屈辱的な事態に、早くも跡部の機嫌が悪くなっていく。元々良くもなかったが。
 そんな彼へと―――
 ―――『事実』を告げる。
 「跡部、お前口調うつっとるで」
 「そーそー。今お前モロにアイツ入ってたぜ?」
 「『アイツ』・・・・・・?」
 怪訝な顔で辺りを見回す跡部。全員同じ意見らしい。重く重く頷いていた。
 「跡部さん・・・。今―――
  ――――――『
ダメじゃん』って、言いましたよ」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 暫し止まる、時間。
 「ホンマに無意識やったんやな・・・・・・」
 「そりゃめちゃくちゃ普通に使ってたしな・・・・・・」
 固まる跡部へと、そんな批評が飛んでくる。
 さらに暫しして―――





 「あのヤローかぁーーーー!!!」
 「気付くん遅すぎ・・・・・・」

















































・     ・     ・     ・     ・




虎跡の場合―――





 同時刻六角にて。



 くしゅっ―――!!
 「サエ、風邪なのね?」
 「いや、そんな事はないと思うけど・・・・・・?」
 「サエさん夏近くだからって浜辺で遊びすぎですよ〜!」
 「それはお前だろ? 剣太郎」
 「サエさん風邪ひき―――」
 「『冴えない』ワケじゃないからな」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「ま、なんにしろ次お前の番だぞ。ダビデにこれ以上寒いギャグ言わせんなよ?」
 「わかってるってバネさん。今日結構調子いいし」
 「『結構』ってお前・・・・・・」



 「ゲーム佐伯! 3−0!!」
 「だから言っただろ?」





『ダメじゃん、俺をフリーにしちゃ』って







・     ・     ・     ・     ・




跡リョの場合―――





 同時刻青学にて。



 ハクション!!
 「あれ? どうしたの越前君。風邪?」
 「違うっスよ不二先輩。ただなんか出ただけ」
 「へえ・・・。
  ―――意外と誰かにウワサされてるのかもね」
 「はあ? 何スかそれ」
 「知らない? くしゃみ1回はいいウワサ、2回は悪いウワサで3回は風邪、ってね」
 「あれ不二? それ逆じゃにゃかった?」
 「あれ? そうだっけ?
  う〜ん。どっちだろ。わかんないなぁ」
 「にゃはは。おチビがした時点で1回が悪いウワサっしょ」
 「うるさいっスよ英二先輩。どっちでもいいっス。違うんだから」
 「まあ確かにね。
  次、始まるよ」



 「ゲーム不動峰! 1−0!!」
 「何やってんだマムシ!!」
 「ああ!? そりゃてめーだ桃城!!」
 「うわ〜。相性サイアク〜」
 「ふふ。仕方ないよ。あの2人だし」
 「あ〜あ。何やってんだか」





ダメじゃん先輩たち



―――Fin









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 以上、1月後半辺りよりやっておりましたCMGBAソフト『2004シリーズ』よりです。このCM、最大のポイントは照れた真田とか2人のやり取りとか「氷帝たるんどる!」とかその辺りより何より跡部様の「やれんじゃん」発言でしょう!! 「じゃん」って、「じゃん」ってアンタ(クドい)・・・、いつもなら「やれんじゃねーの」じゃあないのか!?
 そんなワケで生まれましたこの話。しかしよくよく考えるまでもなく「ダメじゃん」というとサエよりリョーマの方が世間一般では思い出しやすいのか・・・!? という事で虎跡
Onlyの筈が跡リョも加えてみました。

2004.2.21

余談というかイイワケか? CMそのものは1月からあったにもかかわらずなぜ今日までこの話は出来なかったのか――――――
 ――――――撮り貯めしてました。年始めから今週分まで全部。すみません。六角戦終わって実はかなり観る気無くしてました。まあ合宿は氷帝見たさで頑張りましたが。