第3試合 不二vsリョーマ
英二をストレートであっさり(?)下した不二と、その英二に惜しくも(やはり『?』)下されたリョーマによる最終試合が始まろうとしていた。
「おチビ―、仇とってくんろー!!」
(いや俺そのアンタにやられたんだけど・・・・・・)
審判となった英二の声援にリョーマは心の中で冷めたツッコミを入れた。口に出来ないのは納得がいかないからだが。
「よろしく、越前君」
「ども」
ネット越しに右手を伸ばす不二に帽子を取り挨拶する。トスの結果サーブは不二からに決まった・・・ところで。
「ねえ越前君、罰ゲーム決めない?」
「・・・・・・?」
不二の平穏ならない発言に、リョーマの眉間に元テニス部部長並みの皺が寄った。
「野菜汁とかペナル茶とかっスか? けどあれじゃ不二先輩は罰ゲームにはならないでしょ?」
「あれは別に皆が言うほどマズくはないと思うけど・・・」
『マズい』
即座に否定する英二とリョーマ。たとえ敵対していたとしても、不二の味覚のおかしさに対する意見は完全に同調[シンクロ]するらしい。
「・・・まあいいけど。
なら罰ゲームとして越前君が僕に負けたら今日僕の家に泊まりに来る、っていうのは?」
「げ・・・・・・」
「にゃににゃに? 今日にゃんかあんの?」
「実は今日なぜか僕1人なんだよね」
『・・・・・・』
本当にそれは『なぜか』なのか? 偶然にしては出来過ぎてないか?
そんな疑問が2人の頭に上るが、実はこれが偶然ではなく必然である事、朝の姉の占いで今日恋人と1晩過ごすといいと告げられた不二が姉の協力の元家族全員(といっても母だけだが)を外出させた事、そしてこれがなくとも何らかの理由をつけてリョーマを誘い出そうとしていた事はさすがに知る由もない。
ただ1つ、わかることは・・・・・・
((これで負ければ俺は/おチビは不二(先輩)に喰われる・・・・・・!))
それは嫌だ! と青くなるリョーマ。
いよいよこれでおチビと不二も―――! と(あくまで2人の死角で小さく)ガッツポーズをする英二。
「・・・ってじゃあ俺が勝ったら?」
「罰ゲーム免除。どう?」
「・・・・・・。
なんか俺のメリットってないような気がするんスけど・・・?」
「そうかな? 越前君が僕の家に来てくれないっていう事は、僕にとっては十分な罰ゲームになるけど?」
確かに勝てば罰ゲーム免除はオイシイ。しかしそもそもこの賭けに乗らなければ行く必要もないのだし・・・。
(別に不二先輩の家に行くのが嫌なわけじゃないケドさ。ってゆうかせっかく久し振りにのんびり会えるし、2人っきりなら邪魔はいないし・・・・・・。
け、けど2人っきりって言ったら当然そーゆー事にコトが・・・! そりゃキスまで位ならよくするけど、いくらなんでもセッ―――!!
ダ、ダメだ。ハズカシイ・・・・・・!!)
赤くなったり青くなったりとひたすらに忙しいリョーマの耳に不二の言葉が刺さった。
「自信ない?」
負けず嫌いなリョーマの心をくすぐる巧妙な不二の発言。そう言われてしまえばたとえ罠とわかっていようが引く訳には行かなかった。
鼻息も荒くリョーマが頷く。
「いいっスよ。ただし―――」
「ただし?」
「真面目に勝負して・・・に限りなら」
先程までの2戦で、どうも心理戦では恥を捨てきれない自分が1番不利であるという事を悟り、そう提案する。これなら五分と五分。確実に勝てるとは言わないが、うまくいけば罰ゲームは免れられる。
「うん、いいよ」
リョーマの作戦に気が付かなかった訳ではないだろうが、いつも通りの笑顔で不二が頷いた。そう、いつも通りの、何を考えているのか訳がわからない笑みで。
「1ゲームマッチ! 不二サーブ!」
タイミングを見計らっての英二の合図が2人の策略の渦を断ち切った。
―――――――――――――――
「じゃあ・・・・・・」
1球目、トスを上に上げながら不二が呟いた。
訝しげな顔をするリョーマ。だが意識の大半は頂点で動きを止めたボールに向いていた。不二はかつて自分の事を「一瞬の気の抜きさえ見せられない」と称したが、それは不二自身にも言えることだ。僅かな気の緩みさえ命取りになる。やるかやられるか、狩りのような勝負。
獲物を狙う狩人の如く、リョーマの目が標的を見据え細まる。極限まで引き伸ばされた映像の中で、不二の唇がゆっくりと動いた。本当にゆっくりだったのか、それとも引き伸ばされた意識の賜物か。どちらかはわからないがとりあえず彼が何を言ったのかはわかった。それは・・・・・・
「『愛してるよ、リョーマ君v』なんて言わないからね」
ドスッ!
固まったリョーマの横、センターラインギリギリに放たれたボールがバウンドした。
「15−0。すごいにゃ不二! おチビ相手にノータッチエース!!」
「うん。運がよかったよ」
「けど不二って、おチビの事名前で呼ぶんだ〜」
「ああ、2人っきりの時はね。ホントはいつもそう呼んでたいんだけど、越前君『恥ずかしいからヤダ』って」
「そーそー、大石もそう言うんだよね。にゃんでかな? 俺は嬉しいのに」
「英二は皆にそう呼ばれてるってのもあるしね」
「うにゃ? けどおチビも1年には名前で呼ばれてるよねえ?」
「そう。そうなんだよねえ・・・・・・」
フフフとなにやら怪しげな笑みを漏らす不二に英二が一歩引いたところで、どこか遠い世界に行っていたリョーマが帰って来た。
「―――って、真面目にやるって言ったじゃないですか!?」
「あ、おチビ耳まで真っ赤」
「かわいいよね。たった一言でここまで反応してくれるのって」
「う〜ん、ケド俺も今の大石に言われたら嬉しくなるな」
「はいはい、ごちそうさまv」
「って不二〜〜!」
相手にされないのが寂しいのか泣きつく英二。その彼の横で、
ガン!!
リョーマが逆手に持ったラケットのグリップでポールを思い切り殴りつけた。
「審判! 今の点にしていいんスか!!?」
肩を震わせ激怒するもさすがテニスプレイヤー。大事なラケットを壊す訳には行かないという本能が働いているようだ。
「え? いやけどちゃんと入ったし」
「じゃなくて! 真剣勝負って言ったのに今のありなんですか!? 全っ然真面目にやってないじゃん!!」
20センチの身長差のせいで睨みつけも上目遣いにしか見えないが、まあそのかわいさについて考えるのはまた今度という事にしておいて、
「う〜ん・・・・・・」
英二は顎に手を当て首を傾げた。試合中に話すことは別にルール違反にはならない。話しすぎればさすがに集中力を欠くからと嫌がられるだろうが、不二の話したのはただ一言。それも罵詈雑言の類ではない。
(それににゃ〜・・・・・・)
今の不二の行為を無効とするとその前の2試合、ひいては自分がリョーマに勝ったという輝かしい結果すらも無効となってしまう。
(それは何とかして避けにゃければ・・・!)
せっかくこの事をネタに大石に誉めてもらおうと思ってるのにその計画が!!
―――という訳で英二は不二の味方に付いた。
「けど別に不二がなんか反則した訳じゃないし。おチビだって試合中相手と話すことあるでしょ?」
「ゔ、それはまあ・・・・・・」
話題は明らかに問題点からずれているのだが、英二の珍しい先輩然とした態度のおかげかリョーマがそれに気付く気配はない―――というか試合中に言葉で相手を挑発しなかった事のないリョーマに反論する権利はあまりないと思えるのだが。
口を尖らせながらも真剣に悩みこむリョーマはくどいようだが本当にカワイイ。
「・・・け、けどじゃあせめて次からは普通にやってください!!」
反論相手を不二に替えての言葉に、不二はやはり笑顔で頷いた。
「うん、わかったよ」
「ホントーに、わかったんスか・・・?」
「そんなに疑わないでよ。君との約束ならちゃんと守ってるでしょ?」
しれっと言う不二に「どこが・・・?」と聞き返したくもなったが、その言葉は喉の奥に飲み込んで、代わりにもう1度念を押した。
「絶対、っスよ?」
「うん。絶対、ね」
(・・・・・・?)
やけにあっさり引っ込んだ不二にまだ何かあるんじゃないか、とついつい疑いたくなるが、それもまた胸の奥に仕舞っておく。下手に口に出せば「そんなに僕の事を疑うの、リョーマ君!?」と人目もはばからずに叫ばれたあげくこちらが思わず意識を飛ばしたくなる程ハズカシイ台詞を連打されてしまう。
(いや、やられた事があるワケじゃないけど!)
不二との付き合いももうすぐ半年。たとえ乾のデータノートに『理解不能の行動パターン』と書かれていようと、さすがに推測位はつくようになった。
「じゃ、じゃあ続けるっスよ」
話を切り上げ、リョーマはボールを取って来てベースラインに立った。左手でボールをバウンドさせながらちらりと不二の方を見る。
その視線に気付いたか、不二が開いた力強い眼はそのままに口の端を僅かに上げた。真剣な時独特の彼の笑みにひとまず安心するとリョーマは改めて目を細めた。
―――――――――――――――
その後の試合は実に目を見張る物だった。スピード勝負といえた第1回戦のような派手さはないが、技術はこちらの方が高い。
互いにキメ球をあっさりと返したかと思えば、拾える筈のない場所に放たれた球をギリギリで取り、やはり相手の死角に落とす。
さすが全国区と謳われたプレイヤー2人による対戦。審判をやっている英二も思わず呼吸も忘れて見入った。一瞬でも目は離せない。
(スゴいにゃ〜・・・・・・)
普通のプレイヤーなら、いや多分青学レギュラークラスであったとしても、これだけのハイレベルな試合では既に1ゲームどころか3ゲームは落としていたであろう。が、開始(厳密には2球目から)10分は経っているにも関わらず未だに決着はついていない。
女子の歓声も遠くにしか聞こえない中、英二はただひたすら2人の試合を息を詰めて見続けた。
―――――――――――――――
「40−30! 不二、マッチポイント!」
2人に触発された英二の緊迫した声を聞いて、リョーマはようやく不二の仕掛けた罠の正体がわかった。
(しまった・・・・・・!)
何故あの時不二はあっさり引いたのか、答えは1回でいいからだった。実力の拮迫したプレイヤー同士の試合ならば1ポイントが大きな意味を持つ。まだ普段行なわれることの多い1セットマッチならば、6ゲーム先取しなければならない以上取り返しはつく。だがこれは1ゲームマッチ。4ポイントで決着がついてしまう。この中での1ポイントは取り返せる可能性がかなり低い。実際2球目以降はサーブを打った側が交互に点を取っている。この状況下で取り返そうと思えば、少なくとも1回は不二のサービス時に点を取らなければならない。
「とりあえず・・・・・・」
口の中で小さく呟く。何にしてもこの1点は絶対に取ってデュースに持ち込まなければ。そのためにはちょっと卑怯な手の1つや2つ・・・・・・!
(不二先輩だってさっき使ってたし!)
―――などと思っていた彼は、その思考パターンが第1試合の英二とぴったり同じであることなどを知る訳はなかった。
「30−40。おチビサーブ!」
英二の声にあわせてリョーマはラケットを右手に―――持ち替えなかった。
「・・・・・・?」
今までは全てツイストサーブだったリョーマのそんな行為に、英二は首を傾げ、そして不二は・・・
(へえ、何かの作戦?)
自分がマッチポイントに到達したこの1球、リョーマならば確実に点が欲しいであろう。その状況下であえて得意なツイストサーブではなく普通のサーブを仕掛けるとすれば・・・・・・
あくまで油断はせずに何かを探るように見上げてくる不二をツバ越しに見やり、リョーマは「さすが・・・」、と呟いた。リョーマにとってツイストサーブは必殺技に近いものがあり、そして中学テニス界では滅多にお目にかかれる事のないスーパーサーブは他のプレイヤーにとってはそれだけでプレッシャーを与える脅威である。それを打たないというのに油断するどころか一層警戒してくるとは。
(けど―――)
ボールを少し高めに上げる。不二の顔が普段ではまず見られないほど険しくなった。
(その警戒心が命取りなんスよ!)
ポイントは恥を掻き捨てる事。それさえ出切れば不二は確実にこちらの手に墜ちる!
ラケットを振り上げる動作の変わりに、リョーマは上に上げた手で帽子を取った。それを両手で胸に押し当て、上目遣いでもじもじと呟く。
「・・・周助のいぢわる・・・・・・」
レシーブの動作に入りかけていた不二がその格好のままぴたりと止まった。細められていた目が目いっぱい広げられ、彼の今の感情をしっかり表していた。
(計算通り・・・!)
どっかのデータマンのような事を考え、リョーマは弧を描いて落ちてきたボールを改めて構え直したラケットで打ち放った。当り前の話だが固まったままの不二がそれを拾えるはずもなく、彼とは離れた位置に着地したボールは遮る物が何もない中フェンスに当たり甲高い音を立てた。
「まだまだっスね、不二先輩も」
帽子を被りなおしお決まりの台詞を吐く。ツバと前髪に隠された顔こそ少々赤く染まっていたが、その下から覗いていた口は軽く吊り上がり、いつもの生意気な彼である事を示していた。
「・・・・・・って、あれ?」
なぜかすぐかかる筈の審判のデュースの合図がない。
(英二先輩なんか文句言う気かな・・・?)
だが文句を言われたら言われたで最初の不二の入れた点も無効となり30−30からやり直し。
(ま、俺はアンタに言われたとおりやっただけだしね)
何にしても損はしない展開に薄笑いを浮かべネットへと近寄る。
「英二先輩、判定は?」
返事はない。
「・・・英二先輩?」
さすがにおかしい事に気付き顔を上げるリョーマ。その先で・・・
なぜか英二が自分の―――先程まで自分のいた空間を見据えたまま真っ赤な顔で固まっていた。よくよく観察してみれば、先程からどちらかが点を入れる度うるさかった周りの声も一切しない。
(なんで・・・・・・?)
周りを見回してみる。やはり何故だか全員英二と同様固まっている。その異様な光景にリョーマは小首を傾げた。
と・・・
どうやら戻って来たらしい英二が判定を下した。リョーマを人差し指で―――は失礼なので手全体で指し示し、一言。
「お持ち帰り決定!!」
「はあ・・・・・・?」
謎の判定にリョーマは声を上げ・・・・・・次の瞬間その意味を身をもって悟った。
「な・・・!?」
いつの間にやらこちらへ来たのか、真正面から不二の肩に担ぎ上げられ今度は逆にリョーマが顔を真っ赤にした。
「そういう訳で僕とリョーマ君は早退するから。英二、後よろしくねv」
「わかったにゃv」
この上なく爽やかな笑みで話す不二も、手でOKサインを出す英二も、そこだけを見れば極めて自然な物だった。
不二の肩の上で暴れるリョーマさえいなければ。
「丁度今6限だし。後はHRと部活だけだから楽でしょ?」
「けど不二、明日おチビ部活でしょ? あんま無理させすぎちゃダメだよ」
「大丈夫だよ。明日は部活休みだから」
「にゃ? そーにゃの?」
「うん。そう」
やけに自信たっぷりな―――というか確信的な笑みを浮かべ頷く不二に英二はあっさり納得した。不二がこの笑みで言い放った時は必ずその通りになる。
(そういやクリスマスイブもこんな会話してなかったっけ・・・?)
なぜ冬休み初日に部活がなかったのか不思議だったのだが・・・・・・その謎は簡単に解けたようだ。
(ま、いっか)
休みほぼ0の男子テニス部、たまの休みとなれば皆喜ぶだろう。
「なんでイキナリお持ち帰りなんだよ!? まだ決着ついてないじゃん!!」
「リョーマ君があんなにかわいい事してくれるからだよ。けどこれからはああいったことは僕の前だけでやってねvv」
「はあ!? ワケわかんないよ!!」
なおもジタバタと暴れる怒り顔のリョーマ。それを両手で抱え込むにこにこ笑いの不二。2人の身長差は16センチと他の部員(元レギュラー)達に比べれば1番少なく、また細身の体格もどっこいどっこいだ。だがその華奢な体格に似合わず不二の筋力は強い。その上既にコツを掴んでいるらしく、楽々担ぎ上げる彼からただがむしゃらに暴れるリョーマが逃げられるわけはなかった。
「誘拐魔ー! 人さらいー! 強姦魔ーー!!」
「やだなあ、リョーマ君。双方同意の場合『強姦』とは言わないんだよ?」
「俺は同意してないーーー!!!」
「大丈夫v 同意させてみせるからvv」
「いやだーーーー!!!!」
半狂乱になってますます暴れるリョーマ。全く堪える事無く嬉しそうな笑みを浮かべる不二。
「おチビ、不二、お幸せに〜〜〜vvv」
リョーマの落とした帽子をブンブンと振って英二がそんな2人を温かく見送った。
「裏切り者おおおおおぉぉぉぉぉおおおおお・・・・・・!!!」
ドップラー効果を残し徐々に遠ざかるリョーマの元気な声に頷き、英二は2人のラケットとボールを拾いフェンスの外に出ると見知った顔を見つけ声を掛けた。
「あ、堀尾! おチビ早退だって。先生と桃に言っといてね」
「は、はあ・・・・・・」
返答の使用のない台詞に堀尾が曖昧な声を上げると、英二はそれで満足したか再びうんうんと大きく頷き校舎の方へと歩いていった。
一切振り返らない彼は後ろで何が起こっているのか知らない。いや、知らない筈。
『ほ〜り〜お〜・・・・・・』
「え? あ、あの・・・・・・」
英二に話し掛けられた堀尾がその場にいた男子女子ほぼ全員に詰め寄られていた事も。
「今の一体何だったのよー!?」
「なんで不二先輩が越前君連れて帰っちゃったのよーー!!」
「しかも『お持ち帰り』って何!? あの2人これから何するつもりなのよーーー!!!」
「え、え〜・・・と・・・」
HRなのに戻って来ないと外に出てきた担任2名及びその応援を頼まれた教師30名弱が決死の覚悟で止めに入るまで暴動が続いた事も。
さてそんな英二は。
「一日一膳、だ〜ね」
教室で知り合いの聖ルドルフテニス部員の真似をし、周りに座るクラスメイトらに不思議な顔をさせていた。
―――(一応)えんど
―――――――――――――――
おまけ1
「だ〜か〜ら〜・・・!!」
その場にいた生徒と事情を聞いた教師、そしてどこからか噂を聞き駆けつけてきた野次馬総勢150人以上の前で、堀尾は最早何度目になるかわからない言葉を声を嗄らして繰り返した。
「あの2人のアレだったらいつもの事だって言ってるだろ!? っていうか今日はまだマシだっての!
いつもだったら手塚部長やら桃先輩やらが止めに入っては不二先輩の返り討ちに遭って、でもってそれで怒った先輩が絶対零度の笑みで辺り構わず八つ当たりしてそのせいで部活出来なくなった事なんて1回や2回じゃないし! むしろ被害が越前1人に絞られた今回はかなりマシだって!!」
『そんな事信じられる訳ないでしょーーー!!?』
即座に突っ込まれ、あげくに「不二先輩の悪口を言うなんて!」と既に2回ほど主に女子から袋叩きに遭っている堀尾は心の中で涙を濁流のように流しながら祈った。
(英二先ぱ〜い! っていうか誰か〜! 助けて〜!!)
そんな堀尾の祈りは―――残念ながら天に届く事はなかった。
―――――――――――――――
おまけ2
部室にて。
どことなくぼろぼろで足元もおぼつかない堀尾の報告―――リョーマの部活欠席を聞いて、桃城は頭を抱えた。ここに来る前に竜崎先生に放送で呼び出され、突然明日の部活は休みだと告げられた時から嫌な予感はしていた。
「ま、まあそういう事なら仕方ね―よな、仕方ね―よ。はは・・・・・・」
止められなかった堀尾に責任がある訳ではない。そんな状態の不二の暴動は手塚ですら止められない。
荷担した英二を責めるつもりもない。彼は以前から何かと不二の応援をしていたし、面白い事には目がない性格だ。
誰も悪くはない。誰も・・・・・・。
それでも・・・・・・
「越前―!! お前明後日大会だぞーーー!!?」
誰もいなくなった部室で桃城は叫んだ。叫ぶしかなかった。
――(今度こそ)えんど
――――――――――――――――――――――――――――――
はいそんな訳で王子は持ち帰られてしまいました! いいんかい、このラスト。だから言ったじゃん、純粋なテニス好きは読むなって―――と開き直るのは止めて、ダラダラと長いものをここまで読んで下さりありがとうございました。一応途中を飛ばしてもわかる展開にしてありますので、好きな対戦のみ読むというのもありです。まあここを読んでいる時点で手後れのような気もしますが。
なんだか半端に登場しては不幸になりますねー堀尾君。彼初登場だったのになあ・・・。あ、あと私は女性陣では杏ちゃん&朋ちゃんFanですので彼女らはこれからもよく登場し、そしてオイシイところを掻っ攫います。その証拠に朋ちゃんと同じクラスの三つ編み少女は名前すら出てこなかったし。
ラストに、堀尾がおまけで言っていた事は私のテニプリワールドでは本当に日常茶飯事です。どころか普段ならここに菊ちゃんだの千石だのが加わり泥沼化する一方です。あ、あと今回不二リョにするため大菊となりました。一見逆っぽいけど。
―――しっかしこの2CPで不二&英二のノロケ大会って結構面白いなあ。またやろっかな。被害者2人+周りは迷惑だろうけど。
ではこの辺で。
2002.8.22〜23